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再審の構造(利益再審・請求権者・事由・開始決定の効果)とは

さいしんのこうぞう

刑事訴訟法 再審・特別手続・裁判員・少年・刑事補償

再審とは、有罪の言渡しをした確定判決に対して、その言渡しを受けた者の利益のために、事実認定の誤りを理由に裁判をやり直す非常救済手続です(刑事訴訟法435条)。無罪の確定判決を覆して有罪にするための再審(不利益再審)は認められていません。

判決が確定すると、刑事裁判は原則としてもう争えません。しかし、確定した後に無実を示す証拠が見つかることがあります。そこで刑事訴訟法は、有罪の言渡しを受けた人を救うために、確定判決を開き直して審理をやり直す再審を置いています。再審は確定判決の安定を破ってでも誤判から人を救う手続なので、有罪とされた人に利益な方向にしか認められません。無罪が確定した人を再び裁判にかけることは、同じ犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないという憲法39条の保障に反する疑いがあるからです。

裁判所の受付で再審請求書を出す場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)でカウンターの内側に座り、向かいに年配の男性(札「有罪の言渡しを受けた者」)が「再審請求書」と書いた封筒を差し出す。カウンターの上に立て札「再審 435条」、その下に二つの札

再審は、有罪の確定判決に対して、言渡しを受けた者の利益のためにだけ請求できます

再審の請求は、有罪の言渡しをした確定判決に対して、その言渡しを受けた者の利益のために、435条各号の場合にすることができます(435条柱書)。控訴又は上告を棄却した確定判決に対しても、偽造証拠・虚偽の証言・関与裁判官の職務犯罪を理由に請求できます(436条1項)。旧刑事訴訟法には無罪判決を覆す不利益再審がありましたが、現行法は憲法39条の二重の危険の禁止の趣旨から、利益再審だけを認めています。「確定した判決の言渡しを受けた者にとって不利益となる再審を認めることは,『二重の危険の禁止』に反する疑いがあるため,刑事訴訟法は,確定した有罪判決の言渡しを受けた者にとって利益な方向での再審のみを認めた」という肢は正しいです。したがって、「有罪を認めるべき明らかな証拠を新たに発見したときは,無罪の言渡しをした確定判決に対しても再審の請求をすることができる」という肢は誤りです。435条6号の新証拠も、無罪・免訴・刑の免除・原判決より軽い罪を認めるべき証拠に限られていて、有罪方向の新証拠は再審事由になりません。

再審事由(435条各号)

  • 1号原判決の証拠となった証拠書類・証拠物が、確定判決により偽造・変造であったことが証明されたとき
  • 2号原判決の証拠となった証言・鑑定・通訳・翻訳が、確定判決により虚偽であったことが証明されたとき
  • 3号有罪の言渡しを受けた者を誣告した罪が確定判決により証明されたとき(誣告により有罪とされたときに限る)
  • 4号原判決の証拠となった裁判が、確定裁判により変更されたとき
  • 5号特許権等を害した罪で有罪とされた事件について、権利の無効の審決が確定し、又は無効の判決があったとき
  • 6号無罪・免訴を言い渡し、刑の免除を言い渡し、又は原判決で認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき
  • 7号原判決に関与した裁判官や、証拠となった書面を作成し供述をした検察官・検察事務官・司法警察職員が、被告事件について職務に関する罪を犯したことが確定判決により証明されたとき

検察官も有罪の言渡しを受けた者の利益のために請求でき、本人が死亡していれば子も請求できます

再審の請求ができるのは、検察官、有罪の言渡しを受けた者、その法定代理人及び保佐人、そして有罪の言渡しを受けた者が死亡し又は心神喪失の状態にある場合のその配偶者・直系の親族・兄弟姉妹です(439条1項)。検察官は公益の代表者として法の正当な適用を求める立場にあるので、有罪とされた者の利益のための再審も請求できます。「検察官は,再審の請求をすることができる」という肢は正しく、「検察官は,有罪の言渡しをした確定判決に対して,その言渡しを受けた者の利益のために,再審の請求をすることができない」という肢と、「検察官は,再審請求権を有していますが,有罪の言渡しを受けた者の利益のために,再審を請求することはできません」という発言は誤りです。有罪の言渡しを受けた者が死亡したときは、配偶者・直系の親族・兄弟姉妹が請求でき、子は直系の親族に当たります。「有罪の言渡しを受けた者が死亡した場合には,その者の子であっても再審の請求をすることができない」という肢は誤りです。7号の事由については、有罪の言渡しを受けた者がその罪を犯させた場合は検察官でなければ請求できません(439条2項)。検察官以外の者は、再審の請求をする場合に弁護人を選任でき、その選任は再審の判決があるまで効力を持ちます(440条)。「有罪の言渡しを受けた者は,再審の請求をする場合には,弁護人を選任することができる」という肢は正しいです。

教室で先生が教師役(札「刑事訴訟法」)が黒板の前に立つ場面。黒板に見出し「再審を請求できる人(439条1項)」で四つの札「検察官」「有罪の言渡しを受けた者」「法定代理人・保佐人」「本人が死亡・心神喪失なら 配偶者・直系の親族・兄弟姉妹」。四

