接見交通権(39条1項:秘密交通・物の授受・弁護人となろうとする者・鑑定留置中)とは
せっけんこうつうけん
接見交通権とは、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者が、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と、立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができる権利です(刑事訴訟法39条1項)。憲法34条前段の弁護人依頼権に由来する、弁護人の最も重要な固有権の一つです。
逮捕された人が留置施設の接見室で弁護士と会う場面を思い浮かべてください。アクリル板越しですが、警察官は同席せず、二人だけで話せます。何を話したかを捜査機関に知られないからこそ、本当のことを相談し、取調べにどう臨むかの助言を受けられます。これが接見交通権で、憲法が「直ちに弁護人に依頼する権利」を保障した趣旨を実際の場面で支える仕組みです。だから家族や友人との面会とは別扱いで、裁判官の接見禁止の裁判でも弁護人との接見は止められません。
接見交通権は憲法34条の弁護人依頼権に由来し、弁護人から援助を受ける機会を確保するための最も重要な固有権です
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と、立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができます(刑事訴訟法39条1項)。判例は、憲法34条前段の弁護人依頼権は、身体の拘束を受けている者に弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障したものであり、39条1項は、この趣旨にのっとり、身体の拘束を受けている被疑者が弁護人等と相談し、その助言を受けるなど弁護人等から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたもので、その意味で憲法の保障に由来するとしています(最大判平成11年3月24日)。それ以前から判例は、弁護人等との接見交通権は、身体を拘束された被疑者が弁護人の援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するとともに、弁護人からいえばその固有権の最も重要なものの一つであるとしていました(杉山事件、最判昭和53年7月10日)。「弁護人から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたものであり、憲法の保障に由来するものである」という肢と、これに「弁護人の重要な固有権である」と加えた肢は、いずれも正しいです。
立会人なしの接見に加えて書類・物の授受も含み、相手方は選任前の弁護人となろうとする者を含みます
39条1項の権利は接見だけでなく、書類若しくは物の授受にも及びます。「物の授受については,意思や情報の伝達とは関係ないので,被疑者と物の授受をすることはできない」という肢は誤りです。逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐために必要な措置を法令で定めることはできますが(同条2項)、授受そのものを否定する趣旨ではありません。相手方は、すでに選任された弁護人に限らず、本人や独立選任権者の依頼を受けて弁護人となろうとする者を含みます。弁護士であれば裁判所の許可も要りません。逮捕直後でまだ選任届を出していない段階でこそ助言が必要だからです。「弁護士は,被疑者の弁護人に選任されない限り,逮捕又は勾留された被疑者と立会人なくして接見することはできない」という肢は誤りです。身体の拘束の種類も問わず、逮捕・勾留のほか鑑定留置中の被疑者にも及びます(167条5項・224条)。「鑑定留置されている被疑者は,弁護人又は弁護人となろうとする者と立会人なくして接見することができる」という肢は正しいです。弁護人の活動のうち法令上の根拠があるものを数える問題でも、留置施設に勾留されている被疑者との接見は根拠のあるものに入ります。
接見等禁止の裁判があっても、弁護人との接見は禁じられず、立会人も付きません
裁判所(被疑者については裁判官)は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、勾留されている被告人と39条1項に規定する者以外の者との接見を禁じ、授受すべき書類その他の物を検閲し、授受を禁じ、差し押さえることができますが、糧食の授受は禁じられません(81条・207条1項)。条文が対象を「第三十九条第一項に規定する者以外の者」としているので、この裁判で弁護人や弁護人となろうとする者との接見を禁じることはできません。「接見禁止決定がされている場合は,被疑者と接見できない」という肢、「裁判官からその接見を禁じられたときには,被疑者と接見することができない」という肢、「裁判官が接見禁止の裁判をした場合、被疑者の弁護人であっても、被疑者と接見することはできない」という肢はいずれも誤りです。接見禁止の裁判を受けた被告人との弁護人の接見も立会人なしで行われ、「接見禁止の裁判を受けた被告人に対する接見であるので,立会人が付いた接見である」という肢は誤りです。弁護人以外の者との接見は80条の一般接見で、接見等禁止の要件と手続は接見等禁止の語で扱います。捜査機関が接見の日時・場所・時間を指定できる場合は接見指定の語で扱います。
接見の内容を捜査機関が聴き出して調書にすることや、在宅の被疑者と弁護人との面会を不当に妨げることは違法とされています
立会人なしで接見できても、接見で話した内容をあとから捜査機関が被疑者から聴き出して調書にしてしまえば、秘密は守られません。高等裁判所の裁判例は、39条1項の秘密交通権は接見が終わった後も接見内容を知られない権利を保障したものであり、捜査機関は被疑者が接見内容を話し始めても漫然と聞き続けたり関連する事項を質問したりすることを原則として差し控えるべき法的義務を負うとして、弁護人との意思疎通の過程を聴取して調書化した行為を違法としました(福岡高判平成23年7月1日)。また、39条1項は身体の拘束を受けている者を対象にしているので、任意出頭して取調べを受けている在宅の被疑者と弁護人との面会はこの条文の対象外ですが、高等裁判所の裁判例は、捜査機関がこの面会を不当に妨げることは違法になるとしています。
刑事訴訟法39条1項
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
刑事訴訟法81条
裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
論文ではこう使う
接見交通権が問題になる論述では、まず39条1項の権利が憲法34条前段の弁護人依頼権に由来し、身体を拘束された被疑者が弁護人から援助を受ける機会を確保するための最も重要な固有権であることを、判例の文言で確認します。次に、相手方が弁護人となろうとする者を含むこと、立会人なしの秘密交通と物の授受を含むことを押さえたうえで、捜査機関が制限できるのは39条3項の接見指定だけであることを示し、接見指定の要件の検討に進みます。接見内容の聴取が問題になる事案では、秘密交通権が接見終了後の接見内容にも及ぶという裁判例の考え方を使います。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。