司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 刑事訴訟法 / 身体検査

身体検査(検証としての身体検査・身体検査令状・鑑定処分としての身体検査・女子の立会い・拘束中の指紋と写真)とは

しんたいけんさ

刑事訴訟法 捜索・差押え・検証・鑑定

身体検査とは、人の身体の状態や特徴を五官の作用によって認識する検証の一種で、捜査機関が行うには身体検査令状によらなければなりません(刑事訴訟法218条1項後段)。これとは別に、鑑定受託者が鑑定処分許可状により行う鑑定処分としての身体検査(225条・168条1項)と、捜索差押許可状による着衣の中の捜索があり、三つを区別します。

逮捕された人の指紋を取り、顔写真を撮ることは、令状なしに行われています。ところが同じ人の服を脱がせて体の傷を調べるとなると、裁判官の身体検査令状が要ります。人の体を調べることは名誉や羞恥心に深く関わるので、刑事訴訟法は身体の検査を検証の中でも特別扱いにして専用の令状を求め、裁判官が条件を付けられるようにし、女子なら医師か成年の女子の立会いを義務付けました。一方、着衣のポケットから物を探すのは捜索で、医師に体を調べてもらうのは鑑定処分としての身体検査で、それぞれ別の令状によります。

警察署の鑑識室の場面。先生が警察官役(札「司法警察員」)で、椅子に座る着衣の男性(札「逮捕された被疑者」)の指を指紋台紙に押し当てている。横にカメラが三脚で立ち、壁に身長の目盛り。先生の吹き出し「逮捕されている被疑者の指紋と写真は、裸にしな

捜査機関の身体検査は身体検査令状によりますが、対象は被疑者に限られず、裁判官は条件を付けることができます

検察官、検察事務官又は司法警察職員が検証として身体の検査をするには、身体検査令状によらなければなりません(218条1項後段)。請求するには、身体の検査を必要とする理由と、検査を受ける者の性別、健康状態その他の事項を示さなければならず(218条8項。出題当時は5項)、裁判官は身体の検査に関し適当と認める条件を付することができます(218条9項。出題当時は6項)。対象は被疑者に限られません。被害者や目撃者など被疑者以外の者の身体も、必要があれば身体検査令状で検査できます。「身体検査令状により身体の検査をすることができる対象は,被疑者に限られており,被疑者以外の者の身体の検査をすることはできない」という肢は誤りです。身体の検査を拒む者については、裁判所の規定が準用され、過料や刑を科しても効果がないときはそのまま身体の検査を行う直接強制ができます(139条、222条1項)。過料や費用賠償は捜査機関が裁判所に請求します(222条7項)。条件を付することができるという規定は、条件の付加が強制処分の範囲や程度を減縮させる方向に作用するので、身体検査令状以外の検証許可状にも準用でき(最決平成11年12月16日)、強制採尿のための捜索差押許可状にも準用されます(最決昭和55年10月23日)。

身体を拘束されている被疑者の指紋・足型・身長体重・写真は、裸にしない限り令状なしに取れます

身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、身体検査令状によることを要しません(218条4項。出題当時は3項でした)。逮捕や勾留で適法に身体を拘束されている以上、着衣のまま同一性を確認する程度の処分は拘束に伴って受忍すべきものだからです。「身体の拘束を受けている被疑者の顔写真を撮影するには,身体検査令状による必要はない」という肢は正しく、逮捕した被疑者の指紋を採取し顔写真を撮影するのに「身体検査令状の発付を受ける必要がある」という肢と、指紋や足型の採取は「被疑者を裸にしない場合であっても,身体検査令状によらなければならない」という肢は誤りです。令状を必要とする処分の個数を数える問題でも、逮捕された被疑者の指紋採取は令状不要の側です。限度は「裸にしない限り」です。身体の拘束を受けていても、被疑者を全裸にして写真撮影するには身体検査令状が要り、「身体検査令状の発付を受けることなく,被疑者を全裸にしてその身体を写真撮影することができる」という肢は誤りです。身体を拘束されていない被疑者の指紋や写真は、同意がなければ令状が要ります。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ。黒板に三列の表。列の見出し「検証としての身体検査」「鑑定処分としての身体検査」「着衣の中の捜索」。各列の下に順に「身体検査令状/直接強制できる/女子は医師か成年の女子の立会

