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用語集 / 刑事訴訟法 / 検証調書・実況見分調書

検証調書・実況見分調書(321条2項・3項)とは

けんしょうちょうしょじっきょうけんぶんちょうしょ

刑事訴訟法 伝聞法則

検証調書・実況見分調書とは、検察官・検察事務官・司法警察職員が検証(任意処分の実況見分を含む)の結果を記載した書面で、作成者が公判期日に証人として真正に作成されたことを供述すれば証拠にできるものです(321条3項)。裁判所・裁判官の検証調書は無条件に証拠にできます(321条2項)。

交通事故の現場で警察官が距離を測り、見通しを確かめ、写真を撮って書面にしたものが実況見分調書です。これも警察官が見たことを後から書面で伝えるので伝聞証拠ですが、物の位置や距離といった中立的な対象を、その場で専門の訓練を受けた者が記録するので、口頭で話すより正確です。そこで321条3項は、作成者が法廷で「自分が正しく作った」と証言すれば証拠にできることにしました。ただし、立会人が現場で語った言葉を書き取った部分は別で、その中身を証明に使うなら供述証拠として改めて伝聞例外の要件が要ります。

交差点の事故現場の場面。巻尺で路面の距離を測る男性の司法警察員(札「司法警察員K」)と、横で現場を指さす男性の立会人(札「立会人 甲」)。立会人の吹き出し「被害者を最初に見たのはここです」。少し離れて先生(札「先生」)が板を持ち、吹き出し「

捜査機関の検証調書は、作成者が証人として真正に作成されたことを供述すれば証拠にでき、任意処分の実況見分調書も含みます

321条3項は、検察官・検察事務官・司法警察職員の検証の結果を記載した書面について、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときに証拠にできるとします。検証は五官の作用で物や場所の状態を観察する処分で、その結果は観察と同時に記録されるので記憶の減退が少なく、複雑な状況は口頭より書面の方が正確に伝えられるからです。判例は、この書面には捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載した実況見分調書も含まれ、そう解しても憲法37条2項に反しないとしました(最判昭和35年9月8日)。「同条第3項所定の書面には,捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載した書面も含まれる。」という肢は正しく、令状による検証の調書に限るとして実況見分調書を外す肢は誤りです。警察犬による臭気選別の経過と結果を記載した報告書も、立ち会った司法警察員が正確に記載したことを証言で明らかにすれば3項で証拠能力が付与されます。他方、裁判所・裁判官の検証調書は321条2項で無条件に証拠にでき、私人が作成した書面は作成主体が「検察官、検察事務官又は司法警察職員」とされている3項には準じません。

真正に作成されたことの供述は、名義だけでなく観察どおりに正確に記載したことまでを含み、立会人の尋問や学識経験は要りません

「真正に作成されたものであること」とは、作成名義が本人のものであることに加えて、見分の結果を見たとおり正確に記載したことをいいます。作成者が「この実況見分調書は私が自分で作成したものに間違いありません」と述べただけでは名義の真正しか示していないので、「実況見分調書を証拠とするには,この証言で足りる。」という肢は誤りです。反対に、要るのは作成者の証言だけです。立会人への証人尋問は要件ではなく、「実況見分調書の証拠能力が認められるためには,K及びV両名に対する証人尋問が必要である。」という肢は誤りです。作成者が火災原因などの学識経験を持つことも要件ではなく、「Kが火災原因の調査,判定に関して学識経験を有しない場合には,実況見分調書が真正に作成されたものであるとは認められない。」という肢も誤りです。見分は五官で状態を記録する処分で、専門知識に基づく判断を報告する鑑定とは性質が違うからです。立証趣旨が「建造物の焼損状況」なら、関連性のために被告人が犯人であることを疎明する必要もありません。実況見分調書に添付された写真は調書と一体として3項で判断すれば足り、撮影者を別に証人尋問して関連性を立証する必要はありません。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。証言台の男性の司法警察員(札「証人K」)が実況見分調書を手に吹き出し「この調書は私が作成したものに間違いありません」。先生の吹き出し「名義が本人のものというだけでは足りない。見分した結

