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用語集 / 刑事訴訟法 / 鑑定書

鑑定書(321条4項)とは

かんていしょ

刑事訴訟法 伝聞法則

鑑定書とは、鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したもので、検証調書と同じく作成者が公判期日に証人として真正に作成されたことを供述すれば証拠にできるものです(321条4項)。捜査機関が嘱託した鑑定受託者の鑑定書や私人の専門家の実験報告書にも4項が準用されます。

血液のDNA型、薬物の成分、被告人の精神状態といった専門的な判断は、専門家に鑑定を頼んで書面で報告してもらいます。鑑定書も専門家が法廷の外で書いた供述書なので伝聞証拠ですが、専門的な判断の経過と結論は口頭より書面の方が正確に伝わり、作成者を証人に呼べば吟味もできます。そこで321条4項は検証調書と同じく、作成者が法廷で真正に作成したことを証言すれば証拠にできることにしました。裁判所が命じた鑑定人だけでなく、警察が嘱託した専門家や、弁護側が依頼した私人の専門家の報告書にも同じ扱いが及びます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。証言台に白衣の男性の鑑定人(札「鑑定人」)が立ち、手に「鑑定書(DNA型)」と書かれた書面を持って吹き出し「この鑑定書は私が検査して作成したもので、記載した経過と結果に間違いありません

鑑定書は作成者が証人として真正に作成されたことを供述すれば証拠にでき、証人尋問なしには証拠にできません

321条4項は、鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについて、3項と同様とします。つまり、鑑定人が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときに証拠にできます。鑑定書は、専門的な判断の経過と結論が要証事実(薬物であること、精神状態など)との関係で内容の真実性を問われるので伝聞証拠であり、同意(326条)がない限り4項の要件を満たさなければ証拠能力がありません。「eは,伝聞証拠ではあるが,刑事訴訟法第321条第4項の『鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したもの』に当たるから,鑑定人の証人尋問を経ることなく,証拠とすることができる。」という肢は誤りです。鑑定人は鑑定の前に宣誓をしますが(166条)、宣誓をしていることは4項の証人尋問を省く理由にはなりません。鑑定書を取り調べた後に、鑑定の過程について説明を求めるために鑑定人を証人として尋問することもできます。被告人の精神状態の鑑定書も同じで、「検察官が証拠とすることに同意しない場合でも,被告人が証拠とすることに同意すれば,直ちに証拠とすることができる。」という肢は誤りです。326条1項の同意は検察官及び被告人の双方が要るので、検察官が不同意なら4項の要件を満たさなければなりません。

捜査機関が嘱託した鑑定受託者の鑑定書にも4項が準用されます

4項の「鑑定人」は、文言上は裁判所が命じた鑑定人(165条)を指します。捜査機関が223条1項で鑑定を嘱託した鑑定受託者には宣誓の義務がなく虚偽鑑定罪の制裁もありませんが、最高裁は、捜査機関の嘱託に基づく鑑定書には裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に関する321条4項を準用すべきだとしました(最判昭和28年10月15日)。専門的な判断の経過と結果を書面で伝える点では変わらず、作成者を証人として尋問できるからです。「捜査機関の嘱託に基づき作成された鑑定書には,裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に関する同条第4項が準用される。」という肢は正しく、「司法警察員から鑑定の嘱託を受けた者が作成した鑑定書と,裁判所から鑑定を命じられた鑑定人が作成した鑑定書」は要件に差異のない組合せです。医師の診断書も、専門的知識に基づく判断を記載した書面として4項で扱います。鑑定嘱託の手続と鑑定人・鑑定受託者の違いは別の語で扱います。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、指し棒で板書を指している。黒板の見出し「誰が作った鑑定書か」の下に三つの箱が横に並ぶ。左の箱「裁判所が命じた鑑定人(165条)」の下に「4項そのもの」。中央の箱「捜査機関が嘱託した鑑定

