鑑定留置(167条・224条)とは
かんていりゅうち
鑑定留置とは、被告人又は被疑者の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときに、期間を定めて病院その他の相当な場所に留置する処分です。裁判所は鑑定留置状を発して行い(刑事訴訟法167条)、捜査機関の嘱託鑑定では検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により裁判官が鑑定留置状を発します(224条)。
被疑者に責任能力があるかを精神科の医師に調べてもらうには、面接を重ね、数週間にわたって観察することが要ります。留置施設では観察ができず、かといって病院に入れておくには身体を拘束する根拠が要ります。そこで刑事訴訟法は、心神や身体の鑑定のために、期間を定めて病院などに留置する鑑定留置を設け、裁判所や裁判官が鑑定留置状を発して行うことにしました。身体拘束である点は勾留と同じなので勾留の規定が広く準用されますが、鑑定という目的から保釈だけは認められません。
嘱託鑑定でも検察官等の請求で裁判官が鑑定留置状を発しますが、嘱託したからといって必ず請求するわけではありません
裁判所は、被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができ、この留置は鑑定留置状を発してしなければなりません(167条1項・2項)。捜査機関が鑑定を嘱託する場合にこの処分を必要とするときは、検察官、検察事務官又は司法警察員が裁判官にその処分を請求し、裁判官は相当と認めるときは167条の場合に準じて鑑定留置状を発します(224条1項・2項)。「鑑定人による鑑定を実施する際,必要があるときは,被告人を鑑定留置することができるが,鑑定受託者による鑑定を実施する際にも,同様に,被疑者を鑑定留置することができる」という肢は正しいです。請求するのは留置を必要とするときです。検察官が医師に被疑者の精神状態の鑑定を嘱託した場合でも、留置の必要がなければ請求しなくてよく、「裁判官に被疑者の鑑定留置を請求しなければならない」という肢は誤りです。留置の期間は、必要があるときは延長し又は短縮することができます(167条4項)。「その期間を延長することはできない」という肢は誤りです。鑑定留置状で留置されていても、医師が血液検査などの身体検査を強制的に行うには別に裁判官の許可(鑑定処分許可状)が要り、「裁判官の許可がなくても,…必要な身体検査を強制的に実施することができる」という肢は誤りです(鑑定嘱託と鑑定処分許可状の語)。
鑑定留置中は勾留の執行が停止したものとされ、勾留の規定が準用されますが保釈はできません
勾留に関する規定は、特別の定めのある場合を除いて鑑定留置に準用されますが、保釈に関する規定は準用されません(167条5項)。心神や身体の鑑定には継続的な観察が要るので、留置を解く保釈は性質上なじまないからです。「精神鑑定のため鑑定留置中の被告人についても,適当と認めるときは,職権で保釈を許すことができる」という肢は誤りです。勾留中の被告人に鑑定留置状が執行されたときは、留置されている間、勾留はその執行を停止されたものとされ、留置が取り消され又は期間が満了したときは勾留の執行停止の取消しの規定が準用されます(167条の2)。この規定は嘱託鑑定の鑑定留置にも準用されます(224条2項)。
鑑定留置中の被疑者も弁護人と立会人なく接見でき、留置の期間は未決勾留日数に算入されます
鑑定留置も身体の拘束なので、留置されている被疑者・被告人は、弁護人又は弁護人となろうとする者と立会人なくして接見することができます(39条1項)。「鑑定留置されている被疑者は,弁護人又は弁護人となろうとする者と立会人なくして接見することができる」という肢は正しいです。鑑定留置の期間は、未決勾留日数の算入については勾留とみなされます(167条6項)。
- 誰が裁判所(被告人。167条)/裁判官(被疑者。検察官・検察事務官・司法警察員の請求。224条)
- 令状鑑定留置状。期間を定め、延長・短縮できる
- 勾留との関係勾留の規定を準用。勾留中に執行されると勾留は執行停止(167条の2)。未決勾留日数に算入
- 保釈できない(167条5項ただし書)
- 接見弁護人と立会人なく接見できる(39条1項)
- 身体検査鑑定留置状では強制できない。別に鑑定処分許可状が要る
刑事訴訟法167条1項
被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。
刑事訴訟法167条5項
勾留に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、第一項の留置についてこれを準用する。但し、保釈に関する規定は、この限りでない。
刑事訴訟法224条1項
前条第一項の規定により鑑定を嘱託する場合において第百六十七条第一項に規定する処分を必要とするときは、検察官、検察事務官又は司法警察員は、裁判官にその処分を請求しなければならない。
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