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用語集 / 刑事訴訟法 / 裁判の確定と確定力

裁判の確定と確定力(内容的確定力・形式裁判後の再起訴)とは

さいばんのかくていとかくていりょく

刑事訴訟法 裁判・既判力・上訴

裁判の確定とは、上訴などの通常の不服申立てができなくなり、裁判の内容を争えなくなることです。確定力には、その裁判をもう取り消せないという形式的確定力と、裁判の判断内容が後の手続を拘束する内容的確定力があり、実体判決の確定からは一事不再理効が生じます。

判決が言い渡されても、控訴できる間は結論が変わるかもしれません。控訴期間が過ぎるか、上告まで終わると、その裁判はもう動かせなくなります。これが確定です。確定した裁判は、ただ取り消せないだけでなく、同じ事件をもう一度持ち出すことも封じます。無罪が確定した人を、新しい証拠が出たからといって裁き直すことはできません。一方で、告訴が無いから打ち切るといった手続上の理由だけの裁判は、理由が解消すればやり直せます。どこまで後を縛るかが確定力の問題です。

検察庁の執務室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机に向かい、机の上に二つの書類が並んでいる。左の書類に「無罪判決 確定」と大きな判、右の書類に「公訴棄却判決 確定(告訴なし)」の判。右の書類の横に新しい封筒(札「告訴状」)が置かれてい

裁判は通常の不服申立てができなくなると確定し、形式的確定力と内容的確定力を持ちます

裁判は、上訴期間が経過したとき、上訴の放棄や取下げがあったとき、上訴審の裁判が告知されて更に上訴できないときに確定します。上訴の提起期間は裁判が告知された日から進行し(刑事訴訟法358条)、控訴・上告は14日です。確定した裁判を通常の方法では取り消せなくなる効力を形式的確定力といい、再審や非常上告はその例外です。裁判の判断内容が後の手続を拘束する効力を内容的確定力といい、有罪・無罪の実体判決では、同じ事件について再び審判することを許さない一事不再理効となって現れます(憲法39条、337条1号)。殺人罪の訴因について無罪判決が確定した後、有罪を立証するに十分な新たな証拠が発見されても、再起訴すれば裁判所は免訴を言い渡さなければならず、改めて審理して有罪にすることはできません。「裁判所は、改めて審理し、有罪の判決をすることができる」という肢は誤りで、この場合が「免訴の言渡しをしなければならない場合」に当たります。有罪判決の執行力も確定によって生じます。

形式裁判にも内容的確定力はありますが、事情が変われば同じ事件を再起訴できます

公訴棄却や免訴などの形式裁判は、訴訟条件が無いという判断を内容としているので、同じ事情のままで再起訴すれば、その判断に拘束されて再び公訴棄却になります。しかし、判断の前提となった事情が変われば拘束は及ばず、再起訴できます。告訴がないまま起訴された器物損壊事件で公訴棄却の判決(338条4号)が確定した後に被害者から告訴を得れば、告訴を欠くという事情が解消されているので、再度同一事実で起訴することができます。「検察官は、その後に被害者から告訴を得たとしても、再度、同事件の被告人を同一事実で起訴することはできない」という肢は誤りです。公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消し後に犯罪事実につき新たに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができます(340条)。この規定は、形式裁判の後の再起訴が原則として妨げられないことを前提に、公訴取消しの場合だけ例外的に制限を置いたものと読まれています。

法廷の場面。先生が裁判長役(札「裁判長」)で法壇に座り、被告人席に生きて立っている男性(札「被告人(死亡したはずの)」)。先生の手元に古い書類「公訴棄却決定 被告人死亡 確定」と、横に偽造の死亡診断書(札「偽造」)。先生の吹き出し「死亡を理

被告人死亡の公訴棄却決定が虚偽の証拠によるものだったときは、再起訴を妨げないとする論拠が問われます

被告人が自分の死亡診断書を偽造して死亡したように装い、被告人の死亡を理由とする公訴棄却の決定(339条1項4号)が確定した後に生存が発覚した事案で、裁判例は、公訴棄却の決定は形式裁判だから確定しても再起訴は原則として妨げられず、まして死亡の事実認定が内容虚偽の証拠に基づいていたことが新証拠で明白になった場合には、その決定の判断が後の再起訴を妨げることはないとして、再起訴を適法としました(大阪地判昭和49年5月2日)。この結論を支える論拠として、公訴棄却事由の「被告人が死亡したとき」とは死亡の証拠がある場合の意味だとする考え、被告人死亡による公訴棄却決定は非終局的な決定で確定裁判の効力が生じないとする考え、再起訴禁止の利益を受けるには被告人にその利益を要求できる資格が必要だとする考え、この決定は訴訟続行が無意味になったので打ち切る点で心神喪失による公判手続の停止と同性質だとする考えが挙げられます。他方で、再起訴禁止の効力が及ばなくなる事情の変更は新証拠の発見ではなく被告人の死亡という事実自体の変化でなければならないという考えは、新証拠による再起訴を認めない方向に働くので、この結論の論拠にはなりません。

再審開始の決定が確定しても、再審の判決が確定するまで元の確定判決は効力を失いません

有罪の確定判決について再審の請求に理由があるときは、裁判所は再審開始の決定をし(448条1項)、その決定が確定した事件については、裁判所はその審級に従って更に審判をします(451条1項)。元の確定判決がいつ効力を失うかについて明文は無く、再審の判決が確定した時に初めて失効すると解されています。「再審開始の決定が確定したとしても、再審の判決が確定するまでは、再審の請求の対象となった確定判決は、その効力を失わない」という肢は正しいです。再審開始決定があったときに刑の執行を停止できる規定(448条2項)は、原判決がなお効力を持つことを前提にしています。

  • 形式的確定力上訴など通常の不服申立てでは取り消せなくなる効力。例外は再審・非常上告
  • 内容的確定力判断内容が後の手続を拘束する効力。実体判決では一事不再理効(337条1号)、形式裁判では同じ事情の下での再起訴を妨げる効力
  • 形式裁判後の再起訴原則できる(事情が変われば)。告訴を欠く公訴棄却→告訴を得て再起訴可。公訴取消しによる公訴棄却決定→新たに重要な証拠を発見した場合に限る(340条)。被告人死亡の公訴棄却決定が虚偽の証拠によるとき→再起訴可(裁判例)
  • 再審との関係再審開始決定が確定しても原判決は再審の判決確定まで失効しない

刑事訴訟法340条

公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができる。

刑事訴訟法337条1号

左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。一 確定判決を経たとき。

論文ではこう使う

論文で再起訴の可否を論じるときは、前の裁判が実体判決か形式裁判かを先に分けます。実体判決なら一事不再理効の範囲(客観的・時間的・人的)の問題として書き、形式裁判なら、その裁判の判断内容(どの訴訟条件が欠けると判断したか)と、再起訴時にその事情が変わっているかで内容的確定力が及ぶかを論じ、公訴取消しの場合だけ340条の明文があることを添えます。被告人死亡の公訴棄却決定の事案では、形式裁判の確定力の性質と、虚偽の証拠で裁判を得た者が再起訴禁止の利益を主張できるかを論拠として整理します。

試験ではこう問われる

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