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用語集 / 刑事訴訟法 / 縮小認定

縮小認定とは

しゅくしょうにんてい

刑事訴訟法 訴因と訴訟条件

縮小認定とは、訴因に記載された事実より小さい事実、たとえば殺人の訴因に対する傷害致死や強盗の訴因に対する恐喝のように、訴因の事実に含まれている軽い事実を、訴因変更の手続を経ずに認定することです。縮小された事実は訴因に黙示的に含まれていて被告人の防御の対象になっているので、認定しても不意打ちにならないからです。

検察官が「殺意をもってVを殴って死なせた」という殺人の訴因で起訴したところ、審理の結果、殴って死なせたことは間違いないが殺意までは認められないとします。殺人の訴因には「殴って死なせた」という傷害致死の事実が丸ごと含まれていて、被告人はその部分についても最初から防御してきました。だから裁判所は、検察官に訴因を書き直してもらわなくても傷害致死を認定できます。大きい訴因は小さい事実を兼ねているので、これを縮小認定といいます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座り、手元に大きい紙「訴因: 殺意をもってVを殴って死なせた(殺人)」と、その中に重ねて置かれた小さい紙「Vを殴って死なせた(傷害致死)」。小さい紙は深紅の枠で囲まれている。被告人席の男性(

訴因に黙示的に含まれる軽い事実は、防御の対象になっているので訴因変更なしに認定できます

審判の対象は訴因ですから、裁判所は訴因と異なる事実を勝手に認定できないのが原則です。しかし、訴因の事実の中に含まれている軽い事実は、検察官が黙示的に主張しているものであり、被告人もその事実を争う機会を持っています。判例は、強盗の起訴に対して恐喝を認定する場合のように、裁判所がその態様及び限度において訴因の事実よりも縮小された事実を認定するについては、訴因変更の手続を経る必要がないとしました(最判昭和26年6月15日)。訴因変更の手続が要求されるのは、裁判所が勝手に訴因と異なる事実を認定して被告人に不当な不意打ちを与え、防御権の行使を徒労に終わらせないためであり、縮小認定ではそのおそれがないからです。殺人の訴因について殺意を認定できないと判断した場合に、傷害致死の事実が当初の訴因に含まれ黙示的に主張されていると解されるときは、訴因変更の手続を経ずに傷害致死を認定できます。したがって「訴因変更の手続を経ることなく,傷害致死の事実を認定することはできない」という肢は誤りです。強盗の共同正犯の訴因で起訴された被告人について、強盗の共謀までは認められず強盗の手段である暴行に共同して関与したにとどまるという心証を得た場合も、共同暴行の事実は強盗の訴因に含まれているので、訴因変更の手続をとっていなくても有罪の言渡しをする余地があります。「訴因に変更する手続を採っていないことから,有罪の言渡しをする余地はない」という肢は誤りです。

  • 縮小認定として訴因変更が不要殺人→傷害致死(殺意が認められないとき)/強盗→恐喝(脅迫が反抗を抑圧する程度に至らないとき)/強盗の共同正犯→共同暴行(財物奪取の共謀が認められないとき)/殺人→同意殺人/殺人未遂→傷害/強盗致死→傷害致死/傷害→暴行/既遂→未遂/共同正犯→幇助
  • 縮小認定にならず訴因変更が必要脅迫による強盗→暴行による恐喝(手段が変わる)/傷害致死→過失致死(注意義務違反という別の要件が加わる)/幇助→共同正犯(重くなる)/収賄→贈賄(構成要件が異なる)
教室の板書の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に左右二つの欄。左の欄の見出し「縮小認定になる(訴因変更不要)」の下に「脅迫で強取 → 脅迫で交付させた(恐喝)」「殺人 → 傷害致死」「強盗の共同正犯 → 共同暴行」。右の欄の見出し「縮小認定に

手段や要件が入れ替わる認定は、罪が軽くなっても縮小認定にはならず、訴因変更が必要です

縮小認定が許されるのは、認定する事実が訴因の事実にそのまま含まれている場合に限られます。「Aを脅迫して現金を強取した」という強盗の訴因に対し、脅迫が相手方の反抗を抑圧するほど強くなかったことを理由に「Aを脅迫して現金を交付させた」という恐喝を認定するのは、同じ脅迫を手段とする縮小認定なので訴因変更の手続を要しません。したがって「訴因変更の手続を経なければならない」という肢は誤りです。これに対し、同じ強盗の訴因から「Aに暴行を加えて現金を交付させた」という恐喝を認定するのは、被告人が脅迫の有無をめぐって防御してきたのに暴行という別の手段を認定するものですから、罪が軽くなっても訴因に含まれる事実の認定とはいえず、訴因変更の手続が必要です。したがって「恐喝の事実を認定するには,訴因変更の手続を要しない」という肢は誤りです。傷害致死の訴因に対する過失致死の認定も、故意の有無だけでなく注意義務違反という新しい要件が加わるので縮小認定にはなりません。この点は管轄の見解問題で前提になります。縮小認定で罪名が変わる場合でも、訴因により公訴事実が明確で被告人の防御に実質的な不利益がなければ、罰条変更の手続を経ずに軽い罪の罰条を適用できます(最決昭和53年2月16日)。この点は罰条の変更の語で扱います。

縮小認定は裁判所の権限であって義務ではなく、形式裁判を導く縮小認定には争いがあります

縮小認定ができる場合でも、裁判所が必ず縮小した事実で有罪にしなければならないわけではなく、訴因の事実の証明がないとして無罪にすることも、検察官に訴因変更を促すこともできます。ただし、殺人の訴因について無罪とするほかなくても重過失致死という相当重大な罪で有罪であることが明らかな場合には、例外的に訴因変更を促し命じる義務が生じることがあります。この点は訴因変更命令の語で扱います。また、非親告罪の強盗の訴因から親告罪である親族間の窃盗を縮小認定し、告訴がないとして公訴棄却にすることが許されるかについては、訴因を基準に訴訟条件を判断する立場からは、心証を基準にすることになるので許されないとする見解が有力です。この点は訴訟条件と訴因の語で扱います。

刑事訴訟法312条1項

裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。

論文ではこう使う

縮小認定は、訴因変更の要否の答案で「訴因と異なる事実の認定だから訴因変更が要るか」と問いを立てたあとに、例外として書きます。①訴因変更の手続は被告人に不意打ちを与えないためにある、②認定する事実が訴因の事実に黙示的に含まれ、被告人がその事実についても防御の機会を持っていた場合には、不意打ちのおそれがないので訴因変更を要しない(最判昭和26年6月15日)、③事案で認定事実が訴因に含まれるか(手段や要件が入れ替わっていないか)を当てはめる、という順で書きます。

試験ではこう問われる

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