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用語集 / 刑事訴訟法 / 管轄

管轄(事物管轄・土地管轄・関連事件・判断基準の見解)とは

かんかつ

刑事訴訟法 訴因と訴訟条件

管轄とは、どの裁判所がその事件を審判する権限を持つかの定めで、事件の種類による事物管轄(簡易裁判所・地方裁判所・高等裁判所の分担)と、土地による土地管轄(犯罪地・被告人の住所・居所・現在地。刑事訴訟法2条)があります。管轄のない裁判所は判決で管轄違いの言渡しをしますが(329条)、土地管轄は被告人の申立てがなければ問題にしません(331条)。

検察官が起訴するとき、どこの裁判所に起訴状を出すかは勝手には決められません。軽い罪は簡易裁判所、普通の罪は地方裁判所、内乱罪は高等裁判所という事件の重さによる分担(事物管轄)と、犯罪が起きた場所や被告人の住所による分担(土地管轄)があります。両方を満たす裁判所に起訴しなければならず、間違えると管轄違いの判決で打ち切られます。ただし土地管轄は被告人の便宜のための決まりなので、被告人が早いうちに文句を言わなければそのまま審理します。

検察庁の検察官室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机に座り、机の上に二通の送致書「軽犯罪法違反(拘留・科料)」「窃盗(拘禁刑又は罰金)」。壁に三段の表「簡易裁判所: 罰金以下の刑の罪(専属)・選択刑に罰金がある罪/地方裁判所: 罰金以

事物管轄は法定刑で決まり、罰金以下の刑に当たる罪は簡易裁判所だけ、窃盗のように選択刑に罰金がある罪は地方裁判所と簡易裁判所の両方が管轄します

事物管轄は裁判所法が定めます。簡易裁判所は、罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪、窃盗・横領など法律が列挙した一定の罪を管轄します(裁判所法33条1項2号)。地方裁判所は、罰金以下の刑に当たる罪と高等裁判所の特別権限に属する罪を除くすべての罪を第一審として管轄します(裁判所法24条2号)。高等裁判所は内乱罪などを第一審として管轄します(裁判所法16条4号)。したがって、拘留又は科料しか定められていない軽犯罪法違反のように罰金以下の刑に当たる罪は簡易裁判所だけが管轄権を持つ専属管轄で、窃盗罪のように拘禁刑と選択刑の罰金が定められている罪は地方裁判所と簡易裁判所の両方が管轄する競合管轄です。簡易裁判所が専属的に管轄権を有する事件であるか否かは、罰金以下の刑に当たる罪かどうかという法定刑によって法律上当然に決まります。管轄は訴訟条件なので、簡易裁判所は拘禁刑以上の刑を科すのが相当と認めるときなど地方裁判所で審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所に移送しなければなりません(刑事訴訟法332条)。簡易裁判所がした第一審判決に対する控訴は、地方裁判所ではなく高等裁判所が裁判権を持ちます。「簡易裁判所がした刑事に関する第一審の判決に対する控訴については,地方裁判所が裁判権を有する」という肢は誤りです。

  • 簡易裁判所(裁判所法33条1項2号)罰金以下の刑に当たる罪(専属)/選択刑として罰金が定められている罪/窃盗・横領など列挙された罪。拘禁刑以上を科すべきときは地裁へ移送(332条)
  • 地方裁判所(裁判所法24条2号)罰金以下の刑に当たる罪と高裁の特別権限に属する罪を除くすべての罪
  • 高等裁判所(裁判所法16条4号)内乱に関する罪など
  • 土地管轄(2条1項)犯罪地、被告人の住所・居所・現在地のいずれか
  • 関連事件(9条)一人が数罪を犯した/数人が共に同一又は別個の罪を犯した/数人が通謀して各別に罪を犯した。本犯と犯人蔵匿・証拠隠滅・偽証・盗品等の罪も関連事件とみなす