立会人の指示説明は見分の動機や対象を示す範囲でだけ使え、その内容の真実性の立証には使えません

実況見分調書には、立会人が「ここで火を付けるのを見た」「被害者を初めて発見したのは①地点だった」と指し示した説明が書かれています。これは見分の対象を特定し動機を示す現場指示として記載される限り、調書と一体のものとして3項で証拠にできます。しかし、その説明の中身が真実であること(本当にそこで火を付けるのを見た、本当に①地点で発見した)を認定に使うなら、立会人の供述を書き取った供述録取書と同じですから、別に321条1項(立会人が被告人以外の者)か322条(立会人が被告人)の要件を満たさなければなりません。「実況見分調書が真正に作成されたものであることが認められても,実況見分調書におけるVの前記説明内容が記載された部分を,Aが犯人であることを証明する証拠として用いることはできない。」という肢は正しいです。立会人が被告人甲の交通事故の事案では、「事故当時,この街灯は点灯していませんでした」という甲の説明を街灯が点灯していなかった事実の認定に使うこと、「被害者が立っていた場所は②地点でした」という説明を被害者が②地点に立っていた事実の認定に使うことはできず、どちらも322条1項の要件が要ります。他方、甲が指示した①地点と②地点の間を見分者が測定した「10.7メートル」という結果は、指示された地点と測定結果を合わせた見分の結果そのものなので3項で使えます。「①地点の運転席に着席した甲の目の高さに視線を置き,②地点方向を見た」見通し状況や「人通りは多かった」という記載も、見分者が五官で感知した結果なので3項で証拠にできます。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、指し棒で板書を指している。黒板の見出し「実況見分調書の中身を分ける」の下に二列の表。左列の見出し「3項で使える」の下に「①②地点の距離 10.7m」「運転席からの見通し」「人通りが多か

犯行再現の実況見分調書は、要証事実が再現どおりの犯罪事実の存在なら、供述録取部分と写真に322条・321条1項の要件が重なります

捜査官が被疑者や被害者に犯行や被害の状況を再現させ、写真と説明で記録した実況見分調書・写真撮影報告書は、立証趣旨が「再現状況」とされていても、実質においては再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になります。最高裁は、このような書面は326条の同意がない場合、321条3項の要件を満たすことはもとより、再現者の供述録取部分と写真については、再現者が被告人以外の者なら321条1項2号又は3号の、被告人なら322条1項の要件を満たす必要があり、写真については署名押印を除く同項の要件が要るとしました(最決平成17年9月27日)。「実質上の要証事実が再現されたとおりの犯罪事実の存在である場合には,同条第3項所定の要件が満たされれば証拠能力が付与される。」という肢は誤りで、被告人の再現について「同法第322条第1項所定の要件を,写真部分については署名押印を除く同項所定の要件を,それぞれ満たす必要がある。」という肢は正しいです。再現写真は再現者の供述を写真という形で表したものなので、供述録取書に準じて扱いながら、写真には署名押印ができないので署名押印の要件だけを外します。

酒酔い鑑識カードは欄ごとに分かれ、検査・観察の欄は3項、問答欄は3号です

飲酒運転の捜査で作られる酒酔い鑑識カードについて、最高裁は、呼気の検知管の着色度を観察した化学判定欄と、言語・動作・酒臭・外貌などの外部的状態を観察した欄は、警察官が検査・観察により認識した結果を記載したものとして321条3項の検証の結果を記載した書面に当たるとし、被疑者との問答を簡単に記載した欄は、検証の結果ではなく捜査報告書の性質を持つものとして321条1項3号の書面に当たるとしました(最判昭和47年6月2日)。一枚の書面でも欄ごとに条文が変わります。

3項の整理

  • 対象は検察官・検察事務官・司法警察職員の検証調書で、任意処分の実況見分調書・臭気選別報告書・鑑識カードの観察欄を含みます。私人の書面は含みません
  • 要件は作成者が証人として真正作成(名義+観察どおりの正確な記載)を供述することだけで、立会人の尋問・学識経験・添付写真の撮影者の尋問は要りません
  • 立会人の指示説明は現場指示の範囲で3項と一体、内容の真実性に使うなら321条1項・322条の要件が別に要ります
  • 測定結果・見通し・人通りなど見分者が五官で感知した結果は3項で使えます
  • 犯行再現の調書・写真は、再現どおりの犯罪事実が要証事実なら3項+322条1項(被告人)/321条1項2号・3号(被告人以外)が要り、写真は署名押印を除きます(最決平成17年9月27日)
  • 裁判所・裁判官の検証調書は321条2項で無条件です

刑事訴訟法321条3項

検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。

論文ではこう使う

実況見分調書の答案は三段で書きます。第一に、調書全体が321条3項の「検証の結果を記載した書面」に当たることを最判昭和35年9月8日で示し、作成者の真正作成供述で足りることを述べます。第二に、調書の中の立会人の指示説明について、要証事実を特定し、現場指示(見分の動機・対象の特定)なら3項と一体、現場供述(内容の真実性)なら立会人が被告人か否かで322条1項か321条1項を別に検討します。第三に、犯行再現の調書なら、立証趣旨が再現状況とされていても実質の要証事実は再現どおりの犯罪事実の存在であるとして、最決平成17年9月27日の枠組みで供述録取部分と写真部分に322条1項(署名押印は写真を除く)を重ねて当てはめます。

試験ではこう問われる

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