司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 刑事訴訟法 / 検証と実況見分

検証と実況見分(検証許可状・承諾・必要な処分)とは

けんしょうとじっきょうけんぶん

刑事訴訟法 捜索・差押え・検証・鑑定

検証とは、場所、物又は人の身体の存在や状態を、五官の作用によって認識する処分です。捜査機関が相手方の意思に反して行うには裁判官の発する検証許可状が要り(刑事訴訟法218条1項)、住居主などの承諾を得て任意処分として同じ見分を行うものを実況見分といいます。

放火で焼けた建物の中を警察官が見て回り、焼け方や物の位置を調べて図面と写真に残すとします。これは場所の状態を目で見て確かめる処分で、刑事訴訟法ではこれを検証と呼びます。建物の所有者が「どうぞ調べてください」と言っているなら、誰の意思も押さえつけていないので令状は要らず、実況見分として行えます。所有者が拒んでいるのに立ち入って調べるなら、強制処分なので裁判官の検証許可状が要ります。中身は同じ見分でも、相手の承諾があるかどうかで令状の要否が決まるのが、検証と実況見分の関係です。

火事で焼けた木造家屋の玄関先の場面。先生が警察官役(札「司法警察員」)で、図板と巻尺を持ち、家の所有者の男性(札「所有者」)と話している。先生の吹き出し「あなたの承諾があるから、令状なしの実況見分として焼け方と物の位置を調べて記録する。拒ま

捜査機関の検証は検証許可状によりますが、承諾があれば令状なしの実況見分として行えます

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により検証をすることができます(218条1項)。これが検証許可状で、記載事項は検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体と身体の検査に関する条件です(219条1項)。検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができ(129条、222条1項)、日出前・日没後は令状に夜間でも検証ができる旨の記載がなければ人の住居等に入れませんが、日没前に着手すれば継続できます(222条4項・5項)。もっとも、令状が要るのは強制処分として行う場合です。人の住居に入って内部の状態を五官の作用で認識する処分でも、住居主の承諾があれば任意処分として令状なしに行え、これが実況見分です。「住居主の承諾がある場合であっても,これを令状なく行うことは許されず,検証許可状の発付を受けて行わなければならない」という肢は誤りです。覚醒剤の予試験も、被疑者が同意していれば令状なしにでき、「甲が同意しているか否かを問わず、裁判官による令状の発付を受ける必要がある」という肢は誤りです。同意がないのに占有を取得して検査するには差押えの令状が要ります。検視(229条)は検証とは別の処分で、検視の語で扱います。

エックス線検査や電話の傍受は検証の性質を持つ強制処分で、条件を付した検証許可状によりますが、GPS捜査は検証許可状では足りません

荷送人や荷受人の承諾を得ずに宅配便の荷物にエックス線を照射して内容物の射影を観察する検査は、形状や材質を知ることができ品目を相当程度特定できる場合もあり、内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するので、検証としての性質を有する強制処分に当たり、検証許可状が要ります(最決平成21年9月28日)。「エックス線を照射して内容物の射影を観察するには,検証許可状を必要とする」という肢は正しいです。通信傍受法の制定前に検証許可状で電話を傍受した事案で、判例は、電話傍受は検証としての性質を持ち、身体検査令状に関し裁判官が適当と認める条件を付することができるとする規定(現行218条9項。出題当時は6項、判決当時は5項)は、条件の付加が強制処分の範囲・程度を減縮させる方向に作用する点で身体検査令状以外の検証許可状にも準用を肯定し得るとしました(最決平成11年12月16日)。「身体検査令状以外の検証許可状にもその準用を肯定することができる」という肢は正しいです。これに対し、車両にGPS端末を取り付けて位置情報を取得する捜査は、画面表示を読み取る点では検証と同様の性質を持つものの、端末を取り付けて所在の検索を行う点で検証では捉えきれない性質を持ち、検証許可状を得ても被疑事実と関係のない使用者の行動の過剰な把握を抑制できないので、検証許可状では実施できません(最大判平成29年3月15日)。刑事訴訟法に検証を10日を超えて実施できないという規定はなく、「検証許可状を取得すればこれを行うことができる」という肢は誤りです。GPS捜査の語とエックス線検査の語で詳しく扱います。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ。黒板に二列の板書。左列の見出し「検証許可状でできる」、その下に「承諾のない住居内の見分」「宅配便荷物のエックス線検査(最決平21.9.28)」「電話の傍受・条件を付ける(最
  • 住居主の承諾を得た見分・同意のある予試験令状不要(実況見分・任意処分)
  • 承諾のない住居内の見分検証許可状(218条1項)
  • 身体の検査身体検査令状(218条1項後段。身体検査の語)
  • 宅配便荷物のエックス線検査検証許可状(最決平成21年9月28日)
  • 電話の傍受検証の性質。現在は通信傍受法の傍受令状(通信傍受の語)
  • GPS端末による位置情報の取得検証許可状では足りない。立法による(最大判平成29年3月15日)
  • 検視検証ではない。令状不要だが解剖はできない(検視の語)

裁判所が行う検証には検察官・被告人・弁護人が立ち会え、第1回公判期日前には裁判官に証拠保全としての検証を請求できます

被告人段階では、裁判所が事実発見のため必要があるときに検証をします(128条)。裁判所の検証には差押状・捜索状の執行に関する113条が準用されるので(142条)、検察官、被告人又は弁護人は立ち会うことができ、執行の日時と場所があらかじめ通知されます。「裁判所が,起訴された被告事件の犯行現場を検証する場合」は、弁護人が立会いを求めることができる場合です。捜査機関の検証に弁護人の立会権がないのは、捜索差押えと同じです。また、被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができます(179条1項)。「第1回の公判期日前に限り,裁判官に押収,捜索,検証,証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる」という肢は正しいです。検証の結果を記載した検証調書と実況見分調書の証拠能力(321条3項)は、検証調書・実況見分調書の語で扱います。

刑事訴訟法218条1項

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、捜索、電磁的記録提供命令又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

刑事訴訟法129条

検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。

刑事訴訟法218条9項

裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を付することができる。

論文ではこう使う

論文では、新しい捜査手法が検証に当たるか、検証許可状で行えるかを問われます。まず強制処分の意義(個人の意思を制圧し重要な権利利益を実質的に侵害するか)で強制処分か任意処分かを決め、強制処分なら強制処分法定主義から刑事訴訟法に定めがあるかを検討します。エックス線検査のように五官の作用で対象の状態を認識する手法は検証の性質を持つので検証許可状で行えると述べ、必要なら条件を付して対象を限定できることを添えます。GPS捜査のように検証では捉えきれない性質を持ち令状審査で過剰な把握を抑制できない手法は、検証許可状では行えず立法が要るという判例の筋で書きます。承諾のある実況見分と区別することを忘れないようにします。

試験ではこう問われる

「検証と実況見分」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型7件と関係する過去問の肢13本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、刑事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

捜査の端緒

検視(229条)

刑訴の基礎と捜査総論

GPS捜査(大法廷判決)

刑訴の基礎と捜査総論

エックス線検査(宅配便荷物)