第19条過去問 2
1商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。
2商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を作成しなければならない。
3商人は、帳簿閉鎖の時から十年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない。
4裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、商業帳簿の全部又は一部の提出を命ずることができる。
この条文の過去問 2問
個人商人は,貸借対照表を作成しなければならないが,それを公告することは要しない。
解説
本肢は正しい。商法19条2項は、商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令(商法施行規則)で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表)を作成しなければならないと定める。したがって、個人商人にも貸借対照表の作成義務がある(もっとも、小商人には商法19条は適用されない〔商法7条〕。本問は小商人に当たる者を除く旨が明示されている)。
他方で、商法には、作成した貸借対照表を公告すべき旨を定める規定は存在しない。この点は株式会社と対照的である。株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならず(会社法440条1項)、公告方法が官報又は日刊新聞紙である会社は要旨の公告で足り(同条2項)、電磁的方法による継続的開示によって公告に代えることもできる(同条3項)。これは、株式会社では株主有限責任の下で会社財産のみが会社債権者の引当てとなるため、計算書類の開示によって債権者保護を図る必要があるからである。これに対し個人商人は自己の全財産をもって無限責任を負うから、同様の公示を強制する必要が乏しい。以上より、作成義務はあるが公告は要しないとする本肢は正しい。
商人は,その営業のために使用する財産について,適時に,正確な会計帳簿及び貸借対照表を作成しなければならない。
解説
本肢は正しい。商法19条2項は「商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を作成しなければならない」と規定する。本肢は「法務省令で定めるところにより」との文言を省略し、括弧書きで定義された商業帳簿の内容を直接示したものであるが、記述の内容自体は条文と一致しており正しい。
商業帳簿の作成義務が課される趣旨は、商人自身が営業成績と財産状態を正確に把握して合理的な経営判断を行えるようにするとともに、債権者その他の利害関係人の利益を保護し、さらに紛争が生じた際の証拠を確保する点にある。作成の基準については、商人の会計は一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとされ(商法19条1項)、具体的な作成方法は商法施行規則に委ねられている。作成された商業帳簿及びその営業に関する重要な資料は、帳簿閉鎖の時から10年間保存しなければならず(同条3項)、裁判所は申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し商業帳簿の全部又は一部の提出を命ずることができる(同条4項)。
なお、小商人については商業帳簿に関する商法19条の規定は適用されない(商法7条)。本問が「小商人に当たる者を除く」と限定しているのは、この点を踏まえたものである。したがって、本肢の商人については商業帳簿の作成義務が及び、本肢は正しい。