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用語集 / 刑事訴訟法 / 公訴棄却と免訴の事由と再起訴の可否

公訴棄却と免訴の事由と再起訴の可否(338条〜340条)とは

こうそききゃくとめんそのじゆうとさいきそのかひ

刑事訴訟法 訴因と訴訟条件

公訴棄却と免訴の事由とは、刑事訴訟法338条・339条が定める公訴棄却の判決・決定の事由と、337条が定める免訴の判決の事由のことです。公訴棄却は形式裁判なので確定しても原則として同一事件を再起訴でき、公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したときだけ、新たに重要な証拠を発見した場合に限って再起訴できます(340条)。

告訴がないまま器物損壊罪で起訴され、公訴棄却の判決が確定したとします。その後に被害者が告訴すれば、検察官はもう一度起訴できます。公訴棄却は事件の中身を判断していない打ち切りの裁判なので、欠けていた条件がそろえば原則としてやり直せます。他方、無罪の確定判決の後に新しい証拠が出ても再起訴はできず、起訴されても免訴になります。中身を判断した実体裁判には一事不再理効があるからです。例外として、検察官が自分で公訴を取り消した後は、新たに重要な証拠を見つけた場合にしか再起訴できません。

検察庁の検察官室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机に座り、机の上に「公訴棄却判決(告訴なし)確定」と書かれた判決書の写しと、その横に新しく届いた「告訴状」。先生は新しい起訴状を書いている。壁の掲示に二列の表「公訴棄却・管轄違い(形式

公訴棄却の裁判が確定しても一事不再理効は生じず、欠けていた訴訟条件がそろえば原則として再起訴できます

公訴棄却の判決(刑事訴訟法338条)と公訴棄却の決定(339条)は、訴訟条件を欠くことを理由に手続を打ち切る形式裁判で、被告事件の実体について判断していません。一事不再理効は有罪判決の危険にさらされたことに対応して実体裁判に生じるものなので、形式裁判が確定しても生じず、337条1号の「確定判決を経たとき」にも当たりません。したがって、公訴棄却の原因になった瑕疵が後から治癒されれば、同一事件を再び起訴することができます。告訴がないまま起訴された器物損壊事件で公訴棄却の判決が確定した後、検察官が被害者から告訴を得たときは、同一事実で再度起訴できるので、「再度,同事件の被告人を同一事実で起訴することはできない」という肢は誤りです。起訴状の謄本が公訴提起の日から2か月以内に送達されず公訴提起がさかのぼって効力を失い(271条2項)、決定で公訴が棄却された後も(339条1項1号)、検察官は同一事件について更に公訴を提起することができ、この趣旨の肢は正しいです。最初の公訴提起は効力を失っているので二重起訴にもなりません。再起訴には公訴時効が完成していないことが必要ですが、公訴提起により停止していた時効は公訴棄却の裁判が確定した時から再び進行するにとどまるので(254条1項)、通常は再起訴の余地が残ります。他方、瑕疵が治癒されるなどの事情の変更がないまま同じ事件を再起訴しても、前の公訴棄却の判断に反するので許されません。

  • 制限なく再起訴できる告訴を欠く起訴の公訴棄却判決の後に告訴を得たとき/起訴状謄本の不送達による公訴棄却決定の後/管轄違いの判決の後(管轄のある裁判所へ)/その他の公訴棄却の後に瑕疵が治癒されたとき
  • 新たに重要な証拠を発見した場合に限り再起訴できる公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したとき(340条)。違反すれば338条2号で公訴棄却の判決
  • 再起訴しても免訴になる有罪・無罪の実体判決が確定したとき(337条1号)。新証拠が出ても同じ
  • 再起訴できない告訴を取り消した後の親告罪(告訴はやり直せない。237条2項)
教室の板書の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に「公訴の取消し → 公訴棄却の決定(339条1項3号)確定」と書き、その下に分かれ道。左「新たに重要な証拠を発見 → 再起訴できる(340条)」、右「同じ証拠のまま → 再起訴は338条2号で公

公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定した後は、新たに重要な証拠を発見した場合に限って再起訴できます

