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用語集 / 刑事訴訟法 / 自白の意義と自白法則の根拠

自白の意義と自白法則の根拠とは

じはくのいぎとじはくほうそくのこんきょ

刑事訴訟法 証拠法総論と自白

自白とは、自己の犯罪事実の全部又は主要部分を認める供述をいい、犯罪事実の一部や間接事実を認めるにとどまる不利益な事実の承認(322条1項)とは区別します。自白法則とは、強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑いのある自白を証拠とすることができないという規律(憲法38条2項・319条1項)をいい、その根拠については虚偽排除説・人権擁護説・違法排除説が対立します。

「私がやりました」という自白は、裁判でいちばん重い言葉です。重いからこそ、捜査する側はどうにかして取りたくなり、殴ったり、眠らせなかったり、「認めれば帰してやる」と持ちかけたりする誘惑が生まれます。そうして取られた自白は、本当のことを言っているとは限りませんし、本人の意思を踏みにじって得たものです。そこで憲法と刑事訴訟法は、任意にされたものでない疑いのある自白は、たとえ内容が真実らしくても証拠にしないと決めました。なぜ使えないのかの説明の仕方が三つに分かれ、説明の違いが結論の違いにつながります。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、手元の「供述調書(自白)」と書かれた書類に手を置いている。男性の検察官(札「検察官」)が吹き出し「内容は現場の状況と一致しています。真実の自白です」。被告人席の男性(札「被告人」)が吹

自白とは自己の犯罪事実の全部又は主要部分を認める供述で、一部を認めるだけの不利益な事実の承認とは区別します

自白とは、自己の犯罪事実の全部又は主要部分を認める供述です。起訴された犯罪について有罪であることを自認する供述も含まれます(319条3項)。犯行時刻の頃に現場の道路を通ったことは認めるが犯行は否認するという供述は、自分を犯行の機会に結び付ける点で不利益ですが犯罪事実そのものは認めていないので、自白ではなく不利益な事実の承認です(322条1項)。この区別は補強法則の適用で意味を持ちますが、被告人の供述録取書の証拠能力の入口では両者は同じ扱いです。322条1項本文は、被告人の署名又は押印のある供述録取書を、不利益な事実の承認を内容とするとき、又は特に信用すべき情況の下にされたときに限り証拠にでき、ただし書で不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でなくても319条に準じて任意性に疑いがあれば証拠にできないとします。現場通過を認めた供述録取書と犯行を認めた供述録取書は、どちらも不利益な事実の承認として本文前段の入口に立ち、任意性に疑いがあれば排除されるという同じ枠組みで処理されます。「供述録取書②については,供述録取書③と同じ要件の下で,証拠能力が認められる。」という肢は正しいです。自白を録取した書面にも319条1項は正面から適用されるので、「刑事訴訟法第319条第1項は適用されず,同法第322条第1項ただし書が適用される」という肢は誤りです。被告人が第三者に話した自白をその第三者が法廷で証言する場合は、324条1項が322条を準用しますが、書面ではないので署名押印は要りません。「不利益な事実の承認をした被告人の署名又は押印がないので,これを証拠とすることができない。」という肢は誤りで、「被告人のAに対する供述が任意にされたものであると認めるときは,これを証拠とすることができる。」という肢は正しいです。

任意性に疑いのある自白を証拠にすることは、319条1項に反するだけでなく憲法38条2項にも反します

憲法38条2項は「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」を証拠にできないとし、319条1項はこれに「その他任意にされたものでない疑のある自白」を加えています。文言の上では刑事訴訟法の方が広く見えますが、判例は両者を同じ意味に理解しています。最大判昭和45年11月25日は、偽計によって被疑者が心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には、その自白は任意性に疑いがあるものとして証拠能力を否定すべきであり、これを証拠に採用することは319条1項に違反し、ひいては憲法38条2項にも違反するとしました。「任意にされたものでない疑いのある自白を,犯罪事実を認定するための証拠とすることは,刑事訴訟法第319条第1項の定める自白法則に違反するが,憲法第38条第2項の定める自白法則には違反しない。」という肢は誤りです。憲法違反になるということは、上告理由(405条1号)にもなるということです。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、指し棒で板書を指している。黒板には三つの枠が横に並び、左の枠の見出し「虚偽排除説」の下に「基準:虚偽の自白を誘発するおそれ/批判:真実なら使えるのか」、中央の枠の見出し「人権擁護説」の

