令状の要否の一覧(令状なくできる処分と令状の種類の対応)とは
れいじょうのようひのいちらん
令状の要否の一覧とは、捜査機関の処分を、裁判官の令状なしにできるものと、令状が要るものに分け、令状が要るものについてはどの種類の令状によるかを対応させた整理です。令状なしにできるのは、任意処分と、刑事訴訟法が令状主義の例外として認めた処分(逮捕に伴う処分・領置・拘束中の指紋と写真・検視など)です。
公園で死体が見つかり、検察官が検視をし、警察官が草むらのナイフを拾い、医師が解剖し、防犯カメラで割り出した被疑者を逮捕状で逮捕してバッグの中のシャツを押さえ、指紋と顔写真を取ったとします。この流れの中で裁判官の令状が要った処分が幾つかを数えさせるのが、この分野の事例問題です。刑事訴訟法は、相手の意思を制圧して重要な権利を侵す強制処分には令状を求め(憲法35条)、権利を侵さない任意処分と、逮捕に伴う処分のように法律が例外と決めた処分には令状を求めません。この一覧は処分を一つずつ仕分けるための対応表です。
令状なしにできるのは、任意処分と、法律が令状主義の例外として認めた処分です
令状が要るのは強制処分、すなわち個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を用いる処分です(197条1項ただし書、強制処分の意義の語)。相手の意思を制圧しない処分には令状は要りません。公道上を歩く被疑者の容貌を本人に知られずに撮影すること、尾行すること、金融機関に負債内容の報告を求めて書面の交付を受けること(197条2項の照会)、同意に基づいて口腔内細胞を採取してDNA型を検査すること、同意に基づくポリグラフ検査、同意のある覚醒剤の予試験、住居主の承諾を得た実況見分、鑑定の嘱託そのもの(223条1項)、通話の一方当事者の同意を得た録音は、いずれもあらかじめ令状がなくても適法と評価される余地があります。被疑者が不要物として公道上のごみ集積所に出したごみ袋を持ち帰ることも、占有を放棄した遺留物の領置として令状は要りません(最決平成20年4月15日)。これらに加えて、法律が令状主義の例外として明文で認めた処分があります。検視(229条)、遺留物・任意提出物の領置(221条)、現行犯逮捕(213条)、逮捕する場合に人の住居に入って被疑者を捜索すること(220条1項1号)、逮捕の現場での差押え・捜索・検証(220条1項2号・3項)、身体を拘束された被疑者の指紋・足型・身長体重・写真(裸にしない限り。218条4項)です。
- 令状不要(任意処分)公道上の容貌の撮影・尾行/金融機関への照会(197条2項)/同意あるDNA型検査・ポリグラフ・予試験・唾液の採取/承諾ある実況見分/鑑定嘱託/一方当事者の同意ある録音/承諾ある任意同行
- 令状不要(法律の例外)検視(229条)/遺留物・任意提出物・ごみの領置(221条)/現行犯逮捕(213条)/逮捕のための住居への立入り(220条1項1号)/逮捕の現場の差押え・捜索・検証(220条1項2号)/拘束中の被疑者の指紋・足型・身長体重・写真(218条4項)
- 捜索差押許可状承諾のない捜索・差押え/着衣・ポケットの中の捜索/パソコンの差押え/強制採尿(医師に行わせる条件付き)
- 検証許可状承諾のない検証/宅配便荷物のエックス線検査/同意のない予試験のための占有取得は差押え
- 身体検査令状全裸にしての写真撮影/拘束されていない者の身体の検査
- 鑑定処分許可状死体の解剖/鑑定受託者の住居立入り・身体検査・墳墓の発掘・物の破壊/強制採血(身体検査令状と併用)
- 鑑定留置状鑑定のための病院への留置
- 傍受令状通信の当事者のいずれの同意もない通信傍受
- 逮捕状・勾留状通常逮捕・緊急逮捕(事後)/勾留
令状が要るものは、処分の性質に応じて令状の種類が決まります
