裁判の執行と訴訟費用とは
さいばんのしっこうとそしょうひよう
裁判の執行とは、確定した裁判の内容を国家が実現することで、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が指揮します。訴訟費用とは、証人の旅費日当や国選弁護人の報酬など刑事手続に要した費用で、刑の言渡しをしたときは原則として被告人に負担させ、無罪が確定した被告人には国が費用を補償します。
判決が確定しても、それだけでは刑は始まりません。誰かが刑務所への収容や罰金の取立てを命じなければならず、その役目は裁判所ではなく検察官が担います。裁判にかかった費用も、有罪なら原則として被告人の負担です。逆に無罪になった人には、国が裁判の費用を補償します。執行猶予中に再び罪を犯したときに猶予を取り消すのも、検察官が請求して裁判所が決める手続です。裁判の後始末の権限が誰にあるかを押さえる語です。
裁判の執行は、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が指揮します
裁判は、原則として確定した後にこれを執行し(刑事訴訟法471条)、その執行は、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が指揮します(472条1項本文)。勾引状・勾留状の執行を裁判長が指揮する場合など、性質上裁判所又は裁判官が指揮すべき場合は例外です(同項ただし書)。上訴審の裁判や上訴の取下げによって下級裁判所の裁判を執行する場合は、上訴裁判所に対応する検察庁の検察官が指揮しますが、記録が下級裁判所側にあるときはその裁判所に対応する検察庁の検察官が指揮します(同条2項)。「刑の執行を指揮すること」は検察官の権限として認められています。検察官は公訴の提起・遂行だけでなく、裁判の執行の指揮まで刑事手続の全段階に関わります。
刑の言渡しをしたときは貧困の場合を除き訴訟費用を被告人に負担させ、無罪が確定すれば国が費用を補償します
刑の言渡しをしたときは、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することができないことが明らかであるときを除き、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければなりません(181条1項)。被告人の責めに帰すべき事由によって生じた費用は、刑の言渡しをしない場合にも負担させることができ(同条2項)、検察官のみが上訴して棄却されたときの上訴の費用は被告人に負担させられません(同条3項)。訴訟費用には証人・鑑定人の旅費日当宿泊料、国選弁護人の報酬などが含まれます。無罪の判決が確定したときは、国はその被告人であった者に対し、裁判に要した費用を補償します(188条の2以下)。これとは別に、未決の抑留・拘禁を受けた者が無罪の裁判を受けたときは刑事補償法により補償を請求できます。
執行猶予の取消しは検察官が請求し裁判所が決定でし、保釈保証金の没取は保釈の取消しと結び付いています
刑の執行猶予の言渡しを取り消すべき場合には、検察官が、刑の言渡しを受けた者の現在地又は最後の住所地を管轄する地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所にその請求をしなければなりません(349条1項)。保護観察中の遵守事項違反を理由とする取消しは保護観察所の長の申出に基づいて請求します(同条2項)。裁判所は猶予の言渡しを受けた者又はその代理人の意見を聴いて決定をし、遵守事項違反による取消しで本人の請求があるときは口頭弁論を経なければならず、この決定には即時抗告ができます(349条の2)。保釈を許す場合には、裁判所は必ず保証金額を定めなければなりません(93条1項)。「保釈保証金の没取という威嚇以外の手段により被告人の出頭を確保することができると考えるときは、保証金額を定めないことができる」という肢は誤りです。保釈保証金の没取は、裁判所が保釈を取り消す場合に決定でその全部又は一部を没取できるもので(96条2項)、拘禁刑以上の実刑判決の宣告後に保釈中の被告人が逃亡したときは保釈を取り消して没取しなければなりません(同条4項・5項、令和5年改正)。没取は保釈の取消しや逃亡という事情に結び付いていて、罪の法定刑によって法律上当然に結論が異なるものではありません。
- 執行の指揮(472条)裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官。裁判所・裁判官が指揮すべき性質のものは例外
- 訴訟費用の負担(181条)刑の言渡しのとき原則として被告人に。貧困で納付できないことが明らかなら除く。被告人の責めに帰すべき費用は刑の言渡しが無くても可
- 費用補償(188条の2以下)無罪判決の確定→国が裁判に要した費用を補償。身体拘束の補償は刑事補償法
- 執行猶予の取消し(349条・349条の2)検察官の請求→裁判所の決定。意見聴取、場合により口頭弁論。即時抗告可
- 保証金の没取(96条)保釈取消しのとき裁量で、実刑判決宣告後の逃亡のときは必要的。法定刑とは無関係
刑事訴訟法472条1項
裁判の執行は、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮する。但し、第七十条第一項但書の場合、第百八条第一項但書の場合その他その性質上裁判所又は裁判官が指揮すべき場合は、この限りでない。
刑事訴訟法181条1項
刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。
刑事訴訟法349条1項
刑の執行猶予の言渡しを取り消すべき場合には、検察官は、刑の言渡しを受けた者の現在地又は最後の住所地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所に対しその請求をしなければならない。
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