告訴(告訴権者・方式・期間・取消し)とは
こくそ
告訴とは、犯罪の被害者その他の告訴権者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です(230条以下)。親告罪では有効な告訴が公訴提起の条件になり、告訴は書面又は口頭で検察官又は司法警察員にし、犯人を知った日から6か月以内にしなければならず、公訴の提起があるまで取り消すことができます。
名誉毀損や器物損壊のように、被害者の意思を無視してまで国が罰するのは行き過ぎだとされる罪があります。こうした親告罪では、被害者が「処罰してほしい」と捜査機関に申し出て初めて起訴ができます。この申出が告訴です。被害者が未成年なら親も自分の判断で告訴でき、被害者が亡くなっていれば家族が代わりに告訴できます。ただ、いつまでも処罰するかどうかが宙に浮いたままでは犯人の立場が不安定なので、犯人を知った日から6か月という期限があり、いったん取り消したらやり直しはできません。誰が、誰に、いつまでに、どう取り消すかが要点です。
告訴できるのは被害者と、被害者と独立して告訴できる法定代理人、被害者が死亡したときの配偶者・直系の親族・兄弟姉妹です
犯罪により害を被った者は告訴をすることができます(230条)。ここでいう被害者は、その犯罪によって直接に被害を受けた者です。妻が被害を受けても夫は被害者ではありません。「Aの夫は、「犯罪により害を被った者」として告訴権を有する」という肢は誤りです。被害者の法定代理人は「独立して」告訴をすることができます(231条1項)。独立してとは、本人の意思と無関係にという意味で、法定代理人の告訴権は本人の告訴権とは別の固有の権利です。だから本人が処罰を望んでいなくても法定代理人は告訴でき、「被害者の法定代理人は、被害者の意思に反して告訴をすることはできない」という肢は誤りで、「被害者の法定代理人は、被害者と独立して告訴をすることができる」という肢は正しいです。親権者が2人いるときは各自が告訴でき、「被害者の法定代理人たる親権者が2人いるときは、その各自が被害者の法定代理人として、告訴をすることができる」という肢は正しいです。法定代理人の告訴は法定代理人自身の権利に基づくので、「被害者の法定代理人がした告訴を被害者本人が取り消すことはできない」という肢は正しいです。被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹が告訴できますが、被害者の明示した意思に反することはできません(231条2項)。「被害者が死亡したときは、被害者の明示の意思に反しない限り、その兄弟姉妹が告訴をすることができる」という肢は正しいです。法定代理人が被疑者であるときなどは被害者の親族が独立して告訴でき(232条)、死者の名誉を毀損した罪では死者の親族又は子孫が告訴できます(233条)。親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官が利害関係人の申立てにより告訴をすることができる者を指定することができ(234条)、「検察官は、利害関係人の申立てにより告訴をすることができる者を指定することができる」という記述は正しいです。
- 被害者(230条)犯罪によって直接に害を被った者です。被害者の夫は含まれません
- 被害者の法定代理人(231条1項)独立して告訴できます。本人の意思に反してもでき、親権者が2人なら各自ができ、本人はその告訴を取り消せません
- 被害者死亡時の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹(231条2項)被害者の明示した意思に反することはできません
- 被害者の親族(232条)法定代理人が被疑者・被疑者の配偶者・4親等内の血族・3親等内の姻族のとき、独立して告訴できます
- 死者の親族・子孫(233条)死者の名誉毀損罪と、名誉毀損の被害者が告訴せずに死亡したときです
- 検察官の指定する者(234条)親告罪で告訴権者がないとき、利害関係人の申立てにより指定します
告訴は書面又は口頭で検察官又は司法警察員にし、供述調書でも処罰を求める意思が表れていれば有効で、代理人によることもできます
告訴は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にしなければならず、口頭による告訴を受けたときは調書を作ります(241条)。「告訴は、必ず書面によってしなければならない」という肢と「告訴は、書面でこれをしなければならない」という肢は誤りで、「口頭による告訴は認められておらず、書面でしなければならない」という記述も誤りです。受理できるのは検察官と司法警察員なので、司法巡査に口頭で処罰を求めても告訴にはなりません。事例問題で「Vは、〜知人の司法巡査Yに、口頭で、Vが受けた被害を申告して甲の処罰を求めた」という下線部は、告訴として無効です。告訴は犯罪事実の申告と犯人の処罰を求める意思の表示があれば足りるので、書面の標題が告訴状でなくても、被害者の供述調書に処罰を求める意思が記載されていれば告訴調書として有効です(最決昭和34年5月14日)。「被害者の司法警察員に対する供述調書であっても、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める旨の意思の表示がされていれば、告訴調書として有効である」という肢は正しく、「犯人を厳重に処罰してほしい旨録取した供述調書を作成しただけでは、告訴としての効力は認められない」という肢は誤りです。告訴も告訴の取消しも代理人によってすることができます(240条)。