現場写真・録音テープ・写しの証拠能力とは
げんばしゃしんろくおんてーぷうつしのしょうこのうりょく
現場写真とは、犯行の状況等を撮影した写真をいい、判例は非供述証拠に属し、写真自体又はその他の証拠により事件との関連性を認め得る限り証拠能力があるとしています(最決昭和59年12月21日)。録音テープ・写しの証拠能力とは、現場の音声を録音したテープや原本の写しを、どの要件で証拠にできるかという問題です。
防犯カメラが犯行の瞬間をとらえていたとき、その映像を法廷で使うのに「撮った人を呼んで証言させなければならない」とすると、無人のカメラの映像は誰も証言できないことになります。写真や映像は、人が見て覚えて話すという過程を経ずに、レンズと感光材料の働きで自動的にできあがるものです。人の記憶違いや言い間違いの危険がない以上、伝聞法則で縛る理由がなく、その写真が本当にこの事件の現場を写したものかという関連性さえ確かめられればよい、というのが判例の考え方です。同じ理屈が録音にも及ぶか、写しの場合はどうかが、ここでの問題です。
現場写真は非供述証拠で、事件との関連性が認められれば証拠能力があり、撮影者の証言は必須ではありません
最決昭和59年12月21日は、犯行の状況等を撮影したいわゆる現場写真は非供述証拠に属し、当該写真自体又はその他の証拠により事件との関連性を認め得る限り証拠能力を具備するものであって、これを証拠として採用するためには、必ずしも撮影者らに現場写真の作成過程ないし事件との関連性を証言させることを要しないとしました。被写体が印画紙に写るまでの過程は光学器械と感光材料の自動的な作用によるので、知覚・記憶・叙述の誤りを吟味する伝聞法則の適用場面ではないという理解が背後にあります。撮影位置や構図による限定は証明力の問題です。「犯行の状況を撮影したいわゆる現場写真は,非供述証拠に属し,…必ずしも撮影者らに現場写真の作成過程ないし事件との関連性を証言させることを要しない。」という肢は正しいです。実況見分調書に添付された現場の写真について、調書の作成者が撮影していない場合でも、写真の内容や調書の記載、作成者の証言などから事件との関連性が認められれば足ります。「写真の撮影をKがしていないので,写真を証拠とするためには,撮影者であるL巡査部長を証人尋問して,事件との関連性を立証しなければならない。」という肢は誤りです。関連性は他の証拠で立証してもよく、撮影者の証人尋問が唯一の方法ではありません。
現場録音については、321条3項に準じて録音者の真正作成供述を要求する見解と、非供述証拠として関連性で足りる見解が対立します
脅迫の被害者が脅迫を受けている現場の音声を録音したテープを、犯行時の状況の立証に用いる場面を考えます。音声を機械的に記録する点では現場写真と同じですが、録音には機器の操作や編集という人の作為が入り込む余地があります。そこで、現場写真も現場録音も現場の状況を報告するために人の手で作成されるものだという性質を重視し、録音テープの作成者が公判廷で真正に作成されたものであることを供述することを証拠能力の要件とする見解があります。この見解は、録音テープを検証の結果を記載した書面に準じて扱い、同意(326条)がない限り321条3項の要件を満たさなければならないとします。録音機器の操作や録音後の編集による誤りの危険があるから録音者への反対尋問による確認が必要不可欠だという発言も、この見解に立つものです。これに対し、写真は機械的方法で現場の状況をそのまま記録するもので供述の要素を含まず、録音でも音声を記録するうえでの機械的正確さは保障されているとして、証拠能力の要件は関連性で足り、録音者の証人尋問が絶対に必要とまではならないとする見解があります。録音の過程での人の作為による誤りと人の知覚・記憶・表現に伴う誤りとは本質的に違うという発言や、現場の状況が録音されていることが明らかなのに録音者が分からないときに証拠にできないのは問題で、作為の危険は証拠能力ではなく証明力の問題ではないかという発言は、この見解に立つものです。見解を与えて発言者を数えさせる問題では、作成者の真正供述を要件とする発言と、反対尋問による確認を必要不可欠とする発言が321条3項の要件を要求する側で、関連性で足りるとする発言と、作為の誤りは供述の誤りと本質的に違うとする発言がそれを要求しない側です。
- 録音テープの作成者が公判廷で真正に作成されたことを供述することが証拠能力の要件になる321条3項の要件を要求する見解の発言です
