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用語集 / 刑事訴訟法 / 訴訟条件の意義と形式裁判の振り分け

訴訟条件の意義と形式裁判の振り分け(管轄違い・公訴棄却判決・公訴棄却決定・免訴)とは

そしょうじょうけんのいぎとけいしきさいばんのふりわけ

刑事訴訟法 訴因と訴訟条件

訴訟条件とは、裁判所が有罪か無罪かの実体裁判をするために備わっていなければならない条件のことで、裁判権・管轄・公訴提起の有効性・公訴時効の未完成・確定判決がないことなどを指します。訴訟条件を欠くときは実体裁判に入らず、管轄違いの判決(刑事訴訟法329条)、免訴の判決(337条)、公訴棄却の判決(338条)、公訴棄却の決定(339条)のいずれかの形式裁判で手続を打ち切ります。

裁判所が「有罪」「無罪」を言い渡すのは、その事件を裁いてよい前提がそろっているときだけです。たとえば同じ事件で既に判決が確定している、起訴の時点で時効が完成していた、告訴がないのに親告罪で起訴された、被告人が亡くなった、といった場合には、中身を審理して有罪無罪を決めることはできず、手続を打ち切ります。この前提が訴訟条件で、打ち切りの裁判が形式裁判です。どの事由をどの形式(免訴の判決・公訴棄却の判決・公訴棄却の決定・管轄違いの判決)で打ち切るかは条文で決まっていて、入れ替えて問われます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座り、法壇の前に四つの扉が並んだ板書風の図。扉にそれぞれ「免訴の判決(337条)確定判決・刑の廃止・大赦・時効完成」「公訴棄却の判決(338条)裁判権なし・二重起訴・手続の無効」「公訴棄却の

訴訟条件は実体裁判の前提で、裁判所が職権で調べ、欠けていれば四つの形式裁判のどれかで手続を打ち切ります

訴訟条件には、被告人に対する裁判権があること、裁判所に管轄があること、同じ事件が二重に起訴されていないこと、公訴提起の手続が有効であること(起訴状の記載、親告罪の告訴、少年の家庭裁判所の決定、起訴状一本主義など)、公訴時効が完成していないこと、確定判決を経ていないこと、刑の廃止や大赦がないこと、被告人が生存していることなどがあります。訴訟条件の存否は裁判所が職権で調査し、欠けていれば実体裁判をせずに、免訴の判決(刑事訴訟法337条)、公訴棄却の判決(338条)、公訴棄却の決定(339条)、管轄違いの判決(329条)のいずれかで手続を打ち切ります。これらは有罪・無罪の実体裁判と区別して形式裁判と呼ばれます。無罪は形式裁判ではなく実体裁判なので、被告事件が罪とならないときも犯罪の証明がないときも、判決で無罪の言渡しをしなければならず(336条)、公訴棄却にはなりません。「被告事件が罪とならないときは,判決で公訴を棄却しなければならない」という肢は誤りで、「無罪の言渡しをする場合には,決定ではなく,判決でしなければならない」という肢は正しいです。判決は口頭弁論に基づいて行いますが、決定は口頭弁論に基づくことを要しないので(43条1項・2項)、「裁判所は,決定をもって公訴を棄却する場合,口頭弁論に基づく必要はない」という肢は正しいです。

  • 免訴の判決(337条)①確定判決を経たとき ②犯罪後の法令により刑が廃止されたとき ③大赦があったとき ④時効が完成したとき
  • 公訴棄却の判決(338条)①被告人に対して裁判権を有しないとき ②340条に違反して公訴が提起されたとき ③公訴の提起があった事件について更に同一裁判所に公訴が提起されたとき ④公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき
  • 公訴棄却の決定(339条1項)①起訴状謄本が2か月以内に送達されず公訴提起が効力を失ったとき ②起訴状に記載された事実が真実であっても何らの罪となるべき事実を包含していないとき ③公訴が取り消されたとき ④被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなったとき ⑤10条・11条により審判してはならないとき
  • 管轄違いの判決(329条)被告事件が裁判所の管轄に属しないとき。土地管轄については被告人の申立てがなければ言い渡せず、申立ては証拠調べ開始後はできない(331条)
教室の板書の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に二つの箱。左の箱の見出し「実体裁判(判決)」の中に「有罪」「無罪(罪とならない・証明がない 336条)」。右の箱の見出し「形式裁判」の中に「免訴の判決」「公訴棄却の判決」「公訴棄却の決定(口頭弁

確定判決・刑の廃止・大赦・時効の完成は免訴の判決で、免訴になるのはこの四つだけです

免訴の判決をしなければならないのは、確定判決を経たとき、犯罪後の法令により刑が廃止されたとき、大赦があったとき、時効が完成したときの四つに限られます(337条)。殺人罪の訴因について無罪判決が確定した後、有罪を立証するに十分な新たな証拠が発見されたとして再び同一事実で起訴されたときは、確定判決を経た事件に当たるので免訴の言渡しをしなければなりません。起訴より前に公訴時効が完成していたことが判明したときも、時効が完成したときに当たるので免訴の判決です。時効の完成は決定による公訴棄却の事由ではないので、殺人罪により起訴された事件で起訴時に既に時効期間が経過していた場合に「決定で公訴を棄却しなければならない」という肢は誤りです。免訴は訴訟条件を欠くことによる形式裁判ですが、確定判決を経たときを事由とすることから、一事不再理効との関係は一事不再理効の範囲の語で扱います。

