告発・請求・自首(捜査の端緒としての手続)とは
こくはつせいきゅうじしゅ
告発とは、告訴権者と犯人以外の第三者が捜査機関に犯罪事実を申告して処罰を求める意思表示で、何人でもすることができます(239条)。請求とは、外国政府などの一定の者の意思表示を訴訟条件とする罪について、その者が処罰を求める意思表示です。自首とは、犯人が捜査機関に発覚する前に自ら犯罪事実を申告して処分を求めることで、告訴・告発の方式と送付の規定が準用されます(245条)。
犯罪を目撃した通行人が警察に「あの人を処罰してほしい」と申し出るのが告発で、犯人自身が「私がやりました」と名乗り出るのが自首です。どちらも告訴と同じく、書面でも口頭でもよく、受け取るのは検察官か司法警察員で、口頭なら調書を作り、警察が受けたときは速やかに検察官へ書類を送ります。違うのは、告訴や告発は取り消せるのに自首は取り消せないことと、告発は普通は訴訟条件ではないので、告発を待たずに捜査も強制処分もできることです。請求は、外国政府などの意思表示を訴訟条件とする特別な罪のための制度で、告訴の規定が準用されます。
告発は何人でもでき、公務員は職務上犯罪を知ったときは告発義務を負い、方式と送付は告訴と同じです
何人でも、犯罪があると思料するときは告発をすることができます(239条1項)。告訴と違って被害者である必要はなく、第三者が犯罪事実を申告して処罰を求めるものです。官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは告発をしなければなりません(同条2項)。告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にしなければならず、口頭による告発を受けたときは調書を作ります(241条)。「告発は、書面又は口頭で、検察官又は司法警察員にしなければならない」という肢と、「司法警察員は、口頭による告発を受けたときは調書を作らなければならない」という肢は正しいです。司法警察員は、告発を受けたときは速やかに書類と証拠物を検察官に送付しなければなりません(242条)。「司法警察員は、告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」という肢は正しいです。告発の取消しにも告訴の取消しと同じ方式の規定が準用されます(243条)。検察官は、告発のあった事件について起訴・不起訴の処分をしたときは告発人に通知し、不起訴の理由は請求があれば告げます(260条・261条)。告発があっても起訴便宜主義(248条)は変わらないので、「告訴又は告発がなされた事件については、〜嫌疑がないと思料する場合を除き、公訴を提起しなければならない」という肢は誤りです。
告発が訴訟条件とされる罪でも、告発の前に逮捕・勾留などの強制捜査をすることができます
関税法違反のように税関長等の告発を訴訟条件とする罪があります。しかし判例は、こうした告発は訴追条件にすぎず、司法警察員は犯罪があると思料するときは法律の定めに従い強制の処分をすることもできるので、告発前であっても被疑者を逮捕・勾留して取り調べることができるとしています。「税関長等の告発を訴訟条件とする関税法違反事件について、その告発前に強制捜査をすることはできない」という肢は誤りです。親告罪の告訴がなくても捜査できるのと同じく、訴訟条件は公訴提起と実体審理の要件であって捜査の要件ではありません。
請求は、外国政府などの意思表示を訴訟条件とする罪のための制度で、告訴の取消しと不可分の規定が準用されます
外国の国章を損壊する罪(刑法92条)は、外国政府の請求がなければ公訴を提起できません。このように一定の者の意思表示を訴訟条件とする罪について、その者が処罰を求める意思表示をするのが請求です。請求を待って受理すべき事件については、公訴の提起があるまで取り消すことができ、取り消した者は更に請求できないという告訴の取消しの規定(237条1項・2項)と、共犯の一人に対する請求や取消しが他の共犯にも及ぶという不可分の規定(238条1項)が準用されます(237条3項・238条2項)。短答で請求が単独で問われることはほとんどなく、法定の捜査の端緒の一つとして名前を知っていれば足ります。
自首は書面又は口頭で検察官又は司法警察員にし、調書の作成と送付の規定が準用され、取り消すことはできません
自首とは、犯人が捜査機関に発覚する前に自ら犯罪事実を申告して処分を求めることで、刑法上は刑の任意的減軽の事由です(刑法42条1項)。発覚する前とは、犯罪事実が全く発覚していない場合と、犯罪事実は発覚していても犯人が誰かが発覚していない場合をいい、犯人の所在だけが不明の場合は含みません(最判昭和24年5月14日)。刑事訴訟法上は捜査の端緒の一つで、告訴・告発の方式の規定(241条)と司法警察員の送付義務の規定(242条)が準用されます(245条)。したがって自首は書面又は口頭で検察官又は司法警察員にし、「自首は、書面又は口頭で、司法警察員にしなければならず、検察官にすることはできない」という肢は誤りです。「罪を犯した者は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員に自首をすることができるが、検察官又は司法警察員は、口頭による自首を受けたときは調書を作らなければならない」という肢と、「司法警察員は、口頭による自首を受けたときは調書を作らなければならない」という肢は正しいです。「司法警察員は、自首を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」という肢も正しいです。これに対し、取消しの規定(237条・243条)は自首には準用されていません。自首は犯人自身の申告であって処罰を求める被害者の意思表示ではないので、取り消すという観念がないからです。「自首した犯人は、告訴又は告発と同様、自首を取り消すことができる」という肢は誤りです。自首して出頭している被疑者であっても、急速を要し逮捕状を求めることができないときは緊急逮捕ができます。「被疑者を警察署内に待たせておいてその間に通常逮捕のための逮捕状を求めることができるので、緊急逮捕が許されることはない」という肢は誤りです。
- 主体告訴=告訴権者(被害者等)/告発=何人でも(公務員は義務)/自首=犯人自身
- 相手方と方式いずれも書面又は口頭で検察官又は司法警察員に(241条・245条)。司法巡査にはできません
- 口頭のとき調書を作ります(241条2項。自首は245条で準用)
- 司法警察員が受けたとき速やかに書類と証拠物を検察官に送付します(242条。自首は245条で準用)
- 取消し告訴・告発・請求は公訴提起まで取り消せ、取り消した者は再度できません(237条・243条)。自首は取り消せません
- 訴訟条件との関係親告罪の告訴、告発や請求を待つ罪の告発・請求は訴訟条件ですが、その前でも捜査と強制処分はできます
- 処分の通知検察官は起訴・不起訴を告訴人・告発人・請求人に通知します(260条・261条)
刑事訴訟法239条1項
何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
刑事訴訟法245条
第二百四十一条及び第二百四十二条の規定は、自首についてこれを準用する。
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