刑の執行が終わった後でも請求でき、請求しただけでは刑の執行は止まりません

再審の請求は、刑の執行が終わり、又はその執行を受けることがないようになったときでもすることができます(441条)。再審は刑の執行から解放するためだけの制度ではなく、誤った有罪判決そのものを取り消して名誉を回復し、刑事補償を受けられるようにすることも目的だからです。「再審の請求は,刑の執行が終わり,又はその執行を受けることがないようになったときには,これをすることができない」という肢は誤りです。他方で、再審の請求は刑の執行を停止する効力を持ちません(442条本文)。ただし、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の判決が確定するまで刑の執行を停止することができます(442条ただし書)。請求は原判決をした裁判所が管轄し(438条)、取り下げることもできますが、取り下げた者は同一の理由では再び請求できません(443条)。

理由があれば裁判所は開始決定をしなければならず、開始決定で刑の執行を停止することができます

再審の請求を受けた裁判所は、請求が法令上の方式に違反し又は請求権の消滅後にされたものであるときは決定で棄却し(446条)、理由がないときも決定で棄却しなければなりません(447条1項)。理由のないことを理由に棄却する決定があったときは、何人も同一の理由では再び請求できません(447条2項)。請求に理由があるときは、再審開始の決定をしなければなりません(448条1項)。開始するかどうかに裁判所の裁量はありませんが、開始決定をしたときに刑の執行を停止するかどうかは「停止することができる」と定められていて裁量です(448条2項)。「再審の請求を受けた裁判所は,同請求が理由のあるときは,再審開始の決定をしなければならない」という肢と、「再審の請求を受けた裁判所は,再審の請求が理由のあるときは再審開始の決定をしなければならないが,その場合には,確定判決による刑の執行を停止することができる」という肢はいずれも正しいです。棄却決定と開始決定に対しては即時抗告ができます(450条)。令和8年改正(施行前)では、開始決定に対する即時抗告はその決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限られ、提起期間は14日になります(改正後の450条の2・450条の3)。

開始決定が確定しても原判決は失効せず、再審の判決が確定した時に初めて効力を失います

再審開始の決定が確定すると、裁判所はその審級に従って更に審判をしなければなりません(451条1項)。これが再審公判です。開始決定の確定で生じる効果は、再審公判を開く義務にとどまり、対象となった確定判決が当然に効力を失うわけではありません。原判決がいつ失効するかに明文はありませんが、実務と多数説は再審の判決が確定した時と解しています。448条2項が開始決定の後も刑の執行停止を裁判所の裁量に委ねているのは、原判決の効力がなお残っていることを前提にしているからです。「再審開始の決定が確定したときは,再審の請求が対象とした確定判決は,その効力を失う」という肢は誤りで、「有罪の確定判決について、再審開始の決定が確定したとしても、再審の判決が確定するまでは、再審の請求の対象となった確定判決は、その効力を失わない」という肢は正しいです。再審公判では、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできません(452条)。再審で無罪の言渡しをしたときは、官報と新聞紙に掲載して判決を公示しなければなりません(453条)。再審請求権者が死亡者のために請求したときなどは、被告人の出頭がなくても審判でき、弁護人が出頭しなければ開廷できません(451条2項・3項)。

裁判所の廊下に掲示した流れ図の前で先生が裁判官役(札「裁判所」)が説明する場面。流れ図は左から右へ五つの箱「再審請求」「開始決定(理由があれば しなければならない)」「開始決定の確定」「再審公判」「再審判決の確定」。「開始決定」の箱の下に小

再審の二段階の流れ

  • 再審請求原判決をした裁判所へ(438条)。刑の執行は止まらない(442条本文)が、検察官は停止できる(442条ただし書)
  • 棄却決定方式違反・請求権消滅(446条)、理由なし(447条1項)。即時抗告ができる(450条)
  • 再審開始決定理由があれば「しなければならない」(448条1項)。刑の執行停止は「することができる」(448条2項)。即時抗告ができる(450条)
  • 再審公判開始決定の確定後、審級に従い更に審判する(451条1項)。原判決の刑より重い刑は言い渡せない(452条)
  • 再審判決の確定この時に原確定判決が効力を失う。無罪なら官報・新聞紙で公示(453条)

刑事訴訟法435条柱書

再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。

刑事訴訟法439条1項

再審の請求は、左の者がこれをすることができる。一 検察官 二 有罪の言渡を受けた者 三 有罪の言渡を受けた者の法定代理人及び保佐人 四 有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹

刑事訴訟法441条

再審の請求は、刑の執行が終り、又はその執行を受けることがないようになつたときでも、これをすることができる。

刑事訴訟法442条1項

再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない。ただし、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の判決が確定するまで刑の執行を停止することができる。

刑事訴訟法448条1項・2項

再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。2 再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。

刑事訴訟法451条1項

裁判所は、再審開始の決定が確定した事件については、第四百四十九条の場合を除いては、その審級に従い、更に審判をしなければならない。

論文ではこう使う

論文で再審請求の可否を論じるときは、まず対象が有罪の確定判決であること、請求が言渡しを受けた者の利益のためであることを435条柱書で確認し、請求権者が439条1項のどれに当たるかを書きます。そのうえで再審事由を特定し、435条6号なら新規性と明白性の二つの要件に分けて、明白性は確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせるかを新旧全証拠の総合評価で判断する判例の枠組みを書きます。開始決定の効果を問われたら、開始決定の確定で原判決が失効するのではなく再審公判の義務が生じるにとどまること、刑の執行停止は裁量であることを448条2項と451条1項から導きます。

試験ではこう問われる

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