外国人の刑事手続(通訳・翻訳)とは
がいこくじんのけいじてつづき
外国人の刑事手続とは、日本語に通じない被疑者・被告人について、通訳と翻訳をどう付け、手続の言語をどうするかの規律です。国語に通じない者に陳述をさせる場合には通訳人に通訳をさせなければならず(刑事訴訟法175条)、裁判所では日本語を用いるので手続を外国語で進めることはできず、判決の宣告にも通訳人を付さなければなりません。
日本語の分からない人が逮捕されたら、何の容疑で捕まったのか、法廷で何が起きているのかを伝える手段が要ります。法律は、国語に通じない者に陳述をさせるときは通訳人に通訳させることを義務にし、文字や符号は翻訳させることができるとしました。裁判所で使う言葉は日本語と決まっているので、手続を外国語で進めることはできず、通訳人を間に立てます。判決の言渡しだけ通訳を省くと何の判決か本人に分からないので違法です。一方、通訳を介して聞いた供述を日本語の調書にまとめることは許されます。
国語に通じない者に陳述をさせるときは通訳人に通訳をさせなければならず、判決の宣告でも通訳人を付さなければなりません
国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければなりません(刑事訴訟法175条)。耳の聞こえない者や口のきけない者には通訳人に通訳をさせることができ(176条)、国語でない文字又は符号は翻訳させることができます(177条)。通訳と翻訳には鑑定の規定が準用されます(178条)。175条は被告人に供述を求め証人を尋問する場面に適用されるだけでなく、裁判の趣旨を了解させるためにも通訳人を用いなければならない趣旨を含むので、公判廷の取調べで通訳人を必要とした被告人には、判決の宣告の際にも通訳人を付して、どのような判決があったのかを了解させなければなりません(最判昭和30年2月15日)。「外国人である被告人の公判において,判決の言渡しに限っては,通訳を付さずにしても違法ではない」という肢は誤りです。公判前整理手続の検察官請求証拠の開示で、証人・鑑定人とともに通訳人・翻訳人の氏名及び住居を知る機会を与える扱いになっているのも(316条の14第1項2号)、通訳人が手続の中で証人等と同じ位置づけを持つからです。通訳人・翻訳人にも証人等特定事項の秘匿の決定ができます(290条の3第1項)。「証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に係る特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることはできない」という肢は誤りです。
裁判所では日本語を用いるので、当事者に異議がなく裁判所が許可しても外国語で公判手続を進めることはできず、供述録取書を日本語で作るのは適法です
裁判所では日本語を用います(裁判所法74条)。訴訟行為は日本語でするのが法律の定めなので、検察官及び弁護人に異議がなく裁判所が許可しても、被告人の理解する外国語で公判手続を進めることは違法です。「検察官及び弁護人に異議がなく,裁判所が許可すれば,同被告人の理解する外国語で公判手続を進めても違法ではない」という肢は誤りです。捜査段階も同じで、日本語に通じない被疑者を通訳を介して取り調べたとき、その供述録取書を日本語で作成しても違法ではありません。被疑者が外国語で述べた内容を通訳人が日本語に訳し、それを録取して読み聞かせ、通訳を介して誤りがないことを確かめて署名押印を求める流れが実務の扱いです。「外国人である被疑者を通訳を介して取り調べる場合,その供述録取書を日本語で作成しても違法ではない」という肢と、「司法警察職員は、日本語に通じない被疑者を通訳を介して取り調べる場合、その供述録取書を日本語で作成しても違法ではない」という肢は正しいです。
- 陳述をさせるとき(175条)通訳人に通訳をさせなければならない。判決の宣告にも付す(最判昭和30年2月15日)
- 手続の言語日本語(裁判所法74条)。異議がなく許可があっても外国語では進められない
- 供述録取書通訳を介して日本語で作成してよい
- 逮捕状の呈示(201条1項)外国人でも必要。翻訳文の添付や通訳の同道で被疑事実を理解させる
- 保釈(89条)在留資格がないことは除外事由ではない。許しても違法でない
- 通訳人・翻訳人の保護証人等特定事項の秘匿の対象(290条の3)。氏名・住居は検察官請求証拠の開示で知る機会を与える(316条の14第1項2号)
逮捕状の呈示は外国人でも省けず、在留資格がなくても保釈を許すことは違法ではありません
逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければなりません(201条1項)。被疑者が外国人で日本語が読めなくても呈示の義務はなくならず、翻訳文を添えたり通訳を同道させたりして、被疑事実の要旨を理解できるようにします。「司法警察員がその所持する逮捕状により外国人である被疑者を逮捕する場合,同被疑者に逮捕状を示さなくても違法ではない」という肢は誤りです。保釈については、権利保釈の除外事由は89条各号に限られ、被告人が日本に適法に在留する資格を有しないことはどの号にも当たりません。在留資格がないことは逃亡のおそれの判断で考慮され得る事情にすぎず、保釈を許すこと自体は違法ではありません。「外国人である被告人が日本に適法に在留する資格を有しない場合でも,同被告人の保釈を許すことは違法ではない」という肢は正しいです。退去強制で国外に出た外国人の検察官面前調書を321条1項2号前段で使えるかは、「検察官面前調書」で扱います。
刑事訴訟法175条
国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。
刑事訴訟法177条
国語でない文字又は符号は、これを翻訳させることができる。
刑事訴訟法201条1項
逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。
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