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用語集 / 刑事訴訟法 / 弁護人選任権

弁護人選任権(選任権者・独立選任・方式・時期・審級・氏名のない選任届)とは

べんごにんせんにんけん

刑事訴訟法 取調べ・被疑者の防御

弁護人選任権とは、被告人又は被疑者が、いつでも自分の弁護人を選任できる権利です(刑事訴訟法30条1項)。法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹も、本人とは独立して弁護人を選任することができます(同条2項)。

逮捕された人の妻が、知り合いの弁護士に「夫の弁護をお願いします」と頼みに行く場面を考えてください。本人は留置施設の中で外と連絡が取りにくいので、家族が代わりに弁護人を頼めるようになっています。しかもそれは本人の意思にかかわらずでき、本人があとから別の弁護士を頼むこともできます。弁護人をつけることが身体を拘束された人の防御の出発点だからです。選任は書面で行い、誰が頼んだのかが分かるように本人と弁護人が連署します。

法律事務所の応接室の場面。先生が弁護士役(札「弁護士」)で机に座り、向かいに女性(札「被疑者の妻」)が座っている。机の上に「弁護人選任届」と書いた書面があり、署名欄に「被疑者 ___」「弁護人 ___」の二つの欄(連署)。壁の掲示に「独立し

本人はいつでも弁護人を選任でき、法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹は本人の意思にかかわらず独立して選任できます

被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条1項)。憲法34条前段と37条3項の弁護人依頼権を手続の中で具体化した規定で、身体拘束の有無や捜査の段階を問いません。あわせて、被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができます(同条2項)。「独立して」とは、本人の意思や委任にかかわらず、これらの者が自分の権利として選任できるという意味です。「被告人又は被疑者の兄弟姉妹は,被告人又は被疑者の意思にかかわらず,弁護人を選任することができる」という肢と、「法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して私選弁護人を選任することができる」という肢はいずれも正しいです。独立選任権は本人の選任権を奪うものではないので、配偶者が弁護人を選任した後でも本人は別の弁護人を選任でき、妻が選任した弁護人が本人の別の選任によって当然に地位を失うこともありません。「自己の配偶者が弁護人を選任した場合には,自ら弁護人を選任することはできない」という肢は誤りです。弁護人は弁護士の中から選任するのが原則で、簡易裁判所と地方裁判所では裁判所の許可を得て弁護士でない者を選任できますが、地方裁判所では他に弁護士の弁護人がいる場合に限られます(31条)。

選任は弁護人と連署した書面で行い、合理的な理由なく被告人の署名を欠く選任届による選任は無効です

弁護人の選任は、弁護人と連署した書面を差し出して行います。公訴提起前は司法警察員又は検察官に、公訴提起後は裁判所に差し出します。口頭では足りず、「弁護士が裁判所にその旨直接申し出る限り,書面による必要はない」という肢は誤りです。連署とは、弁護人になろうとする者と被告人とがそれぞれ自己の氏名を自書して押印することです。判例は、弁護人選任届の被告人の署名欄に「氏名不詳」と記載されているだけの事案で、被告人に氏名を記載することができない合理的な理由がないのに被告人の署名のない選任届によってした私選弁護人の選任は無効であるとしました(最決昭和40年7月20日)。「被告人に氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、被告人の署名のない弁護人選任届によってした私選弁護人の選任は無効である」という肢は正しいです。被告人が氏名を黙秘し、刑事施設の居室番号の自署と拇印で自己を表示した選任届を不適法として却下しても、氏名は原則として憲法38条1項の不利益な事項に当たらないので違法ではなく、「その選任届が不適法として却下されることはない」という肢は誤りです(最大判昭和32年2月20日)。この判例は取調受忍義務と黙秘権の語でも扱います。裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより弁護人の数を制限することができ、被告人の弁護人については特別の事情のあるときに限られます(35条)。規則はこの上限を3人としています。「被告人の私選弁護人の数を制限することはできない」という肢は誤りです。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立ち、黒板に左から右へ時間の矢印。矢印の上に「捜査」「公訴提起」「第一審」「判決宣告」「控訴審」の順に目盛り。「捜査」から「第一審」の終わりまで伸びる帯に「起訴前の選任は第一審で

起訴前の選任は第一審でも効力をもち、起訴後の選任は審級ごとに行いますが、原審の弁護人は改めて選任されなくても控訴できます

公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有します(32条1項)。「公訴の提起前にした弁護人の選任は,第一審においてその効力を有しないので,公訴の提起後,改めて弁護人の選任をしなければならない」という肢は誤りです。これに対し、公訴の提起後における弁護人の選任は審級ごとにしなければならず(同条2項)、「公訴の提起後における弁護人の選任は,審級ごとにこれをしなければならない」という肢は正しいです。審級ごとといっても、第一審の選任の効力は判決の宣告によって当然に失われるものではなく(最決平成4年12月14日)、しかも原審における代理人又は弁護人は被告人のために上訴することができます(355条)。「第一審における弁護人は,判決の宣告により弁護人の選任の効力が失われるので,被告人のため控訴をすることができず,控訴をするには改めて弁護人として選任される必要がある」という肢は誤りです。ただし、弁護人による上訴は被告人の明示した意思に反してすることはできません(356条)。被疑者段階で選任された国選弁護人も、勾留のまま起訴されれば32条1項によりそのまま第一審の弁護人となります。この点は被疑者国選弁護の語で扱います。

  • 選任権者本人(30条1項)/法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹が独立して(30条2項)
  • 方式弁護人と連署した書面(起訴前は司法警察員又は検察官、起訴後は裁判所に差し出す)。署名のない選任届は無効(最決昭和40年7月20日)
  • 効力の期間起訴前の選任は第一審まで(32条1項)/起訴後の選任は審級ごと(32条2項)/判決宣告で当然には失われず、原審の弁護人は上訴できる(355条)/被告人の明示の意思に反する上訴はできない(356条)
  • 数の制限裁判所の規則により制限できる。被告人の弁護人は特別の事情のあるときに限る(35条)

刑事訴訟法30条1項

被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。

刑事訴訟法30条2項

被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。

刑事訴訟法32条1項

公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。

刑事訴訟法32条2項

公訴の提起後における弁護人の選任は、審級ごとにこれをしなければならない。

刑事訴訟法355条

原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。

論文ではこう使う

弁護人選任権そのものを論じる問題は少なく、接見交通権や接見指定の論述の冒頭で、憲法34条前段の弁護人依頼権が弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障していること、刑事訴訟法30条がこれを受けて本人と一定の親族に選任権を与えていることを一文で確認し、選任前の「弁護人となろうとする者」にも接見交通権が及ぶことにつなげます。

試験ではこう問われる

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