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用語集 / 刑事訴訟法 / 任意同行と実質的逮捕

任意同行と実質的逮捕とは

にんいどうこうとじっしつてきたいほ

刑事訴訟法 逮捕・勾留

任意同行とは、捜査機関が被疑者の任意の承諾の下に警察署などへ同行を求めることで、実質的逮捕とは、同行や同行後の留め置き・取調べの態様から、逮捕と同一視できる程度の強制力が加えられていると評価される状態をいいます。実質的逮捕はその時点から逮捕状によらない違法な逮捕として扱われます。

警察官が「署で話を聞かせてほしい」と言って同行を求めることを任意同行といいます。本人が承諾して付いていく限り逮捕ではありませんが、断れない雰囲気で連れて行き、取調室から出さず、深夜まで監視付きで取り調べたとなると、名前は任意でも中身は逮捕です。これを実質的逮捕といい、その時点から逮捕状のない違法な逮捕があったものとして扱います。逮捕の時間制限もその時点から数え始めるので、後から逮捕状を取って勾留を請求しても、却下されることがあります。

夜の警察署の取調室の場面。先生が弁護士役(札「弁護人」)で、机の上に置かれた一枚の紙を指さしている。紙には「午前8時 任意同行/午後7時 夕食以降も看視付きで取調べ/午後11時 逮捕状執行」と時刻が並ぶ。向かいに警察官の男性(札「司法警察員

任意同行は本人の任意の承諾の下に意思を制圧せずに行う必要がありますが、説得の限度の有形力は許されます

任意同行は、捜査機関が被疑者に出頭を求める任意捜査の一つで、本人の任意の承諾の下に、その意思を制圧することなく行われなければなりません。「甲に対する任意同行が適法であるためには,甲の任意の承諾の下,その意思を制圧することなく行われたことを要する」という肢は正しいです。任意捜査だからといって有形力の行使が全く許されないわけではなく、個人の意思を制圧し身体などに制約を加える強制の程度に至らない有形力の行使は、必要性と緊急性を考慮して具体的状況の下で相当と認められる限度で許されます。背中を手のひらで押してパトカーに乗せる程度の行為が許される場合はあります。強制処分と任意処分の区別は強制処分の意義と任意捜査の限界の語で扱います。

同行後の留め置きや取調べの態様から実質的な逮捕と評価されると、その時点から無令状の違法な逮捕になります

同行そのものに強制がなくても、同行後に退室や外部との連絡を許さず、監視を付けて長時間取り調べるなど、逮捕と同一視できる程度の強制力が加えられていれば、実質的な逮捕と評価されます。出勤途中に同行を求められて警察署に着き、深夜まで看視付きで断続的に取り調べられ、帰宅の意思を確認されることも退室の機会も与えられなかった事案で、裁判官は、少なくとも夕食時以降の取調べは実質的に逮捕状によらない違法な逮捕であるとし、その後に逮捕状を執行して請求された勾留を却下しました。制限時間が守られていても令状主義違反の重大な瑕疵は治癒されないとされています(富山地決昭和54年7月26日)。駅付近から駐在所までの同行は適法でも、深夜に覆面パトカーの後部座席に警察官が挟む形で乗せて警察署へ同行した時点からは実質的な逮捕に当たるとした裁判例もあります(東京高判昭和54年8月14日)。

大学の教室の場面。先生が教師役(札「刑事訴訟法」)で黒板の前に立つ。黒板に左から右へ時間の矢印。左端「任意同行」、中ほどに縦の点線と札「実質的逮捕と評価される時点」、右端「逮捕状の執行」。点線から右へ「ここから48時間・72時間を数える」の

実質的逮捕の時点から時間制限が走り、その違法の程度によって勾留や供述調書の扱いが決まります

実質的な逮捕があったと評価されると、逮捕後の時間制限は、逮捕状を執行した時ではなく実質的な逮捕の時点から数えます。任意同行の開始時点を実質的な逮捕と考えても、そこから48時間以内に送致され、検察官が受け取ってから24時間以内かつ通じて72時間以内に勾留請求がされていれば、「甲の逮捕後の手続について刑事訴訟法が要求する時間的制限は遵守されている」という肢は正しいです。時間制限が守られていても逮捕状なしに拘束した違法は残るので、その違法の程度が重大なら勾留請求は却下されます。他方、実質的逮捕の時点で緊急逮捕の理由と必要性があり、約3時間後に逮捕状による逮捕がされ、送致や勾留請求の時期にも違法がない事案では、実質的逮捕の違法性の程度はその後の勾留を違法とするほど重大ではないとされました(東京高判昭和54年8月14日)。実質的な逮捕があったと認定されても、そのことだけで供述調書の証拠能力が当然に否定されるわけではなく、手続の違法が重大で証拠とすることが違法捜査抑制の見地から相当でないかを判断します。「そのことのみで甲の供述調書の証拠能力は当然に否定される」という肢は誤りです。

実質的な逮捕に当たらなくても、任意の取調べとして相当な限度を超えれば違法になります

任意同行の後の取調べが実質的な逮捕に当たらない場合でも、任意捜査としての取調べは、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度など諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度で許されます。捜査官が手配した宿泊施設に4泊させながら取り調べた事案(最決昭和59年2月29日)と、深夜の任意同行から徹夜で翌日夜の逮捕まで20時間を超えて取り調べた事案(最決平成元年7月4日)は、いずれも方法として妥当とはいい難いとしつつ、被疑者が帰宅や休息を申し出ていないことや事案の重大性などから、許容される限度を超えた違法なものとまでは断じ難いとされました。論文では、①実質的な逮捕に当たるか、②当たらないとして任意取調べの限界を超えないか、の順で検討します。この②の判断枠組みは任意取調べの限界の語で扱います。

論文ではこう使う

論文では、任意同行から逮捕までの経過が問題になる事案で、まず同行の求め方(有形力の有無、断る機会)と同行後の状況(退室や連絡の自由、監視、時間帯、取調べの長さ)から、どの時点で逮捕と同一視できる強制力が加わったかを認定し、実質的逮捕の成否を論じます。実質的逮捕と評価したら、その時点を起算点に203条・205条の時間制限を計算し直し、逮捕状なしの拘束という令状主義違反の違法を指摘して、勾留請求が却下されるべきか、違法の程度が重大かを論じます。実質的逮捕に当たらない場合は、任意取調べの限界として相当性を検討します。最後に、拘束下で得られた自白や証拠の証拠能力につなげます。

試験ではこう問われる

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