虚偽排除説は虚偽の自白を誘発するおそれを基準とし、内容が真実なら許容されるのかという批判を受けます

任意性に疑いのある自白が排除される根拠について、第一の見解は、その内容が虚偽であるおそれがあり誤判防止のため排除されるべきだとする虚偽排除説です。この見解では、証拠にできるかの基準は、取調べの状況に虚偽の自白を誘発するおそれがあったかどうかになります。強制・拷問・脅迫を受けた者や不当に長く身体を拘束された者は苦痛から逃れたい一心で迎合する類型的な危険が高いので、319条1項の列挙事由は虚偽の自白を生む典型的状況を示した例示とみることができます。この見解に対しては、自白の内容が真実と認められれば証拠として許容されることになるのではないかという批判が向けられます。基準が供述者の心理に向くので、派生証拠の扱いも心理とは切れた物証には及びにくいのですが、虚偽排除説によっても、不任意自白に基づいて発見された物は、その物と犯罪事実との関連性が不任意自白によらなければ証明されない場合には証拠として許容されません。そうでなければ、違法な取調べで自白を得れば派生証拠を自由に使えることになり、自白を排除した意味が失われるからです。

人権擁護説は供述の自由の制約を基準とし、主観的心理状態の認定が困難で黙秘権と自白法則を混同しているという批判を受けます

第二の見解は、憲法38条1項の黙秘権の保障を担保するために排除されるべきだとする人権擁護説です。この見解では、基準は供述の自由の制約があったかどうかになり、虚偽排除説と同じく列挙事由は不任意自白の例示とみることができます。この見解に対しては、供述者の主観的な心理状態に関する事実認定が困難であるという批判と、黙秘権を侵害して得られた自白の証拠能力が否定されるのは黙秘権保障の内容そのものであって、黙秘権と自白法則を混同しているという批判が向けられます。黙秘権侵害があれば任意性を検討するまでもなく排除され、黙秘権侵害がなくても任意性に疑いのある自白はあり得るので、両者は次元が違うという指摘です。虚偽排除説と人権擁護説は、いずれも供述者の心理状態に着目する点で共通し、合わせて任意性説と呼ばれます。

違法排除説は取調べの手段の違法性に着目し、列挙事由と合致すると主張しますが、文言上無理があると批判されます

第三の見解は、違法な手続により得られた結果として排除されるべきだとする違法排除説です。この見解では、基準は取調べの方法が違法であったかどうかになり、被告人側から取調官側に視点を移して自白獲得手段自体の違法性に着目するので、319条1項が「強制、拷問又は脅迫」「不当に長く抑留又は拘禁」と自白獲得の手段を列挙していることにも合致すると主張できます。基準を客観化できる利点がありますが、違法の程度の認定が困難であるという批判と、違法な手続により得られた自白の全てが任意にされたものでない疑いがあるとはいえないから、そのような自白が全て319条1項により排除されるとするのであれば規定の文言上無理があるという批判が向けられます。この見解からは、取調官が偽計を用いて得た供述は、手続の違法性の有無と程度で判断され、供述者の主観的な心理状態に影響を及ぼした疑いがある場合に限って排除されるわけではありません。「Ⅲの見解によれば,取調官が偽計を用いて得た供述は,供述者の主観的な心理状態に影響を及ぼした疑いがある場合に限り,証拠能力が否定される。」という記述は、違法排除説の帰結ではなく、心理状態を問う任意性説の発想です。判例は、切違え尋問について偽計による心理的強制と虚偽自白誘発のおそれを理由に任意性を否定しており、任意性説の枠組みで判断していますが、手続の違法を自白の証拠能力に結び付けた下級審裁判例もあります。これらの事案は自白の任意性が争われる類型の語で扱います。

  • 虚偽排除説基準は虚偽の自白を誘発するおそれの有無です。列挙事由は例示です。内容が真実なら許容されることになるのではないかという批判を受けます
  • 人権擁護説基準は供述の自由の制約の有無です。列挙事由は例示です。主観的心理状態の認定が困難、黙秘権と自白法則の混同という批判を受けます
  • 違法排除説基準は取調方法の違法の有無です。手段を列挙する文言と合致します。違法の程度の認定が困難、違法な手続の自白が全て不任意とはいえず文言上無理という批判を受けます
  • 偽計による自白任意性説からは心理的強制と虚偽誘発のおそれで判断し(最大判昭和45年11月25日)、違法排除説からは手段の違法性で判断します
  • 不任意自白に基づいて発見された物虚偽排除説でも、関連性が不任意自白によらなければ証明されない場合は許容されません

刑事訴訟法319条1項

強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。

刑事訴訟法322条1項

被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。

論文ではこう使う

自白の証拠能力を論じる答案は、319条1項の「任意にされたものでない疑のある自白」の意味を確定するところから始めます。虚偽排除と人権擁護を併せた任意性説を採るなら、虚偽の自白を誘発するおそれのある状況か、供述の自由を制約する状況かを規範にし、取調べの態様(約束・偽計・身体拘束の長さ・接見の制限)を当てはめます。違法排除説を採るなら、取調べ手続の違法の重大性を規範にし、違法収集証拠排除法則との役割分担に触れます。どちらを採るにせよ、判例が偽計自白について「心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれ」を基準にしていることを示し、自説との関係を書くと説得力が出ます。

試験ではこう問われる

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