接見指定(39条3項:「捜査のため必要があるとき」・初回接見・余罪・面会接見・書面指定・準抗告)とは
せっけんしてい
接見指定とは、検察官、検察事務官又は司法警察職員が、捜査のため必要があるときに、公訴の提起前に限り、被疑者と弁護人等との接見又は書類・物の授受について、その日時、場所及び時間を指定する処分です(刑事訴訟法39条3項)。指定は、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはなりません。
弁護士が警察署に駆けつけて「今すぐ被疑者に会わせてほしい」と言ったとき、ちょうど取調べの最中だったら、捜査側は「取調べが終わる午後3時に来てください」と日時を指定できます。これが接見指定です。接見交通権は憲法に由来する大切な権利ですが、身体を拘束された被疑者の取調べも捜査に欠かせないので、両者をぶつからないように調整する仕組みです。ただし、指定できるのは捜査に本当に支障が出る場合だけで、しかも起訴前に限られ、弁護側が防御の準備をする権利を不当に奪ってはいけません。
「捜査のため必要があるとき」は、接見を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られます
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、接見又は授受の日時、場所及び時間を指定することができますが、その指定は被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはなりません(刑事訴訟法39条3項)。大法廷判決は、この制度を憲法34条に反しないとしたうえで、「捜査のため必要があるとき」とは、接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ、要件が備わって指定をするときも、捜査機関は弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないとしました(最大判平成11年3月24日)。そして、弁護人等から申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に取調べ等をする確実な予定があって、申出に沿った接見等を認めたのでは取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として顕著な支障が生ずる場合に当たるとしました。この判示をそのまま書いた肢は正しいです。現に身柄を用いていなくても、間近い時に実況見分を行う確実な予定があればこれに当たるので、「現に被疑者の身柄を用いていない場合は,…「捜査のため必要があるとき」に当たることはない」という肢は誤りです。「逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあることから,検察官は,第1回の公判期日まで,…指定することができる」という肢は、要件も時期も違うので誤りです。
逮捕直後の初回接見には特別の配慮が要りますが、顕著な支障があれば指定ができないわけではありません
判例は、逮捕直後の初回の接見は、弁護人の選任を目的とし、取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、憲法上の保障の出発点を成すものであるから、速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要であるとし、指定の要件が備わる場合でも、捜査機関は弁護人等と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、可能なときは、引致後直ちに行うべき手続を終えた後、たとえ短時間でも接見を認めるようにすべきだとしました(最判平成12年6月13日)。この判例は配慮義務を課したものであって、初回接見には指定ができないとしたものではありません。したがって、「捜査機関による接見の日時,場所及び時間の指定が許されることはない」という肢と、「「捜査のため必要があるとき」に当たる場合であっても,接見の日時等を指定することが許されることはない」という肢は誤りです。逆に、「被疑者が取調べ中であっても,即座に取調べを中断して,接見させなければならない」という肢と、「捜査に顕著な支障が生じる場合であっても、直ちに取調べを中断して、接見させなければならない」という肢も誤りです。逮捕当日の初回接見の事例で「指定権を行使することはできない」とする肢も誤りです。
起訴後は、被告人が余罪で逮捕・勾留されている場合に限り、被告事件の防御権を不当に制限しない範囲で指定できます
