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用語集 / 刑事訴訟法 / 被害者参加と被害者等の意見陳述

被害者参加と被害者等の意見陳述とは

ひがいしゃさんかとひがいしゃとうのいけんちんじゅつ

刑事訴訟法 違法収集証拠・証人尋問・鑑定・被害者

被害者参加とは、一定の罪の被害者等が被害者参加人として公判期日に出席し、検察官への意見陳述、情状に関する証人尋問、被告人質問、事実や法律の適用についての意見陳述を行う制度です。被害者等の意見陳述とは、罪名を問わず被害者等が公判期日に被害に関する心情その他の意見を述べる制度で、犯罪事実の認定のための証拠にはできません。

家族を事故で亡くした遺族が、裁判がどう進んでいるのかも分からず、法廷で一言も言えないまま判決を聞かされるとしたら、あまりに置き去りです。そこで法律は、まずどんな罪でも被害者が心情を法廷で述べられる意見陳述を設け、さらに人を死傷させた罪などでは、被害者が法廷に席をもらって証人や被告人に質問し、求刑に当たる意見まで述べられる被害者参加を認めました。ただし、訴追するのは検察官で裁判の相手方は被告人ですから、被害者は当事者にはならず、証拠を出したり上訴したりすることはできません。

法廷の場面。検察官席の横に小さな席があり、そこに喪服の女性(札「被害者参加人」)と隣の男性(札「委託を受けた弁護士」)が座っている。先生が裁判長役(札「裁判長」)で法壇から話し、被告人席に男性(札「被告人」)。先生の吹き出し「参加を許可しま

被害者等の意見陳述は罪名を問わず申出でき、申出はあらかじめ検察官にします

裁判所は、被害者等又は被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日においてその意見を陳述させます(刑事訴訟法292条の2第1項)。被害者等とは、被害者と、被害者が死亡した場合や心身に重大な故障がある場合の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹です。対象となる事件に罪名の制限はありません。「意見を陳述したい旨の申出ができる被害者の範囲」に法定刑の軽重による差異はありません。「犯罪被害者は、自ら申し出て、公判期日において、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述をすることができる」という肢は正しいです。申出は、あらかじめ検察官にしなければならず、検察官は意見を付して裁判所に通知します(同条2項)。陳述の後、裁判官は趣旨を明確にするため質問でき、訴訟関係人も裁判長に告げて質問できます(同条3項・4項)。裁判長は、陳述や質問が重複するとき、事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは制限できます(同条5項)。証人ではないので宣誓はさせません。被害者を証人として尋問する場合には宣誓をさせなければならないので、「宣誓をさせなければならない」は証人尋問にだけ当てはまり、意見陳述には当てはまりません。付添い・遮へい・ビデオリンク方式の規定は意見陳述に準用されます(同条6項)。

意見陳述は犯罪事実の認定の証拠にはできませんが量刑の資料にはなり、相当でないときは書面に代えられます

意見の陳述や、これに代えて提出された書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができません(292条の2第9項)。「この陳述を犯罪事実の認定のための証拠とすることはできない」という肢は正しく、意見陳述を「犯罪事実の認定に用いることができる」は証人尋問にだけ当てはまります。他方で、条文は犯罪事実の認定への使用だけを禁じているので、被害感情などの情状事実として量刑の資料にすることはできます。裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して相当でないと認めるときは、陳述に代えて意見を記載した書面を提出させ、又は陳述をさせないことができ(同条7項)、書面が出たときは裁判長が公判期日でその旨を明らかにし、相当と認めるときは朗読や要旨の告知をします(同条8項)。書面への代替は意見陳述にだけ認められ、証人尋問にはそのような規定が無いので、「その供述又は意見が記載された書面を提出させることができる」は双方には当てはまりません。心情の陳述の中で、被告人を法律上なし得る限りの最も重い刑に処してほしいと述べることは妨げられません。「法律の適用についての意見を述べることはできないから」そのように「述べてはならない」という肢は誤りです。

教室の板書の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に左右二列の表が書かれている。左列の見出し「心情等の意見陳述 292条の2」、その下に「罪名を問わない」「検察官経由で申出」「犯罪事実の証拠にならない/量刑資料にはなる」「相当でなければ書面に代え

被害者参加の対象事件は限られ、被害者等と法定代理人が検察官を通じて申し出て裁判所が許可します

被害者参加の対象は、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、不同意わいせつ・不同意性交等の罪、業務上過失致死傷の罪、過失運転致死傷など自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の罪、逮捕監禁の罪、略取誘拐・人身売買の罪、これらを含む罪、これらの未遂罪などに限られます(316条の33第1項)。「業務上過失致傷の罪の被害者は、同罪に係る被告事件の手続への参加を申し出ることができない」という肢は誤りです。申し出られるのは被害者等と被害者の法定代理人で、被害者等には死亡した場合だけでなく心身に重大な故障がある場合の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹も含まれます。「被害者又は被害者が死亡した場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹に限られる」という肢は、心身に重大な故障がある場合と法定代理人を落としているので誤りです。申出はあらかじめ検察官にし、検察官は意見を付して裁判所に通知し、裁判所は被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して相当と認めるときに参加を許します。参加を許された者が被害者参加人で、弁護士に委託して行わせることができ、資力の乏しい被害者参加人には国選被害者参加弁護士の制度があります。