- 録音機器の操作や編集による誤りの危険があるから、録音者への反対尋問による確認が必要不可欠である321条3項の要件を要求する見解の発言です
- 写真は機械的に記録するもので供述の要素を含まず、録音も機械的正確さが保障されているから、証拠能力の要件は関連性で足りる321条3項の要件を要求しない見解の発言です
- 録音の過程での人の作為による誤りと、人の知覚・記憶・表現に伴う誤りとは本質的に違う。作為の問題は証拠能力の問題ではない321条3項の要件を要求しない見解の発言です
写しは、原本が存在し、写しが原本を忠実に再現していれば証拠能力があり、原本を取り調べた後に許可を得て写しを提出することもできます
東京高判昭和58年7月13日は、テレビ映像を原本とするビデオテープと写真帳について、原本が存在すること、写しが原本を忠実に再現したものであること、写しによっては再現できない原本の性状が立証事項とされていないことを写し一般の許容性の基準として挙げ、原本の完全な複製である必要はなく立証事項との関連で必要な性状が忠実に再現されていれば足りるとし、原本の提出が不可能又は著しく困難であることは写し提出の必要性の問題にすぎず許容性の基準ではないとして証拠能力を肯定しました。手続の面では、証拠調べを終えた証拠書類や証拠物は遅滞なく裁判所に提出しなければなりませんが、裁判所の許可を得たときは原本に代えてその謄本を提出できます(310条)。示談書のように被告人側が原本を保管する必要の高い書面は、原本を取り調べた後に許可を得て写しを提出し、原本の還付を受けられます。「示談書の原本が取り調べられた後,弁護人は,裁判所の許可を得て,示談書の写しを提出することができる。」という肢は正しいです。原本が相手方の手元にあって取り調べられない場合でも、原本の存在と成立の真正、写しが原本を正確に反映していることが認められれば写しで取り調べることができ、相手方が証拠とすることに同意していれば伝聞法則の問題も生じません。「裁判所は,反省文の原本を取り調べることができない以上,その写しを証拠として採用する決定をすることはできない。」という肢は誤りです。
被害再現写真を証人尋問で示した場合、証人が引用して証言した限度でその内容は証言の一部になります
現場写真とは別に、被害状況を再現した写真を証人尋問で示す場面があります。最決平成23年9月14日は、証人から具体的な供述が十分にされた後に、その供述を明確化するために同趣旨の再現写真を示すことは供述内容を視覚的に明確にするためのもので違法ではなく、示した写真を調書に添付するのは独立した証拠として扱う趣旨ではないから当事者の同意は不要であり、写真自体から事実認定はできないが、証人が写真の内容を実質的に引用して証言した限度でその内容は証言の一部となるとしました。再現写真は再現者の供述を含むので非供述証拠である現場写真とは性質が異なり、独立の証拠とするには伝聞法則の要件を満たす必要がありますが、証言の一部として用いる限りはその潜脱になりません。証人尋問で書面や物を示す方法の規律は証人尋問の方法の語で扱います。
刑事訴訟法310条
証拠調を終つた証拠書類又は証拠物は、遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならない。但し、裁判所の許可を得たときは、原本に代え、その謄本を提出することができる。
最決昭和59年12月21日
犯行の状況等を撮影したいわゆる現場写真は、非供述証拠に属し、当該写真自体又はその他の証拠により事件との関連性を認め得る限り証拠能力を具備するものであつて、これを証拠として採用するためには、必ずしも撮影者らに現場写真の作成過程ないし事件との関連性を証言させることを要するものではない
論文ではこう使う
写真や録音の証拠能力を論じる答案では、まず伝聞法則の適用があるかを、その証拠が人の知覚・記憶・叙述の過程を経た供述を含むかで判断します。現場写真・現場録音は機械的記録なので非供述証拠とし、関連性(この事件の現場を記録したものか、改ざんがないか)を他の証拠や内容自体から認定できるかを書きます。これに対し、再現写真や供述者が説明を加えたビデオは供述を含むので、要証事実との関係で伝聞かを検討します。録音については、作為の介在の危険を証拠能力の要件に取り込むか証明力の問題にとどめるかという見解の対立を示したうえで、自説を理由づけます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。