被疑者国選弁護(37条の2〜37条の4・38条の2:要件・資力申告・私選申出前置・失効)とは
ひぎしゃこくせんべんご
被疑者国選弁護とは、勾留状が発せられている被疑者(勾留を請求された被疑者を含む)が、貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときに、その請求により裁判官が弁護人を付す制度です(刑事訴訟法37条の2)。請求には資力申告書の提出が要り、資力が基準額以上の被疑者は先に弁護士会へ私選弁護人の選任の申出をしていなければなりません(37条の3)。
勾留された被疑者が「弁護士に頼みたいがお金がない」と言ったとき、裁判官が国の費用で弁護人をつけるのが被疑者国選弁護です。かつては重い罪の事件に限られていましたが、いまは勾留された事件ならどれでも請求できます。ただし勾留が前提なので、逮捕されただけの段階や在宅のままの被疑者は請求できません。本当にお金がないのかを資力申告書で申告させ、一定以上の資力がある人には、まず弁護士会に私選の弁護人を頼んでもらう手順を踏ませます。
勾留状が発せられた被疑者と勾留を請求された被疑者が請求でき、逮捕中や在宅の被疑者は請求できません
被疑者に対して勾留状が発せられている場合に、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により被疑者のため弁護人を付さなければなりません。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合と被疑者が釈放された場合は除かれます(刑事訴訟法37条の2第1項)。この請求は勾留を請求された被疑者もすることができるので(同条2項)、勾留質問の際に請求できます。対象は勾留に係る事件で、罪名や法定刑による限定はありません。被疑者国選の対象事件は、平成28年改正(平成30年6月施行)で勾留状が発せられた全事件に広がりました。それまでは死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件に限られていたので、古い肢の「長期3年を超える」は読み替えます。勾留が要件なので、在宅の被疑者は請求できず、「殺人被疑事件で在宅のまま取調べを受けている被疑者からの国選弁護人選任の請求があった場合,被疑者のため弁護人を付さなければならない」という肢と「身体を拘束されていない被疑者が,貧困により弁護人を選任することができないときは,裁判官は,その請求により,被疑者のため弁護人を付さなければならない」という肢は誤りです。逮捕されただけの段階でも請求できません。職権で付す場合(37条の4)も勾留状の発付が前提なので、「被疑者が身体を拘束されている期間中,いつでも国選弁護人を付すことができる」という肢は誤りです。法定刑で結論が異なる事項を選ぶ問題で、「被疑者の国選弁護人選任請求権の有無」は、出題当時(平成20年)は対象事件が法定刑で限られていたため法定刑によって異なるものに当たりましたが、現行法では勾留に係る全事件が対象なので異なりません。
請求には資力申告書を出し、資力が基準額以上の被疑者だけが先に弁護士会へ私選の申出をします
国選弁護人の選任を請求するには、資力申告書を提出しなければなりません(37条の3第1項)。資力が基準額以上である被疑者が請求するには、あらかじめ、勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内にある弁護士会に、私選弁護人の選任の申出(31条の2第1項)をしていなければなりません(37条の3第2項)。この私選申出前置は資力が基準額以上の者に限られ、「その資力のいかんを問わず,あらかじめ…弁護士会に私選弁護人の選任の申出をしていなければならない」という肢は誤りです。裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で虚偽の資力申告書を出した者は過料に処されます(38条の4)。逮捕された被疑者には、弁解録取の際に、勾留を請求された場合に国選弁護人を請求できること、請求には資力申告書の提出が要ること、資力が基準額以上なら先に弁護士会へ申出をしていなければならないことを司法警察員・検察官が教示します(203条4項・204条3項)。「③の1から3までの事項を教示するように求められていない」という肢は誤りです。勾留質問の際にも、弁護人がない被疑者には裁判官が同じ教示をします(207条2項から4項)。
- 請求できる者勾留状が発せられている被疑者/勾留を請求された被疑者(37条の2)。在宅・逮捕中は不可
- 要件貧困その他の事由により弁護人を選任できないこと。被疑者以外の者が選任した弁護人がいないこと
- 手続資力申告書の提出(37条の3第1項)。資力が基準額以上なら弁護士会への私選申出が先(同条2項)
- 職権選任勾留状が発せられ弁護人がない被疑者で、精神上の障害等により弁護人の要否の判断が困難な疑いがあるとき(37条の4)。死刑・無期拘禁刑の事件では更に1人を付せる(37条の5)
釈放されると選任は失効しますが、勾留の執行停止による釈放では失効せず、勾留のまま起訴されればそのまま第一審の弁護人です
裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは効力を失います。ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは失効しません(38条の2)。勾留の取消しによる釈放は本文に当たるので、「当該被疑事実についての勾留が取り消され,被疑者が釈放されたとしても,…被疑者の国選弁護人としての地位を失うことはない」という肢は誤りで、「勾留の執行停止により被疑者が釈放された場合にはその効力を失う」という肢も誤りです。勾留されたまま同じ事実で起訴された場合は、公訴提起前の選任が第一審でも効力をもつ32条1項により、被疑者国選弁護人はそのまま第一審の弁護人になります。「起訴後もAが国選弁護人の地位にあるためには、改めて第一審の国選弁護人として選任される必要がある」という肢は誤りで、「公訴の提起後に改めて第一審の弁護人として選任されない限り,保釈の請求をすることができない」という肢も誤りです。これに対し、被告人の国選弁護人の選任は審級ごとに行います(32条2項)。「被告人の国選弁護人の選任は,審級ごとにしなければならない」という肢は正しいです。被告人の国選弁護は36条以下、必要的弁護事件での職権選任は後半の語で扱います。
国選弁護人は辞任を申し出ただけでは地位を失わず、裁判所又は裁判官が解任するまで弁護人です
判例は、国選弁護人は裁判所が解任しない限りその地位を失うものではなく、辞任の申出をした場合でも、裁判所が申出に正当な理由があると認めて解任しない限り弁護人の地位を失わないとしています(最判昭和54年7月24日)。「国選弁護人は,辞任を申し出ても,裁判所又は裁判官が解任しない限り,弁護人の地位を失わない」という肢は正しく、「辞任を申し出ることにより、自らその地位を離れることができる」という肢は誤りです。現在は解任の事由が条文に置かれ、弁護人を付する必要がなくなったとき、被告人と弁護人の利益が相反するとき、心身の故障で職務を行えないとき、任務に著しく反したとき、弁護人への暴行・脅迫など被告人の責めに帰すべき事由があるときに、あらかじめ弁護人の意見を聴いて解任できます。公訴提起前は裁判官が解任します(38条の3)。
刑事訴訟法37条の2第1項
被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
刑事訴訟法37条の3第2項
その資力が基準額以上である被疑者が前条第一項の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
刑事訴訟法38条の2
裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。
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