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上訴総論(上訴権者・期間・放棄取下げ・上訴の利益・一部上訴)とは

じょうそそうろん

刑事訴訟法 裁判・既判力・上訴

上訴とは、確定前の裁判に対して上級の裁判所に救済を求める不服申立てで、判決に対する控訴・上告と、決定に対する抗告があります。上訴ができるのは検察官と被告人のほか、被告人のためにする法定代理人・保佐人・原審の弁護人で、控訴・上告の提起期間は14日です。

第一審の判決に納得できないとき、被告人も検察官も上の裁判所にやり直しを求められます。判決の宣告から14日のうちに、判決をした裁判所に申立書を出すのが控訴です。期間が短いので、法律は被告人本人だけでなく、原審で付いていた弁護人や親権者にも被告人のために上訴することを認めました。ただし本人が「もう争わない」とはっきり言っているのに弁護人が勝手に上訴することはできません。上訴するかどうかは本人の人生に関わる選択だからです。

留置施設の接見室の場面。アクリル板越しに、先生が弁護人役(札「弁護人(原審)」)で控訴申立書と書かれた紙を持ち、向かいの男性(札「被告人」)に見せている。壁のカレンダーに判決の日から14日目に丸印。先生の吹き出し「私は原審の弁護人だから、改

上訴ができるのは検察官と被告人で、法定代理人・保佐人・原審の弁護人は被告人のために上訴できます

検察官又は被告人は上訴をすることができます(刑事訴訟法351条1項)。検察官又は被告人以外の者で決定を受けた者は抗告ができます(352条)。被告人の法定代理人又は保佐人は被告人のため上訴ができ(353条)、勾留の理由の開示を請求した者も勾留に対して被告人のため上訴できます(354条)。原審における代理人又は弁護人も被告人のため上訴することができます(355条)。上訴期間が短く原審の経過を熟知した弁護人の判断に委ねるのが被告人の利益になるからで、控訴するために改めて弁護人として選任される必要はありません。「第一審における弁護人は、判決の宣告により弁護人の選任の効力が失われるので、被告人のため控訴をすることができず、控訴をするには改めて弁護人として選任される必要がある」という肢は誤りです。公訴提起後の弁護人選任は審級ごとにしますが(32条2項)、上訴の申立ては355条により原審の弁護人がそのままできます。これらの者による上訴は、被告人の明示した意思に反してすることができません(356条)。「原審における弁護人は、被告人の明示した意思に反して、被告人のため上訴をすることができない」という肢、「原審において適法に選任された弁護人は、被告人の明示した意思に反しなければ、被告人のため上訴をすることができる」という肢は正しく、「弁護人は、被告人の明示した意思に反しても、被告人のために上訴をすることができる」という肢は誤りです。被害者参加人には上訴権を認める規定が無く、「上訴をすることができる」という肢、「第一審の判決に不服があるときは、これに対して控訴をすることができる」という肢は誤りです。

  • 固有の上訴権者(351条)検察官・被告人。検察官は無罪判決に対しても上訴できる(二重の危険に反しない)
  • 被告人のためにする上訴(353〜355条)法定代理人・保佐人、勾留理由開示の請求者(勾留に対して)、原審の代理人・弁護人。被告人の明示した意思に反してはできない(356条)
  • 抗告(352条)検察官・被告人以外で決定を受けた者(過料を受けた証人など)
  • 上訴できない者被害者参加人・被害者。検察官に上訴を求める意見を述べるにとどまる

控訴・上告の提起期間は裁判の告知の日から14日で、申立書は原裁判所に差し出します

上訴の提起期間は裁判が告知された日から進行し(358条)、控訴の提起期間は14日です(373条)。上告も控訴の規定が準用されて14日です(414条)。「控訴の提起期間は、刑事訴訟法上、10日と定められている」という肢は誤りで、7日と14日の選択なら14日が正しいです。即時抗告の期間は3日で(422条)、通常の抗告には期間の定めがありません。控訴をするには申立書を第一審裁判所に差し出さなければならず(374条)、控訴裁判所に出すのではありません。控訴の申立てが明らかに控訴権の消滅後にされたときは、第一審裁判所が決定で棄却します(375条)。刑事施設にいる被告人が期間内に申立書を刑事施設の長に差し出せば期間内に上訴したものとみなされます(366条)。自己又は代人の責めに帰することができない事由で期間内に上訴できなかったときは、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内に、原裁判所に上訴権回復の請求ができ、同時に上訴の申立てをします(362条・363条)。

教室の板書の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に表が書かれている。見出し「上訴の決まり」、その下に四行「誰が→検察官・被告人/被告人のために 法定代理人・保佐人・原審の弁護人(明示の意思に反しない)」「いつまで→告知の日から14日(控訴・上告

上訴は裁判の一部に対してもでき、放棄や取下げをした者は再び上訴できず、死刑・無期の判決に対する上訴は放棄できません

上訴は裁判の一部に対してすることができ、部分を限らないで上訴したときは裁判の全部に対してしたものとみなされます(357条)。検察官、被告人、352条の者は上訴の放棄又は取下げができ(359条)、法定代理人・保佐人等は書面による被告人の同意を得て放棄・取下げができます(360条)。上訴の放棄の申立ては書面でします(360条の3)。死刑又は無期拘禁刑に処する判決に対する上訴は放棄することができません(360条の2)。重大な判決を即座に確定させることを防ぐためで、取下げは可能です。上訴の放棄又は取下げをした者は、その事件について更に上訴をすることができず、放棄・取下げに同意した被告人も同じです(361条)。

上訴には上訴の利益が必要で、免訴や公訴棄却に対して無罪を求める上訴は原則としてできません

上訴は自分に不利益な裁判に対してするもので、上訴の利益の無い上訴は不適法です。無罪判決に対して被告人は上訴できず、免訴や公訴棄却の判決に対して無罪を求めて上訴することも、判例は許していません。免訴は公訴権が消滅したことを理由に実体審理に入らない裁判で、被告人の側も実体に関する理由を主張して無罪を求めることは許されないからです。被告人の不利益は刑の軽重だけでなく、より重い罪名の認定や執行猶予の有無も含めて判断します。検察官は公益の代表者として、被告人に有利な方向への上訴もできます。

刑事訴訟法351条1項

検察官又は被告人は、上訴をすることができる。

刑事訴訟法355条

原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。

刑事訴訟法356条

前三条の上訴は、被告人の明示した意思に反してこれをすることができない。

刑事訴訟法373条

控訴の提起期間は、十四日とする。

刑事訴訟法374条

控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。

刑事訴訟法361条

上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。上訴の放棄又は取下に同意をした被告人も、同様である。

論文ではこう使う

論文で上訴の適法性を問われたときは、上訴権者か(351条〜355条、被告人の明示の意思に反しないか)、期間内か(358条・373条・414条、刑事施設にいる被告人の特則)、申立先と方式は正しいか(374条)、上訴の利益があるか、放棄・取下げをしていないか(361条)の順に確かめます。弁護人の上訴が問題なら、355条の固有の権限であることと356条の限界を書き、被告人の意思が明示されていたかを事実で当てはめます。

試験ではこう問われる

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