司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 刑事訴訟法 / 関連性と前科・悪性格の立証

関連性と前科・悪性格の立証とは

かんれんせいとぜんかあくせいかくのりっしょう

刑事訴訟法 証拠法総論と自白

関連性とは、証拠が要証事実の証明に役立つ性質をいい、必要最小限度の証明力があるかという自然的関連性と、証明力はあっても事実認定を誤らせる不当な偏見のおそれがないかという法律的関連性に分けられます。前科・悪性格の立証とは、被告人の前科や悪い性格から犯罪事実を推認させる立証をいい、自然的関連性があるだけでは許されません。

「この人は前にも同じことをやっている」と聞くと、今回も犯人だろうと思いたくなります。しかし、前にやったから今回もやったという推論は、その人の性格を悪く決めつけ、そこから結論を導く二段階の推認で、根拠が乏しいわりに裁判官や裁判員の心を強く動かします。しかも前科の中身をめぐって争いが広がり、本来の審理が脇に逸れます。そこで、前科や悪い性格を示す証拠は、多少の証明力があるというだけでは使えず、人格評価を経ずに事実を推認できる場合に限って証拠にできるという規律が立てられました。関連性という概念の、法律的な側面の問題です。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、両脇に裁判員の男性二人(札「裁判員」)が並ぶ。男性の検察官(札「検察官」)が「前科調書(住居侵入・窃盗・放火)」と書かれた書類を掲げ、吹き出し「被告人は前にも同じ手口で放火しています。

証拠能力は、自然的関連性と法律的関連性と証拠禁止の三段階で判断します

ある証拠を事実認定に使えるかは、まずその証拠が要証事実を推認させる必要最小限度の証明力を持つか(自然的関連性)で判断します。これを欠く証拠は、事実認定に役立たないので証拠にできません。次に、証明力はあっても、その証拠を使うと裁判所が不当な偏見や予断を抱いて事実認定を誤るおそれがないか(法律的関連性)を見ます。伝聞証拠や任意性のない自白が排除されるのも、広い意味ではこの次元の問題です。最後に、違法収集証拠のように政策的な理由で証拠にできない証拠禁止があります。前科や悪性格の証拠は、前科も一つの事実であって犯罪事実について様々な面で証拠としての価値を持つので自然的関連性は通常あり、問題になるのは法律的関連性です。

前科証拠は自然的関連性だけで証拠能力が決まらず、実証的根拠の乏しい人格評価で誤った認定に至るおそれがないときに限って使えます

最判平成24年9月7日は、前科証拠は一般的には犯罪事実について様々な面で証拠としての価値(自然的関連性)を有するが、前科、特に同種前科は被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく、そのために事実認定を誤らせるおそれがあり、またこれを回避して同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど、その取調べに付随して争点が拡散するおそれもあるとしました。そのうえで、前科証拠は単に証拠としての価値があるかどうか、言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく、前科証拠によって証明しようとする事実について、実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されるとしました。前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合については、前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって、初めて証拠として採用できるとしました。「顕著な特徴」と「相当程度の類似」はどちらも必要で、前科の犯罪事実に顕著な特徴がなければ、起訴事実とかなり似ていても同種犯罪に一般的な事情の重なりにすぎず、人格評価を経なければ同一性を推認できないからです。住居に侵入して窃盗をした後に放火するという前科の態様はさほど特殊なものではなく顕著な特徴とはいえないとして、この判決は前科証拠の証拠能力を否定しました。この事件自体が裁判員裁判で審理されたもので、判決は要件を満たせば採用できると述べているのですから、裁判員の参加する合議体が審理する事件では前科証拠を一切採用できないという理解は判例と整合しません。前科以外の被告人の類似行為(類似事実)を犯人性の立証に用いる場合にも同じ枠組みが妥当します(最決平成25年2月20日)。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、指し棒で板書を指している。黒板には「前科が働く場面」という見出しの下に表が描かれ、左列に「犯人性の立証」「故意など主観的要素」「常習性・累犯加重」「保釈の判断」「起訴状の記載」、右列に