裁判権がないとき・二重起訴・公訴提起の手続が無効なときは公訴棄却の判決で、告訴を欠く起訴や家庭裁判所の決定を経ない起訴がここに入ります

判決で公訴を棄却しなければならないのは、被告人に対して裁判権を有しないとき、340条に違反して公訴が提起されたとき、同一事件が同一裁判所に重ねて起訴されたとき、公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるときです(338条)。在日外国大使館の公使のように裁判権の及ばない者が起訴されたときは公訴棄却の判決であって、「免訴の言渡しをしなければならない」という肢は誤りです。公訴の提起があった事件について更に同一裁判所に公訴が提起されたときは、裁判所は公訴を棄却しなければならず、この趣旨の肢は正しいです。公訴提起の手続の無効(338条4号)に当たる典型は、告訴をすることができる者の告訴を欠く親告罪の起訴、告訴が取り消された後の親告罪の起訴、少年の事件で家庭裁判所の刑事処分相当の決定を経ないでされた起訴、起訴状一本主義に違反した起訴、訴因の特定を欠く起訴です。したがって、告訴を欠く親告罪の起訴について「免訴の言渡しをしなければならない」という肢は誤りで、唯一の告訴権者が告訴を取り消した後に同一事実で起訴がされたときも免訴ではなく公訴棄却の判決です。18歳の少年について家庭裁判所の刑事処分を相当と認める決定を経ないで起訴がされたときも免訴ではなく公訴棄却の判決であり、この場合に「決定をもって,事件を家庭裁判所に移送しなければならない」という肢は誤りです。家庭裁判所への移送は適法に起訴された少年被告事件で保護処分が相当と認められるときの制度で、送致の手続を欠く起訴の受け皿ではありません。起訴状一本主義に違反した公訴提起も手続が無効なので、「裁判所は、判決で公訴を棄却しなければならない」という肢は正しいです。公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定した後に、新たに重要な証拠を発見した場合でないのに同一事件が再起訴されたときは、340条違反として公訴棄却の判決であって免訴ではありません。性犯罪は平成29年の刑法改正で非親告罪になったので、強姦罪や強制わいせつ罪の告訴を前提にした出題当時の肢は、現在は名誉毀損罪や器物損壊罪の告訴に置き換えて読みます。

起訴状謄本の不送達・罪とならない記載・公訴の取消し・被告人の死亡や法人の消滅は、口頭弁論を経ない決定で公訴を棄却します

決定で公訴を棄却しなければならないのは、公訴提起の日から2か月以内に起訴状の謄本が送達されず公訴提起がさかのぼって効力を失ったとき(271条2項)、起訴状に記載された事実が真実であっても何らの罪となるべき事実を包含していないとき、公訴が取り消されたとき、被告人が死亡し又は被告人たる法人が存続しなくなったとき、同一事件が数個の裁判所に係属して10条・11条により審判してはならないときです(339条1項)。これらは記録上明白で実体に立ち入る必要がない事由なので、口頭弁論を経ない決定によります。公判係属中に被告人が死亡したときは決定による公訴棄却であって免訴ではありません。法人税法違反で起訴された法人が公判係属中に合併により解散したときは、被告人たる法人が存続しなくなったときに当たるので、決定で公訴を棄却しなければならず、この趣旨の肢は正しいです。公訴棄却の決定に対しては即時抗告ができます(339条2項)。

管轄がないときは管轄違いの判決ですが、土地管轄については証拠調べ開始前の被告人の申立てがなければ言い渡せません

被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違いの言渡しをしなければなりません(329条)。ただし土地管轄は被告人の利便のための定めなので、裁判所は被告人の申立てがなければ土地管轄について管轄違いの言渡しをすることができず、その申立ては被告事件につき証拠調べを開始した後はできません(331条)。「同事件につき証拠調べを開始する前に被告人の申立てがなければ,判決で管轄違いの言渡しをすることはできない」という肢は正しいです。事物管轄と土地管轄の中身や、管轄の有無を訴因で判断するか心証で判断するかの見解問題は、管轄の語で扱います。

刑事訴訟法337条

左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。一 確定判決を経たとき。二 犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。三 大赦があつたとき。四 時効が完成したとき。

刑事訴訟法331条

裁判所は、被告人の申立がなければ、土地管轄について、管轄違の言渡をすることができない。2 管轄違の申立は、被告事件につき証拠調を開始した後は、これをすることができない。

論文ではこう使う

訴訟条件は、答案の末尾で「裁判所はどのような裁判をすべきか」を書くときに使います。①その事件に欠けている訴訟条件を特定し、②条文の事由に当てはめて形式を決める(確定判決・時効完成なら337条の免訴判決、告訴を欠く親告罪の起訴や起訴状一本主義違反なら338条4号の公訴棄却判決、被告人の死亡や公訴の取消しなら339条の公訴棄却決定、管轄がなければ329条の管轄違い判決)、③訴訟条件の存否を訴因と心証のどちらで判断するかが問題になる事案では訴因基準説を示す、という順で書きます。

試験ではこう問われる

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