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用語集 / 刑事訴訟法 / 簡易公判手続と合意制度

簡易公判手続と合意制度とは

かんいこうはんてつづきとごういせいど

刑事訴訟法 再審・特別手続・裁判員・少年・刑事補償

簡易公判手続とは、被告人が冒頭手続で訴因について有罪である旨を陳述したときに、裁判所が決定で証拠調べの方式を簡略にして審判する手続です(刑事訴訟法291条の2)。合意制度とは、特定犯罪の被疑者・被告人が他人の刑事事件の捜査・公判に協力することと引換えに、検察官が不起訴や軽い求刑などを約束する合意をする制度です(350条の2以下)。

被告人が法廷で「間違いありません」と認めている事件まで、争いのある事件と同じ厳格な証拠調べをする必要はありません。そこで裁判所は、有罪の陳述があった訴因について、証拠調べを簡略にする簡易公判手続の決定ができます。これとは別に、組織犯罪や経済犯罪で末端の関係者から首謀者の情報を引き出すために、他人の事件への協力と引換えに自分の事件で不起訴や軽い求刑を約束する合意制度があります。どちらも被告人側の同意や協力に基づいて手続を変える仕組みですが、場面と目的がまったく違います。

法廷の冒頭手続の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、被告人席の若い男性(札「被告人」)が「起訴状のとおり間違いありません」と吹き出し。隣に弁護士バッジの男性(札「弁護人」)、向かいに男性の検察官(札「検察官」)が座り、二人の頭

簡易公判手続は、有罪の陳述があった訴因について、当事者の意見を聴いた裁判所が決定で始めます

被告人が冒頭手続(291条5項)で起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官・被告人・弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあった訴因に限り、簡易公判手続によって審判をする旨の決定をすることができます。ただし、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件については決定できません(291条の2)。決定は裁判所の裁量で、「することができる」と定められています。即決裁判手続が検察官の申立てと被疑者の同意で起訴と同時に始まるのに対し、簡易公判手続は公判の冒頭手続で被告人が有罪を認めたことを受けて裁判所が決める点が違います。「検察官は,公訴を提起しようとする窃盗事件について,被疑者が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述をしたときは,被疑者及び弁護人の意見を聴き,有罪である旨の陳述をした訴因に限り,即決裁判手続によって審判する旨の申立てをすることができる」という肢は誤りで、有罪の陳述と意見聴取を要件にしているのは簡易公判手続の決定です。決定があった事件では、証拠調べの方式に関する規定の多くが適用されず、証拠調べは公判期日において適当と認める方法で行うことができます(307条の3)。伝聞証拠を排除する320条1項も適用されませんが、検察官・被告人・弁護人が証拠とすることに異議を述べたものは除かれます(320条2項)。事件が簡易公判手続によることができないもの又は相当でないものであると認めるときは決定を取り消さなければならず(291条の3)、取り消したときは当事者に異議がない場合を除いて公判手続を更新します(315条の2)。

簡易公判手続の骨格

  • 始まり方冒頭手続での有罪の陳述+検察官・被告人・弁護人の意見聴取+裁判所の決定(291条の2)
  • 対象外死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件(291条の2ただし書)。即決裁判手続と同じ線引き
  • 証拠調べ適当と認める方法で行える(307条の3)。伝聞法則は適用されないが、異議があるものは除く(320条2項)
  • 取消しできないもの・相当でないものと認めるときは取り消さなければならない(291条の3)。取消し後は原則として公判手続を更新(315条の2)
  • 即決裁判手続との違い即決は検察官の申立て+被疑者の同意で起訴と同時に始まり、即日判決・必要的執行猶予・事実誤認控訴の制限がある。簡易公判手続にはこれらがない