同種前科で立証してよい場面と、前科が別の役割を果たす場面を区別します

悪性格を介した推認が禁じられるのは、前科から犯罪性向を導き、そこから公訴事実を行ったことを推認するという二重の推認が類型的に事実認定を誤らせるからです。したがって、人格評価を介さずに推認できる場面では同種前科も使えます。判例は、犯罪の客観的要素が他の証拠によって認められる事案で、詐欺の故意という犯罪の主観的要素を被告人の同種前科の内容によって認定しても違法はないとしました。故意・目的・知情のような主観的要素は、他の犯罪事実から直接に推認でき、経験則に基づく合理的な推認として証明力が高いからです。「常習累犯窃盗罪のように前科が構成要件の一部を構成している場合や,常習賭博罪のように構成要件としての常習性を認定する場合でなければ,被告人の同種前科をもって,犯罪事実を立証することは許されない。」という肢は、構成要件の一部や常習性の認定以外にも許される場合があるので誤りです。前科が別の役割を果たす場面も整理しておきます。累犯加重の理由となる前科は刑の法定加重の理由となる事実で犯罪構成事実に準ずるので、証拠書類について305条の取調べを要します(最大決昭和33年2月26日)。「累犯加重の理由となる前科については,適法な証拠調べをした証拠によらなければ認定することはできない。」という肢は正しいです。保釈の許否の判断では、裁量保釈が適当かを審査するに当たり、事案の内容や性質、被告人の経歴・行状・性格等を考察する必要があり、その一資料として勾留状の発せられていない事実や前科を考慮することは禁じられません。「勾留状に記載された事実以外の犯罪事実を考慮してはならず,被告人の前科を考慮することは許されない。」という肢は誤りです。

  • 犯人性(被告人と犯人の同一性)の立証に同種前科を使う前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ起訴事実と相当程度類似し、それ自体で同一性を合理的に推認させるものに限って許されます(最判平成24年9月7日)
  • 故意・目的などの主観的要素の立証に同種前科を使う客観的要素が他の証拠で認められる事案では、人格評価を介さない推認なので許される場合があります
  • 常習累犯窃盗罪や常習賭博罪の常習性の認定前科や前歴が構成要件要素そのものなので、罪となるべき事実として厳格な証明の対象になります
  • 累犯加重の理由となる前科犯罪構成事実に準ずるので、証拠書類は305条の取調べを要します(最大決昭和33年2月26日)
  • 量刑資料としての前科情状に関する事実として考慮できます。余罪との違いは余罪と量刑の語で扱います
  • 保釈の許否の判断勾留状の発せられていない事実や前科を一資料として考慮することは禁じられません
  • 起訴状への前科の記載原則として予断を生じさせる事項で許されませんが、前科が構成要件の一部や犯行の手段方法を構成する場合は許されます(256条6項)

起訴状に前科を記載できるのは、前科が構成要件の一部や犯行の手段方法を構成する場合に限られます

起訴状一本主義(256条6項)の下で、公訴事実中に被告人の前科を記載することは、裁判官に予断を生じさせるおそれのある事項の記載として原則として許されません。ただし、常習累犯窃盗罪のように前科が構成要件の一部を構成している場合や、前科を誇示して相手を畏怖させた恐喝のように前科が犯行の手段方法を構成する場合は、前科の記載が構成要件該当事実の摘示に必要なので許されます。「前科の事実を手段・方法として恐喝したという事実で公訴を提起する場合には、公訴事実中に被告人の前科を記載することも許される。」という肢は正しく、「前科を誇示してした恐喝などのように前科が犯罪の実行行為の一部となっている場合であっても,公訴事実中に前科を記載することは許されない」という肢と、「常習累犯窃盗罪のように前科が構成要件の一部を構成している場合でなければ,起訴状に被告人の前科を記載することは許されない。」という肢は誤りです。被告人がその前科による刑の執行猶予中であっても、予断を与えるおそれは変わらず、執行猶予の取消しは別の手続で行うので、「被告人が同前科による刑の執行猶予中である場合には,その前科を公訴事実中に記載する必要がある。」という肢も誤りです。起訴状の記載の規律全体は起訴状一本主義の語で扱います。

最判平成24年9月7日

前科証拠は、単に証拠としての価値があるかどうか、言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく、前科証拠によって証明しようとする事実について、実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許される

最判平成24年9月7日

前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって、初めて証拠として採用できる

論文ではこう使う

悪性格立証の可否を論じる答案では、まず前科証拠にも自然的関連性はあることを認めたうえで、悪性格を介した二重の推認が実証的根拠の乏しい人格評価によって事実認定を誤らせ、争点を拡散させるおそれがあるという法律的関連性の問題であることを示します。次に、その前科証拠で何を証明しようとしているか(犯人性か、故意などの主観的要素か、常習性か)を特定します。犯人性なら最判平成24年9月7日の「顕著な特徴」と「相当程度の類似」を当てはめ、手口が特殊といえるかを事案の事実で具体的に書きます。主観的要素なら、客観的要素が他の証拠で認められているかを確かめたうえで、人格評価を介さない推認であることを理由に許容します。

試験ではこう問われる

「関連性と前科・悪性格の立証」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢12本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、刑事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

公判手続と公判前整理手続

保釈の種類と権利保釈の除外事由

再審・特別手続・裁判員・少年・刑事補償

裁判員制度の対象事件と合議体・評決

証拠法総論と自白

余罪と量刑・量刑判断の方法