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用語集 / 刑事訴訟法 / 準現行犯逮捕

準現行犯逮捕(212条2項)とは

じゅんげんこうはんたいほ

刑事訴訟法 逮捕・勾留

準現行犯逮捕とは、犯人として追呼されている、贓物や凶器を所持している、身体や被服に犯罪の顕著な証跡がある、誰何されて逃走しようとする、のいずれかに当たる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときに、現行犯人とみなして逮捕状なしに逮捕することです(刑事訴訟法212条2項・213条)。

「人がバットで殴られている」という通報で駆けつけた警察官が、30分後に500メートル離れた路上で、通報どおりの服装でバットを持った人を見つけ、声を掛けたら走って逃げ出したとします。犯行の瞬間は見ていませんが、この人を見逃して逮捕状を取りに戻るのは現実的ではありません。そこで法は、犯行からあまり時間がたっておらず、追われている、凶器を持っている、体や服に犯罪の跡がある、声を掛けられて逃げようとする、という外から見て分かる事情がある者を現行犯人とみなして、逮捕状なしで逮捕できることにしました。これが準現行犯逮捕です。

夜の住宅街の路上の場面。先生が警察官役(札「司法巡査」)で、片手を前に出して男性(札「犯人と思われる者」)に声を掛けている。男性はバットを持ち、背を向けて走り出そうとしている。先生の吹き出し「ちょっと待って。声を掛けたら逃げ出した。誰何され

準現行犯人は、212条2項の四つの号のいずれかに当たり、かつ罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる者です

刑事訴訟法212条2項は、犯人として追呼されているとき(1号)、贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき(2号)、身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき(3号)、誰何されて逃走しようとするとき(4号)のいずれかに当たる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなすと定めています。各号の事情が一つあれば足り、全部そろう必要はありません。これに柱書の時間的な接着性が加わって初めて準現行犯人になります。現行犯人とみなされるので、現行犯逮捕と同じく何人でも逮捕状なくして逮捕でき(213条)、「窃盗事件の犯人として追呼されている者が,罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは,検察官,検察事務官又は司法警察職員以外の者であっても,逮捕状なくしてその者を逮捕することができる」という肢は正しいです。令状主義の例外ですから、各号の事情も時間的な接着性も、逮捕者の思い込みではなく外から見て明らかであることが要ります。

  • 柱書罪を行い終わってから間がないと明らかに認められること(時間的な接着性)
  • 1号犯人として追呼されているとき
  • 2号贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき
  • 3号身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
  • 4号誰何されて逃走しようとするとき

「ちょっと待って」と声を掛けられて逃げ出せば、誰何されて逃走しようとするときに当たります

誰何とは、本来は声を掛けて何者かを問いただすことですが、それに類する働きかけも含みます。警察官が「ちょっと待って。」と声を掛けて停止を求めたのに対し、直ちに逃走を開始した場合は、4号の「誰何されて逃走しようとするとき」に該当します。事件発生の約30分後に現場から約500メートルの路上で、被害者が供述した服装・体格と一致する人物がバットを持って歩いているのを見つけ、声を掛けると逃げ出したので追跡して逮捕した事例問題では、「「誰何されて逃走しようとするとき。」(刑事訴訟法第212条第2項第4号)に該当する」という肢が正しいです。判例には、警察官が懐中電灯で照らして警笛を鳴らしたのに対して相手が逃げようとした事案を4号に当たるとしたものがあります。

犯行の約1時間後に約4キロメートル離れた場所で逮捕した事案も、間がないと明らかに認められるとされました

時間的な接着性は、現行犯逮捕の「現に罪を行い終つた者」よりも広く、各号の事情と合わせて判断します。大学構内の内ゲバ事件の無線情報を受けて警戒していた警察官が、犯行終了から約1時間後に現場から約4キロメートル離れた派出所付近で、小雨の中で着衣を濡らし靴を泥で汚した者に停止を求めたところ逃走したので追跡し、腕に籠手を着けていたことなどから逮捕した事案と、犯行から約1時間40分後に約4キロメートルの路上で、泥まみれの靴や顔面の新しい傷跡、誰何されての逃走を理由に逮捕した事案について、判例は、212条2項各号に当たる事由があり、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるとして、いずれも準現行犯逮捕を適法としました(最決平成8年1月29日)。これに対し、犯行の二十数分後に現場近くで人相や服装の似た者を見つけたものの、凶器の所持や身体・着衣の証跡がなく、被害者の供述によって初めて犯人と認めた事案では、準現行犯逮捕の要件も備わっていないとされています(京都地決昭和44年11月5日)。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ。黒板の左側に縦に四つの札「1号 犯人として追呼されている」「2号 贓物・凶器を所持している」「3号 身体・被服に犯罪の顕著な証跡」「4号 誰何されて逃走しようとする」。右側

逮捕のときに逮捕の理由を告げる義務はなく、告知するのは引致を受けた司法警察員です

準現行犯逮捕を含む現行犯逮捕には逮捕状がないので、逮捕状を示すことも、緊急執行のように要旨を告げることも要りません。緊急逮捕と違って、逮捕の際に理由を告げる旨の規定もありません。「司法巡査は,甲を準現行犯人として逮捕するに当たり,甲に逮捕の理由を告げなければならない」という肢は誤りです。司法巡査が逮捕したときは直ちに司法警察員に引致し(216条・202条)、引致を受けた司法警察員が犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨を告げて弁解の機会を与えます(203条1項)。その後の送致や時間制限は現行犯逮捕と同じで、逮捕後の手続と時間制限の語で扱います。被告人の段階には準現行犯逮捕を含めて逮捕の制度はなく、身体拘束は裁判所の勾引・勾留によります。

刑事訴訟法212条2項

左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。一 犯人として追呼されているとき。二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。四 誰何されて逃走しようとするとき。

論文ではこう使う

論文では、犯行から時間がたった後の無令状逮捕の適法性を問われたときに、まず212条1項の現行犯人に当たらないことを一言で示し、次に212条2項の準現行犯人に当たるかを、各号該当性と柱書の時間的な接着性の二段で当てはめます。各号該当性では、問題文の事情を号ごとに振り分けます(追跡されている事実は1号、凶器や被害品の所持は2号、衣服の汚れや傷は3号、声掛けに対する逃走は4号)。時間的な接着性では、犯行からの時間と距離に加え、各号の事情が強いほど接着性を緩やかに認めてよいことを、約1時間後・約4キロメートルの事案を適法とした平成8年決定を引いて示します。被害者の供述だけで犯人と認めた場合は、客観的な明白性を欠くとして要件を否定する方向で書きます。逮捕が適法なら、逮捕の現場での捜索・差押えの適法性に進みます。

試験ではこう問われる

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