私人の専門家が弁護人の依頼で行った燃焼実験の報告書も、3項ではなく4項に準じて証拠にできます

火災原因の調査・判定について特別の学識経験を持つ私人が、弁護人の依頼を受けて燃焼実験を行い、その考察の結果を報告した書面について、最高裁は、まず321条3項の作成主体は「検察官、検察事務官又は司法警察職員」とされているから私人の書面に3項を準用することはできないとし、そのうえで、その者の学識経験に基づいて実験を行い考察の結果を報告したものであるから、321条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有するとしました(最決平成20年8月27日)。「同人の作成した燃焼実験報告書についても,同項の書面に準ずるものとして,同項により証拠能力を認めることができる。」という3項準用の肢は誤りで、「刑事訴訟法第321条第4項の『鑑定の経過及び結果を記載した書面』に準ずるものとして,同項により証拠能力を有する。」という肢は正しいです。「裁判所から鑑定を命じられた者が作成した鑑定の経過及び結果を記載した書面と同じ要件のもとでこれを証拠とすることができる。」という肢も正しいです。誰が依頼したか(検察側か弁護側か)ではなく、特別の学識経験に基づく判断の報告かどうかで4項への該当性が決まります。

裁判所が命じた鑑定人の鑑定書を当事者の請求なしに取り調べられるかは、見解で結論が分かれます

裁判所が公判廷で鑑定を命じ、鑑定人が鑑定書を作成した場合に、その鑑定書を取り調べるのに当事者の証拠調べ請求が要るかについて、見解Ⅰ(裁判所は当事者の請求を待たずに取り調べる必要がある)と見解Ⅱ(原則として当事者の請求を受ける必要がある)が対立します。見解Ⅰは、裁判所が鑑定書による報告を命じた以上、当然その取調べを予定しているものだと考えます。見解Ⅰからは、弁護人も検察官も取調べ請求をしない旨の意見を述べた場合でも、裁判所は職権で321条4項の手続を履践するために鑑定人を証人として尋問する決定をしなければならないことになります。見解Ⅱは、鑑定書の取調べを当事者の意思にかからせることが証拠調べにおける当事者主義から当然だと考えます。見解Ⅱからは、鑑定を請求した弁護人が取調べ請求をせず検察官が請求する旨の意見を述べた場合、検察官は鑑定書を取り調べてもらうために321条4項の立証手続として鑑定人の証人尋問を請求する必要があることになります。「Ⅱ説は,鑑定書が公判準備における鑑定人の尋問の結果を記載した書面と実質上何ら変わりがないとして,公判準備における証人尋問等の結果を記載した書面の取調べ手続と同様にすべきと考えるものである。」という記述は、公判準備の尋問調書は裁判所が職権で取り調べなければならない(303条)ので、むしろ見解Ⅰの理由づけであって見解Ⅱの説明としては誤りです。「Ⅱ説によれば,鑑定請求をした弁護人が,鑑定書の取調べ請求をする旨の意見を述べた場合,その請求は,鑑定書を取り調べることに同意する旨の意見と解することになる。」という記述も、取調べ請求(298条1項)と326条の同意は別の行為なので誤りです。

4項の整理

  • 対象は鑑定の経過及び結果を記載した書面で、裁判所が命じた鑑定人の鑑定書、捜査機関が嘱託した鑑定受託者の鑑定書(準用)、私人の専門家の実験報告書(準用)、医師の診断書を含みます
  • 要件は作成者が証人として真正作成を供述することで、検証調書と同じです。宣誓や専門性は証人尋問を省く理由になりません
  • 同意(326条)があれば4項の手続は要りませんが、同意は検察官と被告人の双方が必要です
  • 鑑定の手続(鑑定人の宣誓・鑑定留置・鑑定処分)は別の語で扱います

刑事訴訟法321条4項

鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。

論文ではこう使う

鑑定書の証拠能力を論じるときは、鑑定書が鑑定人の供述書として伝聞証拠に当たることを確認したうえで、321条4項を挙げ、作成者の真正作成供述で足りることを述べます。鑑定受託者の鑑定書なら最判昭和28年10月15日の準用を、弁護側が依頼した私人の実験報告書なら最決平成20年8月27日を引いて、3項の作成主体の限定から3項準用を否定しつつ4項に準ずるとする二段の論理を再現します。鑑定書の中に被告人や関係者の供述が書き取られている部分があれば、検証調書の場合と同じく、その部分は322条・321条1項で別に検討することを忘れないようにします。

試験ではこう問われる

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