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用語集 / 刑事訴訟法 / 捜索差押許可状

捜索差押許可状(219条:請求権者・記載事項・罪名と罰条・被疑者未特定)とは

そうさくさしおさえきょかじょう

刑事訴訟法 捜索・差押え・検証・鑑定

捜索差押許可状とは、検察官、検察事務官又は司法警察職員が犯罪の捜査をするについて必要があるときに、裁判官が発する令状であり、これにより捜索と差押えができ、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により発せられます(刑事訴訟法218条1項・5項)。

警察官が覚醒剤の密売の疑いのある家を調べたいと考えても、勝手に玄関を開けて家中を探すことはできません。人の住居や持ち物を強制的に調べる処分は、裁判官が事前に審査して発する令状がなければできないからです(憲法35条)。そこで捜査機関は、罪名、捜索すべき場所、差し押さえるべき物を示して裁判官に請求し、捜索差押許可状の発付を受けます。令状に場所と物が書かれているのは、捜査機関が許可の範囲を超えて探し回ることを防ぎ、処分を受ける人にもどこまで受忍すべきかを知らせるためです。

マンションの玄関先の場面。先生が警察官役(札「司法警察員」)で、ドアを開けた男性(札「住居主」)に一枚の令状を両手で示している。令状の紙面に「捜索差押許可状/罪名 覚醒剤取締法違反/捜索すべき場所 甲方居室/差し押さえるべき物 覚醒剤・注射

請求できるのは検察官・検察事務官・司法警察員で、執行は司法巡査を含む司法警察職員もできます

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、捜索又は検証をすることができます(刑事訴訟法218条1項)。この令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により発せられます(218条5項。出題当時は4項でした)。請求できる者と執行できる者がずれている点が大切です。請求は司法警察員までで司法巡査はできませんが、執行は司法警察職員なので司法巡査もできます。通常逮捕状の請求が検察官と警部以上の指定司法警察員に限られる(199条2項)のと違い、捜索差押許可状の請求には警部以上という限定がなく、検察事務官も請求できます。「検察事務官が、捜索差押許可状を請求した」のは適法です。検察事務官が裁判官の発付した捜索差押許可状により被疑者の居宅を捜索することも違法ではありません。「捜索差押許可状の請求」と「捜索差押許可状により捜索すること」は、いずれも司法警察員と検察官の両方ができる権限です。検察官は必要と認めるときは自ら犯罪を捜査できる(191条1項)ので、「司法警察員から送致を受けた事件であっても,捜査の必要があると思料するときは,自ら,捜索差押許可状の発付を受けて,捜索差押えを行うことができる」という肢は正しいです。

  • 請求検察官・検察事務官・司法警察員(218条5項)。司法巡査はできない。警部以上の限定はない
  • 執行検察官・検察事務官・司法警察職員(218条1項)。司法巡査もできる
  • 通常逮捕状との違い逮捕状の請求は検察官と警部以上の指定司法警察員に限られ、検察事務官は請求できない(199条2項)
  • 被告人段階裁判所が差押状・捜索状を発する(107条1項)。検察官、被告人、弁護人に立会権がある(113条1項)