被害者参加人は公判期日に出席し、検察官に意見を述べ、情状事項の証人尋問と意見陳述に必要な被告人質問ができます

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができますが、裁判所は、審理の状況、被害者参加人等の数その他の事情を考慮して相当でないと認めるときは、出席を許さないことができます(316条の34第1項・4項)。「相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができる」という肢は正しいです。公判前整理手続期日は公判期日ではなく、出席を認める規定が無いので、「公判前整理手続期日に出席することができる」という肢は誤りです。被害者参加人等は、検察官の権限の行使に関し意見を述べることができ、検察官は権限を行使し又は行使しないこととしたときは必要に応じて理由を説明しなければなりません(316条の35)。裁判所は、証人を尋問する場合に被害者参加人等から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について尋問を許します(316条の36第1項)。「犯罪事実又は情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について」尋問を許すことができるという肢は、犯罪事実に関するものを含めている点で誤りで、「情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項に限られる」という肢は正しいです。申出は検察官にし、検察官は自ら尋問する場合を除き意見を付して裁判所に通知します。被告人に対する質問は、意見の陳述をするために必要があると認める場合に、審理の状況などから相当と認めるときに許されます(316条の37第1項)。「意見の陳述をするために必要があると認められる事項に限って許される」という肢は正しいです。

事実や法律の適用についての意見陳述は論告の後に訴因の範囲内で行い、証拠にも量刑資料にもなりません

裁判所は、被害者参加人等から事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合に、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において検察官の意見の陳述(論告・求刑)の後に、訴因として特定された事実の範囲内で意見の陳述を許します(316条の38第1項)。「訴因として特定された事実の範囲内で事実及び法律の適用について意見を陳述することができる」という肢は正しいです。申出は、あらかじめ陳述する意見の要旨を明らかにして検察官にします(同条2項)。「いずれの場合であっても、その申出は、あらかじめ検察官にしなければならない」という肢は正しいです。この陳述は当事者の弁論に類する主張であって証拠にはならず(同条4項)、心情の意見陳述と違って量刑の資料にもならないとされます。「刑の量定のための証拠とすることは許される」という肢、「いずれの場合であっても、その陳述は、量刑資料にはなり得る」という肢は誤りです。書面に代えさせる規定も無いので、心情の意見陳述は書面に代えられるがこの意見陳述は代えられないという肢は正しいです。被害者参加人は訴訟の当事者ではないので、証拠調べの請求、訴因変更の請求、上訴はできません。「情状に関する事項について、証拠調べを請求することができる」という肢、「上訴をすることができる」という肢、「第一審の判決に不服があるときは、これに対して控訴をすることができる」という肢はいずれも誤りです。上訴してほしいときは検察官に意見を述べることになります。

  • 心情等の意見陳述(292条の2)被害者等・法定代理人。罪名制限なし。申出は検察官経由。宣誓なし。犯罪事実の認定の証拠にできないが量刑資料にはなる。相当でなければ書面に代えられる。付添い等を準用
  • 被害者参加の対象(316条の33)故意の致死傷・不同意わいせつ等・業務上過失致死傷・過失運転致死傷・逮捕監禁・略取誘拐など。被害者等(死亡・心身重大故障の場合の配偶者・直系親族・兄弟姉妹)と法定代理人。検察官経由で裁判所が許可
  • できること公判期日への出席(相当でなければ制限、316条の34)/検察官への意見と理由の説明(316条の35)/情状事項の証人尋問(316条の36)/意見陳述に必要な被告人質問(316条の37)/論告後に訴因の範囲内で事実・法律の適用の意見陳述(316条の38。証拠にも量刑資料にもならない、書面代替なし)
  • できないこと証拠調べ請求、訴因変更請求、上訴、公判前整理手続期日への出席、犯罪事実に関する証人尋問
  • 訴訟記録の閲覧・謄写確定前でも第1回公判期日後は、損害賠償請求権の行使のため必要があるなど正当な理由があり相当と認めるときにできる(犯罪被害者保護法3条1項)。終結後は何人も閲覧できる(53条1項)

被害者は確定前でも第1回公判期日後に訴訟記録を閲覧・謄写できる場合があります

訴訟記録は、被告事件の終結後は何人でも閲覧できます(53条1項)。これに加えて、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律は、裁判所が、被害者等から申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由があり、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、第1回公判期日後に公判係属中の訴訟記録を閲覧・謄写させることができるとしています(同法3条1項)。「事件の確定前の訴訟記録については、閲覧又は謄写することができない」という肢は誤りです。同じ法律には、刑事手続の成果を利用して損害賠償を命じる損害賠償命令の制度もあります。

刑事訴訟法292条の2第1項

裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。

刑事訴訟法292条の2第7項

裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。

刑事訴訟法292条の2第9項

第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。

論文ではこう使う

論文で被害者の関与が問われることは多くありませんが、被害者参加人の証人尋問や意見陳述の適法性を書くときは、被害者参加人が当事者ではないことを出発点に、条文が認めた権限(出席・検察官への意見・情状事項の証人尋問・意見陳述に必要な被告人質問・訴因の範囲内の意見陳述)のどれに当たるかを要件ごとに当てはめ、犯罪事実に関する尋問や証拠調べ請求は権限の外にあることを示します。心情の意見陳述と事実・法律の適用の意見陳述は、根拠条文、申出の方法、証拠としての扱い(犯罪事実には使えない/証拠にならない)、書面代替の可否を対比して書きます。

試験ではこう問われる

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