エックス線検査(宅配便荷物)とは
えっくすせんけんさ
エックス線検査とは、宅配便業者の運送過程下にある荷物について、捜査機関が荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察する捜査手法です。判例は、射影によって内容物の品目等を相当程度具体的に特定できるので、検証としての性質を有する強制処分に当たり、検証許可状が要るとしました(最決平成21年9月28日)。
覚醒剤の密売人のところへ繰り返し宅配便が届いているとき、警察が配送センターで荷物を借りて、開けずにエックス線で中を透かして見るとします。箱は傷つかず、荷物はそのまま届くので、荷送人も荷受人も気づきません。それでも最高裁は、これを令状なしで行うことを許しませんでした。透かして見れば、中身の形や材質だけでなく何が入っているかまでかなり分かり、人が荷物の中身について持っているプライバシーを大きく侵すからです。業者が承諾しても、中身のプライバシーを持つのは業者ではありません。
エックス線検査は、射影から内容物の品目まで相当程度特定できるので、検証としての性質を有する強制処分です
最決平成21年9月28日は、覚醒剤の密売に関与している疑いのある者に宛てて宅配便の荷物が繰り返し送られている状況を把握した警察が、宅配便業者の営業所で業者の承諾を得て荷物を借り受け、荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察・撮影する検査を複数回行った事案です。最高裁は、「その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上、内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能であって、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たる」としました。「荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たる」という肢は正しいです。「荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、その荷物に外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察した行為は、任意処分として許される」という肢は誤りです。強制処分の定義のうち、意思の制圧は荷送人・荷受人の合理的に推認される意思に反することで、重要な権利利益の制約は内容物に対するプライバシーの侵害で満たされます。有形力を使わず、荷物を開けていなくても強制処分になる典型例です。
業者の承諾があっても、不審な荷物に限っても、検証許可状なしで行えば違法です
プライバシーの主体は荷送人と荷受人であって、荷物を預かっている宅配便業者ではありません。だから業者が荷物を貸すことを承諾しても、権利者の同意にはなりません。検査の対象を不審な荷物に限っても、一つ一つの検査が内容物のプライバシーを侵害することに変わりはなく、絞り込みは強制処分該当性を左右しません。「エックス線の射影により内容物の形状や材質をうかがい知ることができるにとどまるから、プライバシー等の侵害の程度が大きいとはいえない上、占有者である宅配便業者の承諾を得て行っているものであるから、検査対象を不審な宅配便荷物に限定して行う場合には、任意捜査として許容される」という肢は誤りです。判例は、形状や材質にとどまらず品目等まで相当程度具体的に特定できる点を重視しています。「エックス線を照射して内容物の射影を観察するには、検証許可状を必要とする」という肢は正しいです。
この事案の検査は違法とされましたが、重大な違法ではないとして押収物の証拠能力は否定されませんでした
判例の事案では検証許可状の発付を受けることが可能だったのに受けなかったので、エックス線検査は違法とされました。もっとも、検査の結果を疎明資料の一部として捜索差押許可状の発付を受け、その令状で押収した覚醒剤などの証拠能力は否定されませんでした。荷物そのものを開披したわけではなく、警察官に令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があったとはいえず、検査の結果以外の疎明資料だけでも令状を得られる状況にあったことなどから、違法の程度が重大とまではいえないとされたからです。違法な捜査で得た資料を基に令状を得て押収した証拠の扱いは、違法収集証拠排除法則の語で扱います。
- 処分の性質検証としての性質を有する強制処分です(最決平成21年9月28日)
- 要る令状検証許可状(218条1項)です
- 業者の承諾プライバシーの主体は荷送人・荷受人なので、業者の承諾があっても令状は要ります
- 不審な荷物への限定限定しても強制処分であることは変わりません
- 侵害の中身形状・材質にとどまらず品目等を相当程度具体的に特定できる点が決め手です
最決平成21年9月28日
その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上、内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能であって、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たる
論文ではこう使う
エックス線検査は、強制処分の意義の当てはめの一例として書きます。有形力の行使も荷物の開披もない点を指摘したうえで、判例の定義に従い、荷送人・荷受人の合理的に推認される意思に反すること、内容物に対するプライバシーという重要な権利利益を実質的に侵害することを事実から示し、検証としての性質を有する強制処分だと結論づけます。業者の承諾や対象の限定は結論を変えないことを一言添え、検証許可状なしで行えば違法だとしたうえで、その検査結果を疎明資料とした令状による押収物の証拠能力へ論点を進めます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。