司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 刑事訴訟法 / 捜索の範囲

捜索の範囲(場所の令状で捜索できる物・身体・搬入物)とは

そうさくのはんい

刑事訴訟法 捜索・差押え・検証・鑑定

捜索の範囲とは、場所を捜索すべき場所とする捜索差押許可状によって、その場所にあるどの物や人の身体まで捜索できるかの問題です。判例は、場所に対する令状の効力はその場所の管理権の及ぶ範囲内にある物に及ぶとして、居合わせた者が携帯するバッグや執行中に配達された荷物も捜索できるとしています。

捜索すべき場所を「甲方居室」とする令状で部屋を調べていたら、机の上に鍵のかかった金庫があり、庭には甲の車が停まっていて、そこへ宅配便の配達員が甲宛ての小包を届けに来たとします。令状には部屋としか書いてありませんが、金庫も車も小包も調べられないのでは、令状の意味がありません。裁判官は、その部屋を管理する人の支配の下にある物まで含めて捜索の必要を審査しているので、場所の令状の効力は、その場所の管理権が及ぶ範囲の物に及びます。これが捜索の範囲の考え方です。

被疑者の自宅の居間の場面。先生が警察官役(札「司法警察員」)で捜索中、玄関で宅配便の配達員の男性(札「配達員」)から小包を受け取ったばかりの男性(札「甲」)の方を向いている。先生の手に「捜索差押許可状 捜索すべき場所 甲方居室」と読める令状

場所の令状で、その場所にある金庫や敷地内の自動車など、同じ管理権の下にある物を捜索できます

捜索差押許可状に捜索すべき場所を記載させる(219条1項)のは、裁判官の審査で捜索の範囲を画し、一般的・探索的な捜索を防ぐためです。捜索すべき場所は、通常、管理権が一つに及ぶ空間を単位として特定されます。そうすると、裁判官はその場所の管理権に服して内部にある物も捜索されることを前提に令状を発しているので、場所の令状でその場所にある物を捜索するのに、物ごとの令状は要りません。会社事務所を捜索すべき場所とする令状で、「同事務所にある金庫内を捜索することはできない」という肢は誤りです。居宅を捜索場所とする令状は、同一の管理権に属する付属地や付属物にも及ぶので、差し押さえるべき物を農薬とする甲方に対する令状で、「甲方の敷地内に甲所有の自動車があったので,その車内を捜索すること」は許されます。

居合わせた者が携帯するバッグも捜索でき、着衣やポケットの中を捜索して差し押さえるのに身体検査令状は要りません

判例は、被疑者の内妻と被疑者が居住するマンションの居室を捜索場所とする令状で捜索中、同室にいた被疑者が携帯するボストンバッグの中を捜索した事案で、この許可状に基づいてボストンバッグについても捜索することができるとしました(最決平成6年9月8日)。居住者がその場所で携帯している物は、場所の管理権の及ぶ物として令状の効力が及びます。これに対して人の身体そのものは場所の令状では捜索できず、被疑者以外の者の身体を捜索するには押収すべき物の存在を認めるに足りる状況が要ります(222条1項・102条2項)。他方、着衣の中を調べて物を取り出す行為は、身体の状態を認識する検証ではなく、証拠物を探す捜索です。捜索の対象としての身体には着衣を含むので、捜索差押許可状で足り、身体検査令状は要りません。「人の着用している下着の中を捜索して物を差し押さえるためには,捜索差押許可状によれば足り,併せて身体検査令状の発付を受ける必要はない」という肢は正しく、ズボンのポケットの中を捜索して差し押さえるのに「捜索差押許可状のほかに、身体検査令状の発付を受ける必要がある」という肢は誤りです。身体検査令状が要るのは検証としての身体検査で、身体検査の語で扱います。

執行中に配達されて受領した荷物にも令状の効力が及び、令状審査の時点にあった物に限られません

覚醒剤取締法違反の被疑事件で、捜索すべき場所を被疑者方居室、差し押さえるべき物を覚醒剤等とする令状に基づいて被疑者立会いの下で捜索中、宅配便業者が被疑者宛ての荷物を配達し、被疑者が受領しました。判例は、警察官はこのような荷物についても許可状に基づき捜索できるとして、令状の効力は呈示後に搬入された物には及ばないという主張を退けました(最決平成19年2月8日)。居室で受領した荷物に対する利益は居室に対する利益に包み込まれており、捜索の開始時点以後にその場所に来た物だからといって除く理由がないからです。「立会人である甲が受領した荷物について捜索すること」は差し押さえるべき物を覚醒剤とする甲方に対する令状で許され、甲の承諾なく「開封して中身を確認することはできない」という肢、差し押さえられる物は「裁判官の令状審査の時点で捜索場所に存在していた物に限られる」という肢、「呈示後に甲宅に搬入された物品には及ばないため、当該小包を開封したことは違法である」という肢はいずれも誤りです。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ。黒板に大きな四角「甲方居室(管理権の及ぶ範囲)」が描かれ、その中に小さく「金庫」「敷地内の自動車」「居住者が携帯するバッグ」「配達された荷物」の札が入っている。四角の外に「
  • 金庫・押入れ・引き出し捜索できる(場所の管理権に服する物)
  • 敷地内の自動車・物置捜索できる(同一の管理権に属する付属地・付属物)
  • 居合わせた居住者が携帯するバッグ捜索できる(最決平成6年9月8日)
  • 執行中に配達され受領した荷物捜索できる。令状審査時にあった物に限られない(最決平成19年2月8日)
  • 居合わせた者の身体そのもの場所の令状では捜索できない。被疑者以外の者の身体は押収すべき物の存在を認めるに足りる状況が要る(102条2項)
  • 着衣・ポケット・下着の中の捜索捜索差押許可状で足り、身体検査令状は要らない
  • 採尿場所への連行場所の令状ではできない。強制採尿のための捜索差押許可状の効力による(強制採尿の語)

逮捕に伴う捜索の「逮捕の現場」の範囲と、場所の令状で採尿場所へ連行できないことは別の語で扱います

場所の令状でその場所にいる人を採尿に適する最寄りの場所へ連れて行くことはできません。被疑者を連行できるのは強制採尿のための捜索差押許可状の効力としてであって、差し押さえるべき物を覚醒剤とする甲方に対する令状には、その前提がないからです。逮捕に伴う無令状の捜索について「逮捕の現場」がどこまでかは、逮捕に伴う令状によらない捜索・差押えの語で扱います。差し押さえるべき物に当たるかどうかは、差押えの対象と関連性の語で扱います。

刑事訴訟法219条1項

前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、提供させるべき電磁的記録、提供させるべき者及び提供の方法、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、捜索若しくは検証に着手し、又は電磁的記録提供命令をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

刑事訴訟法102条2項

被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

論文ではこう使う

論文では、場所の令状で居合わせた第三者の持ち物や身体を捜索した事案が出ます。219条1項が捜索すべき場所の記載を求める趣旨(裁判官の審査による範囲の画定と一般的・探索的捜索の禁止)から、場所の令状の効力はその場所の管理権の及ぶ範囲の物に及ぶという規範を立て、その物が場所の管理権に服しているか(居住者の携帯物か、来訪者の持ち物か、執行中に受領した荷物か)を当てはめます。第三者の持ち物で管理権が別だといえる場合は、102条2項の押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があるかを別に検討し、身体そのものに及ぶときは捜索差押許可状の対象としての身体か、検証としての身体検査かを区別して書きます。

試験ではこう問われる

「捜索の範囲」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型6件と関係する過去問の肢8本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、刑事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語