女子の身体を検査するときは、令状の条件の有無にかかわらず、医師又は成年の女子を立ち会わせなければなりません

身体の検査については、受ける者の性別、健康状態その他の事情を考慮したうえで方法に注意し、名誉を害しないように注意しなければならず、女子の身体を検査する場合には医師又は成年の女子を立ち会わせなければなりません(131条)。この規定は捜査機関の検証に準用されています(222条1項)。立会いは法律が一律に課した義務で、令状に条件として書かれているかどうかによりません。「身体検査令状により女子の身体を検査する場合には,医師又は成年の女子をこれに立ち会わせなければならない」という肢と、「裁判所が女子の身体を検査する場合でも、捜査機関が身体検査令状により女子の身体を検査する場合と同じく、医師又は成年の女子をこれに立ち会わせる必要がある」という肢は正しく、「医師又は成年の女子を立ち会わせる旨の条件が付されていない限り,これらの者を立ち会わせる必要はない」という肢は誤りです。鑑定人や鑑定受託者が行う身体検査にも131条が準用されます(168条6項・225条4項)。女子の身体の捜索に成年の女子を立ち会わせる規定(115条)は捜索についての別の定めです。

鑑定処分としての身体検査は鑑定処分許可状によりますが、鑑定受託者は拒まれても直接強制できず、着衣の中の捜索は捜索差押許可状で足ります

医師に血液検査や体内の状態の診断をしてもらうように、専門的な知識を使って身体を調べるのは鑑定処分としての身体検査です。裁判所の鑑定人は裁判所の許可状を得て身体を検査でき、拒まれたときは裁判官に身体の検査を請求できます(168条1項・172条1項)。捜査機関から嘱託を受けた鑑定受託者は、検察官・検察事務官・司法警察員の請求により裁判官が発する鑑定処分許可状で身体を検査できますが(225条)、準用されるのは168条2項から4項までと6項だけで、172条も直接強制を定める139条も準用されません。したがって鑑定受託者は、身体検査を拒む者に対して直接強制として身体検査を行うことはできず、裁判官に身体検査を請求することもできません。「鑑定処分許可状に基づき,身体検査を拒否する者に対して,直接強制として身体検査を行うことができる」という肢は誤りで、「鑑定受託者は,そのような請求をなし得ない」という肢は正しいです。鑑定留置状により病院に留置されている被疑者でも、「裁判官の許可がなくても,血液を採取した上で血液検査を実施するなどの必要な身体検査を強制的に実施することができる」という肢は誤りです。もっとも、「被疑者に対する鑑定及び身体検査は,直接強制を許容する規定を欠くため,甲の身体に直接強制を加えて血液を採取することは許されない」という肢は誤りで、実務では直接強制のできる身体検査令状を鑑定処分許可状と併せて得ることで採血を行います(強制採血の語)。他方、着衣のポケットや下着の中を調べて物を取り出すのは身体の状態を認識する身体検査ではなく捜索なので、捜索差押許可状で足り、身体検査令状は要りません。「捜索差押許可状によれば足り,併せて身体検査令状の発付を受ける必要はない」という肢は正しく、「捜索差押許可状のほかに、身体検査令状の発付を受ける必要がある」という肢は誤りです。尿を強制的に採取するのは捜索・差押えの性質を持つので、「身体検査令状による必要がある」という肢は誤りで、条件を付した捜索差押許可状によります(強制採尿の語)。

  • 検証としての身体検査(捜査機関)身体検査令状(218条1項後段)。対象は被疑者に限らない。拒めば直接強制できる(139条の準用)。女子は医師か成年の女子の立会い(131条2項)
  • 拘束中の被疑者の指紋・足型・身長体重・写真裸にしない限り令状不要(218条4項)。全裸の撮影は身体検査令状
  • 鑑定処分としての身体検査(鑑定受託者)鑑定処分許可状(225条)。直接強制も裁判官への身体検査の請求もできない。鑑定人は172条で請求できる
  • 着衣・ポケット・下着の中の捜索捜索差押許可状で足りる(102条・222条1項)
  • 強制採尿条件を付した捜索差押許可状(最決昭和55年10月23日)
  • 強制採血身体検査令状と鑑定処分許可状の併用が実務

刑事訴訟法218条4項

身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。

刑事訴訟法131条2項

女子の身体を検査する場合には、医師又は成年の女子をこれに立ち会わせなければならない。

刑事訴訟法172条1項

身体の検査を受ける者が、鑑定人の第百六十八条第一項の規定によつてする身体の検査を拒んだ場合には、鑑定人は、裁判官にその者の身体の検査を請求することができる。

論文ではこう使う

論文では、強制採尿や強制採血の令状の種類を論じる前提として、身体への処分の三つの区別を短く示します。身体の状態を認識する処分は検証としての身体検査で身体検査令状、証拠物を探して取る処分は捜索で捜索差押許可状、専門知識で身体を調べる処分は鑑定処分で鑑定処分許可状と整理し、問題の処分がどれに当たるかを性質から決めます。そのうえで、鑑定処分許可状には直接強制の規定が準用されないこと、身体検査令状には準用があることを示し、採血では併用が必要になる筋につなげます。拘束中の指紋・写真の無令状の例外(218条4項)と裸にしない限度にも触れると、事例の処理が漏れません。

試験ではこう問われる

「身体検査」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型7件と関係する過去問の肢25本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、刑事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語