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用語集 / 刑事訴訟法 / 少年事件の手続

少年事件の手続とは

しょうねんじけんのてつづき

刑事訴訟法 再審・特別手続・裁判員・少年・刑事補償

少年事件の手続とは、20歳未満の少年の被疑事件について、捜査機関が犯罪の嫌疑があればすべて家庭裁判所に送致し(全件送致主義)、家庭裁判所が保護処分か刑事処分相当として検察官に送致(逆送)するかを決め、逆送後に起訴された刑事事件には少年法の特則が適用される仕組みです。少年法で定めるもののほかは、刑事訴訟法の一般の例によります(少年法40条)。

17歳の少年が万引きをした事件は、大人の事件のように検察官が起訴するか起訴猶予にするかを決めるのではなく、嫌疑があれば必ず家庭裁判所に送られます。少年の事件では処罰よりも立ち直りを優先し、家庭裁判所が少年の性格や環境を調べたうえで保護処分にするか、刑事裁判に回す(逆送する)かを決めるからです。逆送されて起訴された後も、不定期刑や実名報道の禁止のような少年法の特則が付いて回ります。短答では、この流れのどこを検察官や裁判所が飛ばせないかが問われます。

検察庁の執務室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机に座り、机の上に「少年被疑事件(17歳・窃盗)」と書いた記録と、宛名「家庭裁判所」と書いた送致書。横に立つ若い男性の検察事務官(札「検察事務官」)が「軽い事件なので起訴猶予にしますか」

検察官は嫌疑のある少年事件をすべて家庭裁判所に送致しなければならず、罰金以下の罪は司法警察員が直接送致します

検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、家庭裁判所から送致を受けた事件である場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければなりません(少年法42条1項前段)。犯罪の嫌疑がなくても、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは同様です。これが全件送致主義で、成人の事件のように起訴猶予に当たる処分で手続を終えることはできません。「検察官は,少年被疑事件について捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があるものと思料するときは,家庭裁判所から逆送を受けた場合を除いて,全件を家庭裁判所に送致しなければならない」という肢は正しく、「検察官は,少年の窃盗事件について捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があるものと思料するときであっても,少年の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により処分を必要としないときは,これを家庭裁判所に送致しないことができる」という肢は誤りです。司法警察員は、捜査した事件を原則として検察官に送致しますが(刑事訴訟法246条)、少年の被疑事件について罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、検察官ではなく家庭裁判所に直接送致しなければなりません(少年法41条前段)。「司法警察員は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは,これを検察官ではなく家庭裁判所に送致しなければならない」という肢は正しいです。

少年の被疑者も勾留はできますが、やむを得ない場合に限られ、住居があることは勾留を妨げる事情ではありません

少年の刑事事件は、少年法で定めるもののほか一般の例によるので(40条)、勾留も刑事訴訟法の規定によってできます。ただし、検察官は、少年の被疑事件においてはやむを得ない場合でなければ裁判官に勾留を請求することができず(43条3項)、裁判官も、やむを得ない場合でなければ少年に対して勾留状を発することができません(48条1項)。検察官は勾留の請求に代えて観護の措置を請求することもできます(43条1項)。少年を勾留する場合は少年鑑別所に拘禁することもできます(48条2項)。このように勾留は制限されていますが、禁止されているわけではありません。「少年の被疑者については,勾留することができない」という肢は誤りです。また、定まった住居を有する少年を勾留できないとする規定はないので、「少年の刑事事件については,その健全な育成を期するという見地から,定まった住居を有する少年の被疑者を勾留することはできない」という肢は誤りです。勾留の理由(60条1項)と必要性があり、かつやむを得ない場合であれば、住居のある少年も勾留できます。

地方裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、被告人席の若い男性(札「被告人(公判で18歳と判明)」)。弁護士バッジの男性(札「弁護人」)が「家庭裁判所に移送してください」と吹き出し。法壇の前に流れ図の板があり、左から

家庭裁判所の決定を経ずに起訴された少年の事件は公訴棄却で、公判で少年と分かっても移送の問題にはなりません

家庭裁判所は、拘禁刑に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければなりません(20条1項)。これが逆送です。「家庭裁判所は,死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件について,調査の結果,その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは,決定をもって,これを検察官に送致しなければならない」という肢は正しいです。出題当時の「死刑,懲役又は禁錮」は現在は「拘禁刑」になっています。犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件は、原則として逆送しなければなりません(20条2項)。18歳・19歳の特定少年については、令和3年改正で原則逆送の対象が短期1年以上の拘禁刑に当たる罪にまで広げられました(62条2項)。逆送を受けた検察官は、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは公訴を提起しなければなりません(45条5号本文)。少年に対する公訴の提起は、家庭裁判所への送致と逆送の決定を経ていることが前提なので、これを経ずに成人として起訴された後に少年であることが判明した場合、その公訴提起は手続がその規定に違反したため無効であるときに当たり、裁判所は判決で公訴を棄却します(刑事訴訟法338条4号)。「裁判所は,少年であることが判明した甲については,決定をもって,事件を家庭裁判所に移送しなければならない」という肢は誤りです。家庭裁判所への移送(少年法55条)は、適法に逆送されて起訴された少年について、裁判所が事実審理の結果、保護処分に付するのが相当であると認めるときに決定でする処理で、少年と判明しただけで移送するものではありません。