接見指定は「公訴の提起前に限り」できるので、起訴された被告事件だけで勾留されている被告人と弁護人との接見は指定できません。検察官の権限として認められていないものを数える問題で、「起訴された被告事件のみで勾留されている被告人と弁護人との接見に関し,その日時,場所及び時間を指定すること」は認められていないものに当たり、起訴前は認められるが起訴後は認められないものを選ぶ問題で、「検察官が弁護人に対して行う接見の日時の指定」はこれに当たります。判例は、起訴後勾留中の被告人が余罪の被疑者ではあるがその余罪について逮捕も勾留もされていない事案で、公訴の提起後は余罪について捜査の必要がある場合でも、検察官等は被告事件の弁護人又は弁護人となろうとする者に対して指定権を行使できないとしました(最決昭和41年7月26日)。起訴後に余罪を任意で取り調べているだけの段階では指定できず、「5月5日の弁護人Aによる接見について,指定権を行使することができる場合がある」という肢は誤りです。これに対し、同一人について被告事件の勾留と余罪である被疑事件の逮捕・勾留とが競合している場合には、検察官等は、被告事件について防御権の不当な制限にわたらない限り、39条3項の指定権を行使することができます(最決昭和55年4月28日)。この判示をそのまま書いた肢は正しく、被告事件についてだけ弁護人に選任された者に対しても同じです(最決平成13年2月7日)。したがって、余罪で勾留された後の「5月14日の弁護人Aによる接見について,指定権を行使することはできない」という肢は誤りで、余罪の弁護人Bによる「5月20日の…接見について,指定権を行使することができる場合がある」という肢は正しいです。余罪で身体を拘束される前の、余罪の弁護人Bによる接見は、身体拘束のない被疑者との接見と同じなので、「5月5日の弁護人Bによる接見について,指定権を行使することはできない」という肢は正しいです。
- 起訴前・被疑事件で身体拘束中捜査に顕著な支障が生ずる場合に指定できる(39条3項)
- 起訴後・被告事件だけで勾留中(余罪は任意捜査)指定できない(最決昭和41年7月26日)
- 起訴後・余罪で逮捕又は勾留も競合被告事件の防御権を不当に制限しない限り指定できる。被告事件だけの弁護人に対しても同じ(最決昭和55年4月28日・最決平成13年2月7日)
- 余罪についてまだ身体拘束がないときの余罪の弁護人身体拘束のない被疑者との接見なので指定できない
権限のある捜査官に連絡する間の合理的な待機や書面による指定は許され、設備がなくても面会接見への配慮義務があり、指定には準抗告ができます
申出を受けた者が指定の権限のある捜査官でないときは、権限のある捜査官に連絡してその具体的措置について指示を受ける手続を採る必要があり、そのために弁護人等が待機することになり接見が遅れても、合理的な範囲内にとどまる限り許されます(若松事件、最判平成3年5月31日)。「弁護人を待機させることは,合理的な範囲内にとどまる限り許される」という肢は正しいです。指定の方法は捜査機関の合理的裁量に委ねられ、電話などの口頭によるほか、弁護人等に対する書面(接見指定書)の交付による方法も許されますが、著しく合理性を欠き迅速かつ円滑な接見交通が害されるようなときは違法です(浅井事件、最判平成3年5月10日)。「弁護人に対する書面の交付による方法は許されない」という肢は誤りです。検察庁の庁舎内に、逃亡や罪証隠滅を防げて戒護上の支障が生じない設備のある部屋等がないときは、接見の申出を拒んでも違法ではありませんが、弁護人等がなお庁舎内での即時の接見を求め、その必要性が認められる場合には、検察官は、立会人のいる部屋での短時間の接見のように秘密交通権が十分に保障されない態様の短時間の接見でもよいかどうか弁護人等の意向を確かめ、差し支えないとの意向が示されたときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務があります(最判平成17年4月19日)。この判示をそのまま書いた肢は正しいです。検察官・検察事務官のした接見指定に不服がある者は、その検察官等が所属する検察庁の対応する裁判所に、司法警察職員のした指定については職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に、処分の取消し又は変更を請求できます(430条1項・2項)。「裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することはできない」という肢は誤りで、「請求することができる」という肢は正しく、準抗告の対象を選ぶ問題でも「検察官がした,被疑者とその弁護人との接見の日時の指定」は対象に入ります。
刑事訴訟法39条3項
検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。
最大判平成11年3月24日
「捜査のため必要があるとき」とは、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ、右要件が具備され、接見等の日時等の指定をする場合には、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないものと解すべきである。
論文ではこう使う
接見指定の適法性は、①接見交通権が憲法34条に由来する重要な固有権であることを確認し、②39条3項の「捜査のため必要があるとき」を大法廷判決の規範(取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限る。現に取調べ中・立会い中・間近い確実な予定があれば原則として当たる)で判断し、③要件があっても弁護人等と協議してできる限り速やかな日時を指定する義務と、初回接見なら短時間でも即時又は近接した時点の接見を認める配慮義務を果たしたかを検討する、の順で書きます。起訴後の事案では、余罪で逮捕・勾留されているか、被告事件だけの勾留かで分け、被告事件の防御権の不当な制限に当たらないかを加えます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。