第27条過去問 6
代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう。以下この章において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。
この条文の過去問 6問
代理商は、やむを得ない事由があるときは、いつでも、当該代理商が商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする契約を解除することができる。
解説
本肢は正しい。代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう(商法27条括弧書。会社の代理商につき会社法16条)。使用人と異なり本人から独立した商人であり、本人との関係は継続的な委任ないし準委任契約(代理商契約)である。
この代理商契約の終了について、商法30条は二つの解除権を定める。まず同条1項は、契約の期間を定めなかったときは、商人および代理商は2か月前までに予告して契約を解除することができるとする。期間の定めのない継続的契約であっても一方当事者を永久に拘束すべきではない一方、相手方には代替の販路や取引先を確保する猶予が必要であるため、予告期間を法定したものである。これに対し同条2項は、「前項の規定にかかわらず、やむを得ない事由があるときは、商人及び代理商は、いつでもその契約の解除をすることができる」と定める。本肢はこの2項に対応するものであり、正しい。
2項の解除は、期間の定めの有無を問わず認められ、予告期間も不要である点に意味がある。代理商契約は本人と代理商との高度の信頼関係を基礎とする継続的関係であるから、信頼関係を破壊する事情や営業の継続を著しく困難にする事情が生じた場合には、即時に関係を解消する途を認める必要があるからである。会社の代理商についても会社法19条2項が同旨を定めている。
問屋は、委託者のために物品の販売又は買入れをしたときは、遅滞なく、委託者に対し、その旨の通知を発しなければならない。
解説
本肢は正しい。問屋とは、自己の名をもって他人のために物品の販売または買入れをすることを業とする者をいう(商法551条)。自己の名で法律行為をする点で、本人の名で代理する代理商や、契約当事者とならない仲立人と区別される。問屋と委託者との関係については、商法552条2項により、その性質に反しない限り委任および代理に関する規定が準用される。
そのうえで商法557条は、代理商に関する商法27条および31条の規定を問屋に準用している。商法27条は「代理商は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない」と定めるものであり、これが準用される結果、問屋は委託者のために物品の販売または買入れをしたときは、遅滞なく委託者に対してその旨の通知を発しなければならないことになる。本肢はこの帰結を述べたものであり、正しい。
趣旨は、委託者が取引の結果を速やかに知る必要があることにある。問屋が取引をしても、その効果はいったん問屋に帰属し、委託者は問屋からの権利移転や決済を受けてはじめて利益を得る。委託者としては、通知を受けて相場の変動に応じた次の指示を出したり、目的物の受領・代金の準備をしたりする必要があるから、迅速な通知が不可欠である。なお、あわせて準用される商法31条により、問屋は委託者に対する債権について目的物等を留置する留置権を有する。
商人から物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、委託を受けた事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。
解説
本肢は誤り。「委託を受けた事項に関する一切の裁判外の行為をする権限」を法律上当然に有するのは、商人の営業(会社の事業)に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人であり(商法25条1項、会社法14条1項)、さらに包括的な権限を有するのは、営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為をなしうる支配人である(商法21条1項、会社法11条1項)。これに対し代理商とは、商人のためにその平常の営業(事業)の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいい(商法27条括弧書、会社法16条括弧書)、本人に従属する被用者ではなく独立の商人である。したがって、代理商の権限は雇用類似の身分から包括的に発生するものではなく、締約代理商の代理権の範囲は本人との代理商契約という個別の合意によって画される。法が一律に「一切の裁判外の行為」に及ぶ包括的代理権を付与する規定は存在しない。まして媒介代理商は取引の仲介をするにとどまり、そもそも代理権を有しない。商法が物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商について定めるのは、目的物の種類・品質・数量の不適合に関する通知(商法526条2項)その他の売買に関する通知を受ける権限、すなわち受動代理の権限にとどまる(商法29条、会社法18条)。これは相手方が本人の営業所まで通知を発しなくてよいとする取引の便宜のための規定であって、能動的な処分権限を基礎づけるものではない。よって、代理商が当然に一切の裁判外の行為をする権限を有するとする本肢は誤りである。
代理商は、商人のために取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、その商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。
解説
本肢は正しい。商法27条は「代理商(中略)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。」と定め、会社を本人とする場合について会社法16条が同旨を規定する。代理商と本人との関係は委任又は準委任であるから、本来は民法645条の報告義務が及ぶところ、同条の報告義務は原則として本人の請求があったときに生ずるにとどまる。しかし代理商は本人の営業所とは別に自己の営業所を構えて独立に活動する商人であり、本人は代理商が現実にいつどのような取引を成立させたかを直ちには把握できない。他方で、取引が成立すれば本人には目的物の引渡し・代金の受領のほか、商人間の売買における目的物の検査及び不適合の通知(商法526条)など迅速な対応が求められる。そこで商法は、本人の請求を待たずに代理商の側から遅滞なく通知すべき義務を課し、報告義務を加重したのである。なお、条文が「通知を発しなければならない」としているとおり発信主義が採られており、通知が本人に到達しなくとも発信によって義務は履行される(商法の迅速性の要請の表れである)。この義務に違反した代理商は、本人に対して債務不履行に基づく損害賠償責任を負い、また代理商契約の解除事由となり得る。したがって、本肢の記述は条文どおりであり正しい。
代理商は,商業使用人の一種である。
解説
本肢は誤り。商法27条は代理商を「商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないもの」と定義しており、括弧書きによって代理商が使用人でないことを明文で示している。したがって代理商は商業使用人の一種ではない。
両者は、商人の補助者である点では共通するが、企業組織との関係が異なる。商業使用人(商法20条以下の支配人、24条の表見支配人、25条の一定の事項の委任を受けた使用人、26条の物品販売店舗の使用人)は、特定の商人に雇用契約等により従属し、企業組織の内部から継続的に補助する者である。これに対して代理商は、自ら取引の代理または媒介を業として行う独立の商人(商法502条11号・12号、4条1項)であり、企業組織の外部にあって独立の立場から特定の商人を継続的に補助する点に特徴がある。
この独立性の違いは規律にも表れており、代理商には取引の代理・媒介をしたときの通知義務(商法27条)、商人の許可を要する競業避止義務(商法28条)、報酬債権等を被担保債権とする代理商の留置権(商法31条)といった、雇用関係を前提としない固有の規定が置かれている。会社の代理商についても会社法16条以下に同旨の規定がある。
AがBから委託を受けてBの希望に添うレンタカー契約の締結を媒介する場合,Aは,Bの代理商に該当する。
解説
本肢は誤り。代理商とは、商人のためにその平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう(商法27条括弧書。会社の代理商につき会社法16条)。この定義から明らかなとおり、代理商の本人は「商人」でなければならず、非商人のために代理・媒介をする者は代理商とならない。本問のBは個人旅行を計画している私人にすぎず、自己の名をもって商行為をすることを業とする者(商法4条1項)にも擬制商人(同条2項)にも当たらないから、AがBの委託を受けてレンタカー契約の締結を媒介したとしても、Aが「Bの代理商」に該当する余地はない。また、代理商は特定の商人と継続的な委託関係に立ち、その営業を外部から継続的に補助する独立の補助商である点に特色があり、通知義務(商法27条)、競業避止義務(商法28条)、代理商の留置権(商法31条)といった規律はいずれもこの継続的関係を前提とする。一回的な旅行の手配を委託されたにすぎないAは、この点でも代理商の要件を満たさない。なお、Aが業として他人間の契約の媒介をしている点に着目すれば、Aの地位は仲立人(商法543条)該当性の問題として論じられるにとどまる。