「被害者の代理人により告訴をすることはできない」という記述と「告訴の取消しは、代理人によりこれをすることができない」という肢は誤りです。告訴を受けた司法警察員は、速やかに書類と証拠物を検察官に送付しなければならず(242条)、嫌疑がないと思料するときでも送付しないことはできません。「犯罪の嫌疑がないものと思料するときは、検察官に送付しないことができる」という肢は誤りです。他方、告訴を受けたからといって逮捕する義務が生じるわけではなく、「司法警察員は、甲からの告訴を受けたときは、乙を逮捕しなければならない」という肢は誤りです。検察官は、告訴のあった事件について公訴を提起し又は提起しない処分をしたときは速やかにその旨を告訴人に通知し(260条)、不起訴にした場合に告訴人の請求があれば速やかに理由を告げなければなりません(261条)。「公訴を提起したときは、その旨を告訴人に通知する必要はない」という肢は誤りで、260条・261条の内容を述べた肢は正しいです。
親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月以内にしなければならず、「犯人を知った」とは犯人が誰であるかを特定し得る程度に認識することです
親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を経過したときはすることができません(235条本文)。親告罪でない罪の告訴にはこの制限はありません。最決昭和39年11月10日は、「犯人を知った」とは犯人が誰であるかを知ることをいい、告訴権者において犯人の住所氏名などの詳細を知る必要はないけれども、少なくとも犯人の何人たるかを特定し得る程度に認識することを要するとしました。「告訴権者において犯人が誰であるかを知ることをいい、犯人の住所氏名などの詳細を知る必要はない」という肢は正しいです。告訴をすることができる者が数人ある場合には、一人の期間の徒過は他の者に効力を及ぼしません(236条)。法定代理人の告訴権は固有権なので、起算点も法定代理人自身が犯人を知った日です(最決昭和28年5月29日)。事例問題で、2月10日に犯人を知った15歳の被害者Vが8月20日に告訴状を提出した下線部は、6か月を経過しているので無効ですが、9月1日に犯人を知った父Bが翌日に告訴状を提出した下線部は、Bにとって期間内なので有効です。性犯罪については、出題当時は強姦罪等の親告罪であっても告訴期間の制限が外されていたので、「この例外は極めて限定されており、強姦罪等の性犯罪は含まれない」という肢は誤りで、強姦の告訴が犯人を知った日から1年を経過した後にされても「検察官は適法に公訴を提起することができる」という肢は正しいとされました。現在は不同意性交等罪・不同意わいせつ罪は非親告罪なので、告訴は訴訟条件ではなく、期間の問題も生じません。
告訴は公訴の提起があるまで取り消すことができ、取り消した者は更に告訴をすることができません
告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができます(237条1項)。終期は公訴提起の時であって、受理の時でも第1回公判期日でも第一審判決でもありません。「告訴は、適法に受理された後はこれを取り消すことができない」という肢は誤りで、「甲は、公訴の提起があるまでは、告訴を取り消すことができる」という肢と「告訴は、公訴の提起があるまでいつでも取り消すことができる」という肢は正しいです。「第一回の公判期日までこれを取り消すことができる」という肢は誤りです。「起訴前は認められているが、起訴後は認められていないもの」を選ぶ問題では、親告罪の告訴の取消しがこれに当たります。告訴の取消しをした者は、更に告訴をすることができません(237条2項)。「告訴を一旦取り消した後でも、再度適法に告訴をすることができる」という肢は誤りで、「親告罪について告訴の取消しをした者は、更に告訴をすることができない」という肢は正しいです。事例問題で、母Aがいったん告訴を取り消した後に再び告訴状を提出した下線部は無効です。取消しも代理人によってでき、取消しの方式には告訴の方式の規定が準用されます(240条・243条)。告訴が取り消されると親告罪の訴訟条件を欠くので、起訴前なら不起訴となり、起訴後に取消しがあっても公訴提起後の取消しは効力がないので手続はそのまま進みます。なお、親告罪であっても告訴がある前に捜査をすることはできます。この点は捜査の端緒の語で扱っています。
刑事訴訟法237条1項
告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。
刑事訴訟法237条2項
告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。
最決昭和39年11月10日
犯人が誰であるかを知ることをいい、告訴権者において、犯人の住所氏名などの詳細を知る必要はないけれども、少くとも犯人の何人たるかを特定し得る程度に認識することを要する
論文ではこう使う
論文で告訴が問題になるのは、親告罪の訴訟条件として有効な告訴があるかを検討する場面です。告訴権者か(法定代理人の固有権・被害者死亡時の家族の範囲)、方式を満たすか(検察官又は司法警察員に対する書面又は口頭の申告と処罰意思)、告訴期間内か(犯人を知った日の認定と告訴権者ごとの起算)、取り消されていないか(公訴提起前の取消しと再告訴の禁止)の順に当てはめ、欠けていれば公訴棄却の判決(338条4号)に結びつけます。告訴の効力が及ぶ範囲が問題になるときは、告訴の効力の範囲の語の規範に進みます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。