承諾のない捜索と差押えは捜索差押許可状(218条1項)で、着衣の中の捜索もパソコンの差押えもこれによります。強制採尿は捜索・差押えの性質を持つので、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせる条件を付した捜索差押許可状によります(最決昭和55年10月23日)。「被疑者甲が任意に尿を提出しなかった場合でも,司法警察員Xは,捜索差押許可状の発付を受けて,医師をして被疑者甲から強制的に採尿をさせることができる」という記述のとおりです。承諾のない検証は検証許可状で、宅配便の荷物のエックス線検査は検証としての性質を有する強制処分なので検証許可状が要ります(最決平成21年9月28日)。検視では死体の外表を見分できるだけで、エックス線検査も解剖も採血もできず、「検視においては,死体のエックス線検査をすることはできない」という肢は正しいです。身体の状態を調べる身体検査は身体検査令状で、拘束中の被疑者でも全裸にして写真を撮るには要ります。死体の解剖は鑑定受託者が鑑定処分許可状を得て行い、「ZがVの死体を解剖するには,鑑定処分許可状の発付を受ける必要がある」という肢は正しいです。採血を拒む被疑者から医師に採血させるには令状が要り、「裁判官による令状の発付を受けなくても,医師Yに鑑定嘱託をして,被疑者甲の採血をさせることができる」という肢は誤りです。通信の傍受は傍受令状によります。
事例の処分を一つずつ仕分けると、令状の要る処分の数が決まります
検察官が公道上の変死体を検視するのに令状は要らず(229条)、「Yが検視を実施するには,検証許可状の発付を受ける必要がある」という肢は誤りです。公園の草むらのナイフや金属バット、公道に投棄された注射器を領置するのに差押許可状は要りません。被疑者を逮捕する場合に知人の住居に入って被疑者を捜索するのに令状は要らず、逮捕された被疑者の指紋を採取し顔写真を撮影するのにも令状は要りません。捜索中に見つけた覚醒剤を同意を得て予試験し、現行犯逮捕し(213条)、逮捕の現場で白色結晶とポーチと注射器を押収する一連の処分にも令状は要りません(220条1項2号・3項)。「捜索差押えを行うには,必ず捜索差押許可状が発付されていなければならない」という肢は誤りで、現行犯逮捕した者が所持していた覚醒剤を押収するのに差押許可状は要りません。所持品検査で見つけた覚醒剤の任意提出を拒まれても、現行犯逮捕して逮捕の現場で差し押さえられるので、「差押許可状を取得しない限り,同覚醒剤を差し押さえることはできない」という肢は誤りです。司法警察員が筆跡の鑑定を科学捜査研究所に嘱託するのにも、誘拐された被害者の親の同意を得て通話を録音するのにも令状は要りません。したがって、検視・指紋採取・鑑定嘱託・住居への立入り・注射器の領置・同意ある録音の六つを並べた問題では、令状を必要とするものは一つもありません。強盗殺人の捜査で、公道上の容貌の撮影・ごみ袋の持ち帰り・金融機関への照会・同意あるDNA型検査・同意あるポリグラフ検査を並べた問題でも、あらかじめ令状がなければ適法と評価される余地のないものは一つもありません。逆に、被疑者の尿を強制的に採取する、死体を解剖する、宅配便荷物にエックス線を照射する、全裸にして撮影するという処分が混ざっていれば、その数だけ令状が要ります。
論文ではこう使う
論文では一覧をそのまま書くことはありませんが、事例の処分ごとに「強制処分か任意処分か→強制処分なら法律の根拠と令状の種類→令状主義の例外に当たるか」の順で検討する型を使います。任意処分なら必要性・緊急性・相当性を事情で当てはめ、強制処分なら218条・220条・221条・223条・225条のどれに当たるかと令状の有無を確かめ、令状なしに行っていれば違法として証拠能力の検討につなげます。逮捕に伴う処分や領置のように令状不要の処分でも、要件(逮捕の現場・遺留物に当たるか)を一言で確かめることを忘れないようにします。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。