合意制度は、特定犯罪について、他人の刑事事件への協力と引換えに検察官が不起訴や求刑などを約束する制度で、弁護人の同意が要ります

検察官は、特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人が、特定犯罪に係る他人の刑事事件について、取調べや証人尋問で真実の供述をすること、証拠の提出その他の必要な協力をすることと引換えに、検察官がその被疑者・被告人の事件について、公訴を提起しないこと、公訴を取り消すこと、特定の訴因・罰条で起訴し又は維持すること、訴因・罰条の追加・撤回・変更を請求すること、論告で特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること、即決裁判手続の申立てをすること、略式命令の請求をすることを内容とする合意をすることができます(350条の2第1項)。特定犯罪は、贈収賄や詐欺などの財政経済犯罪と薬物・銃器犯罪などで、死刑又は無期拘禁刑に当たるものは除かれます(同条2項)。合意をするには弁護人の同意がなければならず、合意は検察官・被疑者又は被告人・弁護人が連署した書面で内容を明らかにしてします(350条の3)。合意のための協議は検察官と被疑者又は被告人及び弁護人との間で行い、被疑者・被告人と弁護人に異議がないときは一部を弁護人のみとの間で行えます(350条の4)。協議でした供述は、合意が成立しなかったときは証拠にできません(350条の5第2項)。この制度は平成28年改正で設けられ、平成30年6月に施行されました。

検察庁の会議室で協議をする場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机の片側に座り、向かいに若い男性(札「被疑者」)と弁護士バッジの男性(札「弁護人」)が並んで座る。机の中央に「合意内容書面」と書いた一枚の書面があり、三人分の署名欄が見える。壁

合意があるときは合意内容書面の取調べを請求しなければならず、合意に違反する虚偽の供述は処罰されます

検察官は、被疑者との間でした合意がある場合に、その被疑者の事件について公訴を提起したときは、冒頭手続が終わった後遅滞なく、合意内容書面の取調べを請求しなければなりません(350条の7第1項)。合意に基づく供述が他人の事件の証拠として使われるときも、合意内容書面の取調べ請求が必要です(350条の8・350条の9)。合意の存在を裁判所と相手方に明らかにして、供述の信用性を吟味できるようにするためです。合意に違反して検察官・検察事務官・司法警察職員に虚偽の供述をし、又は偽造・変造の証拠を提出した者は、5年以下の拘禁刑に処せられます(350条の15第1項)。合意制度は、協力者本人の訴追や求刑を軽くする制度です。これに対して刑事免責(157条の2・157条の3)は、証人尋問で自己負罪拒否特権を失わせる代わりに、その証言とそれに基づく証拠を証人の刑事事件で不利益な証拠にできないとする制度で、検察官の請求により裁判所が決定します。合意制度と刑事免責はどちらも平成28年改正で入りましたが、同意の相手も効果も別の制度です。

合意制度の骨格

  • 合意の当事者検察官と被疑者・被告人。弁護人の同意が必要(350条の3第1項)。連署した書面で(同条2項)
  • 対象特定犯罪(財政経済犯罪・薬物銃器犯罪など。死刑又は無期拘禁刑に当たるものを除く)に係る事件(350条の2第2項)
  • 協力者がすること他人の刑事事件について取調べ・証人尋問で真実の供述、証拠の提出その他の協力(350条の2第1項1号)
  • 検察官がすること不起訴、公訴取消し、特定の訴因・罰条での起訴・維持、訴因変更請求、特定の求刑、即決裁判の申立て、略式命令の請求(同項2号)
  • 公判での扱い合意内容書面の取調べを請求しなければならない(350条の7〜350条の9)
  • 違反合意に違反する虚偽供述・偽造証拠の提出は5年以下の拘禁刑(350条の15)
  • 刑事免責との違い刑事免責は証人尋問で自己負罪拒否特権を失わせる代わりに証言を本人の不利益な証拠にできなくする制度。裁判所の決定による(157条の2・157条の3)

刑事訴訟法291条の2

被告人が、前条第五項の手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官、被告人及び弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあつた訴因に限り、簡易公判手続によつて審判をする旨の決定をすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。

刑事訴訟法320条2項

第二百九十一条の二の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない。但し、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。

刑事訴訟法350条の3

前条第一項の合意をするには、弁護人の同意がなければならない。2 前条第一項の合意は、検察官、被疑者又は被告人及び弁護人が連署した書面により、その内容を明らかにしてするものとする。

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