非常上告とは
ひじょうじょうこく
非常上告とは、判決が確定した後にその事件の審判が法令に違反したことを発見したときに、検事総長が最高裁判所に対して申し立てる非常救済手続です(刑事訴訟法454条)。事実認定の誤りを正す再審と違い、法令違反を正して法令の解釈適用を統一することを目的とし、判決の効力は原則として被告人に及びません。
判決が確定した後に、法定刑を超える刑を言い渡していたとか、公訴時効が完成した事件に有罪を言い渡していたといった法令違反が見つかることがあります。事実の誤りではなく法律の適用の誤りなので、新しい証拠を探す再審にはなじみません。そこで刑事訴訟法は、検事総長が最高裁判所に申し立てて法令違反を正す非常上告を置いています。目的は法令の解釈適用を全国で統一することにあるので、原則として被告人の運命は変わらず、被告人に不利益な判決だったときに限って被告人を救います。
非常上告を申し立てられるのは検事総長だけで、申立先は最高裁判所です
検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができます(454条)。申立てには理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出し(455条)、公判期日には検察官が申立書に基づいて陳述します(456条)。被告人や弁護人には申立権がなく、各地の検察官にもありません。再審が有罪の言渡しを受けた者やその家族、検察官から請求できるのと異なります。最高裁判所は申立書に包含された事項に限って調査し、裁判所の管轄・公訴の受理・訴訟手続に関しては事実の取調べをすることができます(460条)。
理由があれば法令違反の部分を破棄し、原判決が被告人に不利益なときだけ更に判決をして被告人に効力を及ぼします
非常上告に理由がないときは判決で棄却します(457条)。理由があるときは、原判決が法令に違反したならその違反した部分を破棄し、訴訟手続が法令に違反したならその違反した手続を破棄します(458条)。ただし、原判決が被告人のため不利益であるときは、原判決を破棄して被告事件について更に判決をします(458条1号ただし書)。非常上告の判決は、この破棄自判の場合を除いて、その効力を被告人に及ぼしません(459条)。つまり、原判決が被告人に有利な方向で法令に違反していたときは、違反部分を破棄して法令の解釈を正すだけで、被告人の地位はそのまま残ります。被告人に不利益な違反があったときだけ、新しい判決が被告人に効力を持ちます。
再審とは、申立人・申立先・理由・目的・効力のすべてが対になります
再審は確定判決の事実認定の誤りから有罪とされた者を救う手続で、非常上告は確定判決の法令違反を正して法令の解釈適用を統一する手続です。どちらも確定判決に対する非常救済手続ですが、誰が・どこへ・何を理由に申し立て、その結果が被告人に及ぶかが、すべて対になっています。再審の判決は当然に被告人に及び、原判決の刑より重い刑は言い渡せません(452条)。非常上告の判決は原則として被告人に及ばず、被告人に不利益な原判決を破棄自判したときだけ及びます(459条)。
非常上告と再審の対比
- 申立人検事総長だけ(再審は検察官・有罪の言渡しを受けた者・法定代理人と保佐人・遺族)
- 申立先最高裁判所(再審は原判決をした裁判所)
- 理由確定判決の審判の法令違反(再審は435条各号の事実認定の誤りなど)
- 目的法令の解釈適用の統一(再審は有罪とされた者の救済)
- 効力原則として被告人に及ばない。原判決が被告人に不利益なときは破棄自判で及ぶ(再審の判決は当然に被告人に及び、不利益変更は禁止)
刑事訴訟法454条
検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。
刑事訴訟法458条
非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。一 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。二 訴訟手続が法令に違反したときは、その違反した手続を破棄する。
刑事訴訟法459条
非常上告の判決は、前条第一号但書の規定によりされたものを除いては、その効力を被告人に及ぼさない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。