少年事件の流れと各機関の権限

  • 司法警察員罰金以下の刑に当たる罪の嫌疑があれば家庭裁判所へ直接送致(41条)。それ以外は検察官へ(刑訴246条)
  • 検察官嫌疑があれば全件を家庭裁判所へ送致(42条1項)。起訴猶予のような不送致はできない
  • 家庭裁判所調査・審判のうえ保護処分、又は刑事処分相当なら検察官へ送致=逆送(20条1項)。16歳以上の故意致死は原則逆送(20条2項)。特定少年は短期1年以上の罪まで原則逆送(62条2項)
  • 逆送後の検察官嫌疑があれば起訴しなければならない(45条5号)
  • 家裁の決定を経ない起訴公訴提起の手続が無効で公訴棄却判決(刑訴338条4号)。家庭裁判所への移送ではない
  • 移送(55条)逆送後の刑事裁判で保護処分相当と認めたときに決定で家庭裁判所へ

少年審判には伝聞法則の適用がなく、刑事裁判では不定期刑と推知報道の禁止と検察官関与に少年法の特則があります

家庭裁判所の少年審判は、刑事訴訟法の準用規定がない職権主義の手続で、送致と同時に供述調書などの証拠が一括して送られ、裁判官がそれを読んで審判を開きます。対審の構造を前提にする伝聞法則の適用はありません。「家庭裁判所の少年審判は,非行事実につき争いがある場合には,成人の刑事事件と同様に,伝聞法則の適用がある」という肢は誤りです。少年保護事件で裁判官が行った証人尋問の調書は、裁判官の面前における供述を録取した書面(321条1項1号)に当たります。家庭裁判所は、死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる罪の事件で、非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定で審判に検察官を出席させることができます(22条の2第1項)。出題当時は「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」が対象で、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪,死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件において,…家庭裁判所は,審判に検察官を出席させることができる」という肢は出題当時は正しい内容でしたが、平成26年改正後の現行法では対象犯罪が異なります。刑事裁判で少年に有期拘禁刑をもって処断すべきときは、処断すべき刑の範囲内で長期を定めるとともに、長期の2分の1(長期が10年を下回るときは長期から5年を減じた期間)を下回らない範囲内で短期を定めて言い渡す不定期刑になります(52条1項)。出題当時は「長期3年以上の有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときは、その刑の範囲内において、長期と短期を定めて」言い渡す規定で、「少年の刑事事件につき,少年に対して長期3年以上の有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときは,その刑の範囲内において,長期と短期を定めてこれを言い渡す」という肢は出題当時は正しい内容でしたが、平成26年改正後の現行法では長期3年以上という限定も「その刑の範囲内」で短期を定めるという定め方もなくなっています。特定少年には不定期刑の規定は適用されません(67条)。家庭裁判所の審判に付された少年や少年のとき犯した罪により起訴された者について、本人と推知できるような記事や写真を出版物に掲載することは禁じられます(61条)。「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」という肢は出題当時は正しい内容でしたが、令和3年改正で、特定少年のとき犯した罪により起訴された場合には、略式手続によるときを除いてこの禁止が解除されました(68条)。

少年法の特則と改正

  • 少年審判職権主義。伝聞法則の適用なし。検察官の関与は死刑・無期・長期3年を超える拘禁刑の罪で必要と認めるとき(22条の2。平成26年改正前は故意致死・短期2年以上)
  • 不定期刑有期拘禁刑を処断すべきときは長期と短期を定める。短期は長期の2分の1を下回らない(52条1項。平成26年改正前は長期3年以上に限定)。特定少年には適用なし
  • 推知報道の禁止審判に付された少年・少年のとき犯した罪で起訴された者(61条)。特定少年の起訴後は略式を除き解除(68条、令和3年改正)
  • 保護事件の証人尋問調書321条1項1号の裁判官面前調書に当たる

論文ではこう使う

論文で少年事件が絡むのは、公判で被告人が少年と判明した場合の処理や、少年の身体拘束の適法性を問う場面です。前者は、少年に対する公訴提起には家庭裁判所への送致と逆送の決定が前提になること(少年法42条・20条・45条5号)を示し、これを欠く起訴は公訴提起の手続が規定に違反して無効であるとして338条4号の公訴棄却判決を導きます。移送(55条)は逆送後の事件で保護処分相当と認めたときの処理であることを一文添えて区別します。後者は、少年法で定めるもののほか一般の例によること(40条)から60条の勾留の理由と必要性を検討したうえで、43条3項・48条1項の「やむを得ない場合」に当たるかを、観護の措置で代えられないかという観点から書きます。

試験ではこう問われる

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