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用語集 / 刑事訴訟法 / 罰条の変更

罰条の変更(312条1項・256条4項)とは

ばつじょうのへんこう

刑事訴訟法 訴因と訴訟条件

罰条の変更とは、起訴状に記載された適用すべき罰条(刑事訴訟法256条4項)を、検察官の請求により追加・撤回・変更する手続のことです(312条1項)。罰条の記載は訴因を一層特定して被告人の防御に遺憾のないようにするためのものなので、訴因により公訴事実が明確で防御に実質的な不利益がなければ、罰条変更の手続を経ずに起訴状にない罰条を適用でき、罰条の記載の誤りも公訴提起の効力に影響しません。

起訴状には「罪名及び罰条 傷害 刑法204条」のように、どの条文を適用するかが書かれます。審理の結果、事実は起訴状のとおりだが適用すべき条文が別だと分かったとき、裁判所が必ず検察官に罰条を書き直してもらわなければならないわけではありません。罰条は、どの事実で裁かれるかを決める訴因とは違い、訴因をいっそうはっきりさせて被告人が防御しやすいように添えられているものです。だから、事実が訴因で十分に明らかで被告人の防御に差し支えがなければ、裁判所は書かれていない条文を適用でき、書き間違いがあっても起訴は無効になりません。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座り、手元の起訴状に「罪名及び罰条 傷害・暴行 刑法204条・208条・60条」と書かれ、その横に先生が「暴力行為等処罰法1条」と書き足した付箋。被告人席の男性(札「被告人」)と弁護人の男性

罰条の記載は訴因を一層特定して防御に遺憾のないようにするためのもので、記載の誤りは防御に実質的な不利益がなければ公訴提起の効力に影響しません

起訴状には罪名を適用すべき罰条を示して記載しなければなりませんが、罰条の記載の誤りは、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼしません(刑事訴訟法256条4項)。罰条は訴因と違って審判の対象そのものではなく、訴因で示された事実にどの条文が当たるかを示して被告人の防御を助けるための記載だからです。暴行の訴因に誤って傷害の罰条を記載したような場合も、訴因から事実が明らかで防御に支障がなければ、公訴提起は無効になりません。罰条の記載がこのような性質のものであることが、罰条変更の手続を経ずに別の罰条を適用できることの理由にもなります。

訴因により公訴事実が明確で防御に実質的な不利益がなければ、罰条変更の手続を経ずに起訴状にない罰条を適用できます

判例は、罪名・罰条を傷害と暴行、刑法204条・208条・60条と記載した起訴状の事案で、控訴審が罰条変更の手続を経ずに暴力行為等処罰に関する法律1条を適用したことについて、起訴状における罰条の記載は訴因をより一層特定させて被告人の防御に遺憾のないようにするため法律上要請されているものであり、裁判所による法令の適用をその範囲内に拘束するためのものではないから、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防御に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで起訴状に記載されていない罰条であってもこれを適用することができるとしました(最決昭和53年2月16日)。したがって「訴因により公訴事実が十分に明確にされ,被告人の防御に実質的な不利益が生じない場合であっても,裁判所が起訴状に記載されていない罰条を適用するためには,罰条変更の手続を経なければならない」という肢は誤りです。強盗罪の共同正犯の訴因で起訴された被告人について共同暴行の心証を得た場合も、共同暴行の事実は強盗の訴因に含まれていて防御に不利益はないので、訴因変更や罰条変更の手続をとっていなくても暴力行為等処罰に関する法律違反で有罪の言渡しをする余地があります。「訴因に変更する手続を採っていないことから,有罪の言渡しをする余地はない」という肢は誤りです。

  • 罰条変更の手続が要らない訴因により公訴事実が明確で、被告人の防御に実質的な不利益が生じないとき(最決昭和53年2月16日)/縮小認定で罪名が変わるとき
  • 罰条の記載の誤りの効果防御に実質的な不利益を生ずるおそれがない限り公訴提起の効力に影響しない(256条4項ただし書)
  • 罰条の変更・追加・撤回検察官の請求により裁判所が許す(312条1項)。裁判所が命ずることもできる(312条2項)
  • 罰条の予備的・択一的記載数個の訴因及び罰条は予備的に又は択一的に記載できる(256条5項)
検察庁の検察官室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机に座り、起訴状を書いている。起訴状の「罪名及び罰条」欄に「第一 詐欺 刑法246条1項 予備的に 第二 横領 刑法252条1項」と書かれ、「予備的に」の語が深紅。机の上の掲示に「数個

罰条の変更は訴因の変更と同じ手続で行い、罰条も予備的・択一的に記載できます

罰条を変える必要があるときは、訴因の変更と同じく検察官の請求により裁判所が許し(312条1項)、裁判所が罰条の追加・変更を命ずることもできます(312条2項)。防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあれば公判手続の停止の対象にもなります。起訴状には数個の訴因及び罰条を予備的に又は択一的に記載することができ(256条5項)、訴因を予備的・択一的に記載した場合に罰条だけを一つに限る必要はありません。「訴因を予備的又は択一的に記載した場合であっても,「罪となるべき事実」の特定が必要であるから,罰条を予備的又は択一的に記載することは許されない」という肢は誤りです。罪となるべき事実の特定は訴因の記載によって果たされるので、罰条の記載の仕方とは別の問題です。起訴状の記載事項と予備的・択一的記載の全体は、公訴提起の方式と起訴状の記載事項の語で扱います。

刑事訴訟法256条4項

罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。

刑事訴訟法256条5項

数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。

論文ではこう使う

罰条の変更は論文で単独の論点になることは稀で、訴因変更の要否を論じたあとに一文で触れます。①罰条の記載は訴因を一層特定して防御に遺憾のないようにするためのもので、裁判所の法令適用を拘束しない、②したがって訴因により公訴事実が明確で防御に実質的な不利益がなければ、罰条変更の手続を経ずに起訴状にない罰条を適用できる(最決昭和53年2月16日)、と書きます。

試験ではこう問われる

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