検察官は第一審の判決があるまで公訴を取り消すことができ(257条)、公訴が取り消されると裁判所は決定で公訴を棄却します(339条1項3号)。この決定が確定したときは、公訴の取消し後に犯罪事実につき新たに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができます(340条)。検察官が自らの判断で手続を終わらせた以上、同じ証拠のままで蒸し返すことを許さない趣旨です。「犯罪事実につき新たに重要な証拠を発見した場合であっても,同一事件について更に公訴を提起することはできない」という肢は誤りです。新たに重要な証拠が発見されていないのに再起訴されたときは、340条に違反して公訴が提起されたときに当たり、判決で公訴を棄却します(338条2号)。免訴ではありません。公訴の取消しの手続そのものは公訴の取消しと再起訴の語で扱います。

無罪の確定判決の後は新証拠があっても再起訴できず、起訴されれば免訴の判決で、有罪にすることはできません

確定判決を経たときは判決で免訴の言渡しをしなければなりません(337条1号)。ここでいう確定判決には有罪の確定判決だけでなく無罪の確定判決も含まれます。憲法39条が同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないとしたのは、被告人を有罪判決の危険に繰り返しさらさない趣旨であり、無罪判決が確定した場合こそその典型だからです。殺人罪の訴因について無罪判決が確定した後、検察官が有罪を立証するに十分な新たな証拠を発見したとして同一事実で再度起訴しても、裁判所は実体審理に入れず免訴を言い渡さなければならないので、「裁判所は,改めて審理し,有罪の判決をすることができる」という肢は誤りです。再審は有罪の言渡しをした確定判決に対して被告人の利益のためにだけ認められ、無罪の確定判決を覆す不利益再審はありません。免訴判決にも一事不再理効があるかどうかと、一事不再理効の及ぶ範囲は一事不再理効の範囲の語で扱います。

被告人の死亡を理由とする公訴棄却決定が被告人の作出した虚偽の証拠に基づいていたときは、再起訴を認める論拠がいくつかあります

被告人が死亡したとして公訴棄却の決定が確定した後、被告人が生存していて死亡の証拠を自分で偽造していたことが新たな証拠で明らかになった事案で、裁判例は、公訴棄却の決定は形式裁判であって確定しても再起訴は原則として妨げられず、まして死亡の認定が内容虚偽の証拠に基づいていたことが明白になった場合にまでその判断が後の再起訴を妨げるとは解されないとして、再起訴を適法としました(大阪地判昭和49年5月2日)。見解問題では、この結論の論拠となり得るものを選ばせます。339条1項4号の「被告人が死亡したとき」とは死亡の証拠がある場合の意味だとする記述、被告人の死亡による公訴棄却決定は非終局的な決定で確定裁判の効力が生じないとする記述、再起訴禁止の利益を受けるには被告人にその利益を要求できる資格が必要だとする記述、被告人の死亡による公訴棄却決定は訴訟続行が無意味になるため打ち切る点で心神喪失による公判手続の停止と同性質だとする記述は、いずれも再起訴を認める結論の論拠となり得ます。これに対し、再起訴禁止の効力が及ばなくなる事情の変更は新証拠の発見ではなく被告人の死亡という事実自体の変化でなければならないとする記述は、新たな証拠の発見による再起訴を否定する方向のものなので、この結論の論拠にはなり得ません。形式裁判の内容的確定力の一般論は裁判の確定と確定力の語で扱います。

刑事訴訟法340条

公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができる。

論文ではこう使う

再起訴の可否は、形式裁判の確定力の論点として書きます。①公訴棄却・管轄違いは訴訟条件を欠くことによる形式裁判で、実体判断を含まないから一事不再理効は生じない、②したがって同じ事情のままの再起訴は前の裁判の内容的確定力に反して許されないが、瑕疵が治癒されるなど事情が変われば再起訴できる(告訴を得た場合など)、③公訴の取消しによる公訴棄却の決定だけは340条が新たに重要な証拠を発見した場合に限って再起訴を認める、④実体判決が確定していれば337条1号で免訴、という順で書きます。

試験ではこう問われる

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