記載事項は被疑者の氏名・罪名・差し押さえるべき物・捜索すべき場所・身体・物・有効期間などで、犯罪事実の要旨や罰条は要りません

捜索差押許可状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、有効期間とその期間経過後は着手できず令状を返還しなければならない旨、発付の年月日などを記載し、裁判官が記名押印します(219条1項)。逮捕状と違って犯罪事実の要旨は記載事項ではありません。第三者の住居で執行されることも多いので、被疑者の名誉や捜査の秘密に配慮したものです。「捜索差押許可状には,犯罪事実の要旨を記載しなければならない」という肢は誤りです。罪名についても、判例は、憲法35条が令状に明示を求めるのは捜索する場所と押収する物だけで、それ以外の記載事項は刑事訴訟法に委ねられており、219条1項により罪名を記載するに当たって適用法条まで示す必要はないとしました(最大決昭和33年7月29日)。地方公務員法違反とだけ書けば足り、特別法違反でも変わりません。「特別法違反の罪については,被疑事件を特定するため,罪名のほか,その罰条又は犯罪事実を記載しなければならない」という肢は誤りです。同じ決定は、差し押さえるべき物として具体的な例示に付加された「その他本件に関係ありと思料せられる一切の文書及び物件」という記載も、例示に準じる物を指すものとして特定に欠けないとしています。これに対して通信傍受法の傍受令状には、被疑事実の要旨と罰条を記載しなければなりません。「差押え,捜索又は検証のための令状には,犯罪事実の要旨及び罰条の記載を要しないが,通信傍受法の傍受令状には,被疑事実の要旨及び罰条を記載しなければならない」という肢は正しいです。差し押さえるべき物が電子計算機でリモートアクセスをするときは複写すべき範囲(219条2項)を、電磁的記録提供命令をするときは提供させるべき電磁的記録と提供させるべき者・提供の方法(219条1項)を書きます。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の横に立つ。黒板に三列の表。列の見出し「逮捕状」「捜索差押許可状」「傍受令状」。行の見出し「被疑事実の要旨」「罰条」。逮捕状の列は「要る」「-」、捜索差押許可状の列は「要らない」「要ら
  • 捜索差押許可状(219条1項)被疑者の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所・身体・物、有効期間など。犯罪事実の要旨と罰条は不要
  • 逮捕状(200条1項)被疑者の氏名・住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき場所、有効期間など。被疑事実の要旨が要る
  • 傍受令状(通信傍受法)被疑者の氏名、被疑事実の要旨、罪名、罰条、傍受すべき通信など。被疑事実の要旨と罰条が要る

被疑者が特定できていない段階でも発付でき、氏名が明らかでなければ人相や体格で指示できます

被疑者の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被疑者を特定するに足りる事項で指示することができます(219条4項が準用する64条2項。出題当時は219条3項でした)。さらに、被疑者がおよそ判明していない段階でも、犯罪の嫌疑と、捜索すべき場所に差し押さえるべき物が存在する蓋然性と、処分の必要性を裁判官が審査できるのであれば、令状を発付できます。令状主義が求めているのは裁判官による事前の審査であって、被疑者が決まっていることではないからです。「裁判官は,被疑者が特定できていない段階でも,犯罪の捜査をするについて必要があるときは,捜索差押許可状を発付することができる」という肢は正しいです。実務でも被疑者不詳のまま発付されることがあります。

被疑者以外の者の身体・物・住居は、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況がある場合に限って捜索できます

被疑者の身体、物又は住居その他の場所は、必要があるときに捜索できますが、被疑者以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができます(222条1項が準用する102条2項)。事件と直接関わりのない第三者に強制力を及ぼすには、より慎重であるべきだからです。「被疑者以外の者の身体,物又は住居その他の場所については,押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り,捜索をすることができる」という肢は正しいです。この状況があるかは令状審査の対象で、請求の際に疎明します。令状に書かれた場所でどこまで捜索できるかは捜索の範囲の語で、差し押さえるべき物に当たるかは差押えの対象と関連性の語で扱います。

刑事訴訟法218条1項

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、捜索、電磁的記録提供命令又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

刑事訴訟法218条5項

第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。

刑事訴訟法219条1項

前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、提供させるべき電磁的記録、提供させるべき者及び提供の方法、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、捜索若しくは検証に着手し、又は電磁的記録提供命令をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

刑事訴訟法102条2項

被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

論文ではこう使う

論文では、令状の記載が概括的である事案で、憲法35条と刑事訴訟法219条1項が場所と物の明示を求める趣旨から書き始めます。趣旨は、裁判官による事前審査の対象を画すること、捜査機関が許可の範囲を超えて一般的・探索的に捜索することを防ぐこと、処分を受ける者に受忍すべき範囲を知らせることです。そこから、差し押さえるべき物の記載は、執行する者が現場で被疑事実との関連を判断できる程度に具体的であれば足りるという規範を立て、具体的な例示に付加された概括的な記載は例示に準じる物を指すものとして許されるとした判例の結論につなげます。当てはめでは、例示の具体性、被疑事実の性質、実際に差し押さえられた物が例示に準じるかを拾います。

試験ではこう問われる

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