関連事件は上級の裁判所が併せて管轄でき、軽犯罪法違反と窃盗を一人が犯したときは地方裁判所にまとめて起訴できます

一人が数罪を犯したとき、数人が共に同一又は別個の罪を犯したとき、数人が通謀して各別に罪を犯したときは、数個の事件は関連するものとされます(刑事訴訟法9条1項)。事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所が併せてこれを管轄することができ(3条1項)、土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所が併せて他の事件を管轄することができます(6条)。したがって、同じ被疑者の軽犯罪法違反の事実と窃盗の事実を併せて起訴するときは、軽犯罪法違反だけなら簡易裁判所の専属管轄でも、関連事件として上級の地方裁判所に公判請求することができます。「簡易裁判所ではなく地方裁判所に対して行うこともできる」という肢は正しいです。関連事件が別々の裁判所に係属したときは、検察官又は被告人の請求により決定で一つの裁判所に併合でき(8条)、裁判所は適当と認めるときは事物管轄を同じくする他の管轄裁判所に事件を移送できますが、移送の決定は証拠調べを開始した後はできません(19条)。

土地管轄がないことは、証拠調べ開始前に被告人の申立てがなければ管轄違いの理由になりません

土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地によります(2条1項)。被告事件が裁判所の管轄に属しないときは判決で管轄違いの言渡しをしなければなりませんが(329条)、土地管轄は被告人の出頭の便宜と防御のための定めなので、裁判所は被告人の申立てがなければ土地管轄について管轄違いの言渡しをすることができず、管轄違いの申立ては被告事件につき証拠調べを開始した後はできません(331条)。「証拠調べを開始する前に被告人の申立てがなければ,判決で管轄違いの言渡しをすることはできない」という肢は正しいです。事物管轄については被告人の申立てがなくても職権で管轄違いを言い渡します。訴訟手続は管轄違いの理由によってはその効力を失わず(13条)、管轄違いの判決が確定しても、管轄のある裁判所に改めて起訴することができます。

教室の板書の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板の中央に「訴因: 傷害致死(地裁)/心証: 過失致死(簡裁だけ)」。左の欄の見出し「見解Ⅰ 訴因・罰条で判断」の下に「訴因変更なし → 無罪」「過失致死に変更を許可 → 管轄違い」。右の欄の見出し

管轄の有無を訴因と罰条で判断する見解と心証で判断する見解では、傷害致死の訴因で過失致死の心証を得た裁判所の判決が変わります

管轄があるかどうかを何を基準に判断するかには、起訴状に記載された訴因並びに罪名及び罰条により判断する見解Ⅰと、裁判所が心証を形成した事実により判断する見解Ⅱがあります。傷害致死罪の管轄は地方裁判所に、過失致死罪の管轄は簡易裁判所にだけあるという前提で、検察官が傷害致死罪で地方裁判所に起訴し、裁判所が審理の途中で過失致死罪が成立するにとどまるとの心証を形成した事例で考えます。見解Ⅰからは、訴因である傷害致死罪について地方裁判所は管轄を持つので、検察官が訴因を変更しない限り管轄違いにはならず、傷害致死罪の証明がないとして無罪の判決を言い渡すことになります。傷害致死の訴因から過失致死を縮小認定することは、注意義務違反という別の要件が加わるのでできません。検察官が過失致死罪への訴因変更を請求し地方裁判所がこれを許可すると、新しい訴因である過失致死罪は簡易裁判所にしか管轄がないので、地方裁判所は管轄違いの判決を言い渡すことになります。見解Ⅱからは、心証である過失致死罪を基準に管轄を判断するので、検察官が訴因を変更しなくても地方裁判所は管轄違いの判決を言い渡すことになり、傷害致死罪について無罪の判決をすることにはなりません。訴因変更が許可された場合も、心証は過失致死のままなので管轄違いの判決であって、過失致死罪で有罪の判決を言い渡すことにはなりません。審判の対象は訴因であり訴訟条件は実体審判の前提ですから、訴因を基準にする見解Ⅰが通説です。訴訟条件の存否を訴因で判断するか心証で判断するかの一般論は、訴訟条件と訴因の語で扱います。

刑事訴訟法2条1項

裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。

刑事訴訟法3条1項

事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

論文ではこう使う

管轄は論文では稀ですが、管轄の判断基準が問われたときは、①管轄は訴訟条件で、訴訟条件は実体審判の前提である、②当事者主義のもとで審判の対象は訴因だから、訴訟条件の存否も訴因を基準に判断する(訴因基準説)、③したがって訴因の罪について管轄があれば、心証が管轄のない軽い罪でも管轄違いにはならず、訴因の証明がなければ無罪、訴因変更が許可されれば新訴因で管轄を判断する、という順で書きます。

試験ではこう問われる

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