公訴の取消しと再起訴(257条・340条)とは
こうそのとりけしとさいきそ
公訴の取消しとは、検察官が、第一審の判決があるまでの間に、提起した公訴を取り消すことです(刑事訴訟法257条)。公訴が取り消されると裁判所は決定で公訴を棄却し(339条1項3号)、その決定が確定した後は、公訴の取消し後に犯罪事実につき新たに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について再起訴できます(340条)。
起訴した後で、重要な証人の供述が崩れて有罪の見込みがなくなったとき、検察官は判決を待たずに公訴を取り消すことができます。起訴するかどうかを選べる起訴便宜主義を、起訴した後にも及ぼした仕組みです。ただし、いったん裁判にかけられた被告人を、検察官の都合で何度も引きずり出すことは許されません。そこで、取り消した後にもう一度起訴できるのは、新しく重要な証拠が見つかった場合だけに絞られています。
公訴は第一審の判決があるまで取り消すことができ、被告人の同意も裁判所の許可も要りません
公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができます(刑事訴訟法257条)。取り消せるのは検察官で、時期の限界は第一審判決の前であるというだけです。「検察官は,第一審の判決があるまで,公訴を取り消すことができる」という肢は正しいです。条文は被告人の同意も裁判所の許可も要件にしていません。「公判期日における冒頭手続終了後にあっては,被告人の同意を得なければその効力を生じない」という肢と、「検察官が公訴を取り消すには,裁判所の許可が必要です」という発言は誤りです。公訴が取り消されたときは、裁判所は決定で公訴を棄却しなければなりません(339条1項3号)。この決定には即時抗告ができます(同条2項)。
取消しによる公訴棄却決定の確定後は、新たに重要な証拠を発見した場合に限り再起訴でき、違反した起訴は公訴棄却判決です
公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消し後に犯罪事実につき新たに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができます(340条)。公訴棄却決定は実体判断を含まない形式裁判なので一事不再理効はありませんが、検察官の一方的な取消しで被告人が繰り返し訴追される不安定な地位に置かれないよう、再起訴に条件を付けたものです。「犯罪事実につき新たに重要な証拠を発見した場合であっても,同一事件について更に公訴を提起することはできない」という肢は誤りです。新たな重要な証拠がないのに再起訴されたときは、340条に違反して公訴が提起されたときとして判決で公訴を棄却します(338条2号)。免訴事由ではないので、免訴を言い渡す場合を選ぶ問題で「新たに重要な証拠が発見されていないにもかかわらず,公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定した同一事実について起訴がなされたとき」は免訴に当たりません。公訴棄却と免訴の振り分けは公訴棄却と免訴の事由と再起訴の可否の語で扱います。
被告人の死亡による公訴棄却決定が虚偽の証拠に基づくものだったとき、再起訴を認める論拠と認めない論拠を分けます
被告人が死亡したときも裁判所は決定で公訴を棄却します(339条1項4号)。この決定が確定した後に、新たに発見された証拠によって、決定が被告人の作出した内容虚偽の死亡の証拠に基づくものであったことが明白になったとき、再起訴を妨げないという結論を導く論拠を問う問題があります。再起訴を認める側の論拠として使えるのは、公訴棄却事由の「被告人が死亡したとき」とは被告人の死亡そのものではなく死亡の証拠がある場合の意味だとする理解、死亡による公訴棄却決定は非終局的な決定で確定裁判の効力が生じないとする理解、再起訴禁止の利益を受けるには被告人にその利益を要求できる資格が必要だとする理解、死亡による公訴棄却決定は訴訟続行が無意味になったために打ち切る点で心神喪失による公判手続の停止と同じ性質だとする理解です。これに対し、再起訴禁止の効力が及ばなくなる事情の変更は新証拠の発見ではなく被告人の死亡という事実自体の変化でなければならないとする理解は、虚偽の証拠が発覚しただけでは事実は変わっていないので再起訴を認めない方向に働き、この結論の論拠にはなりません。
- 取消しの要件検察官が/第一審の判決があるまで(257条)/被告人の同意・裁判所の許可は不要
- 取消しの効果決定で公訴棄却(339条1項3号)。即時抗告可
- 再起訴取消し後に犯罪事実につき新たに重要な証拠を発見した場合に限る(340条)。違反した起訴は判決で公訴棄却(338条2号)。免訴ではない
刑事訴訟法257条
公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。
刑事訴訟法340条
公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができる。
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