刑の減免の特例一覧とは
けいのげんめんのとくれいいちらん
刑の減免の特例とは、犯罪が成立することを前提に、一定の事情がある場合に刑を減軽し、又は免除することを定めた各則の規定です。解放による減軽(228条の2)、偽証・虚偽告訴の自白(170条・173条)、親族に関する特例(105条・244条1項・257条1項)、予備罪の免除や自首の規定があり、効果が必要的か任意的かが規定ごとに異なります。
誘拐犯が人質を無事に帰すことや、うその証言をした人が判決の前に本当のことを話すことがあります。こうした場合について、刑法の各則は、犯罪が成立することを前提に、刑を軽くしたり免除したりする規定を置いています。被害の拡大を防ぐために犯人を引き返させる、誤った裁判を防ぐ、家庭内のことは家庭に任せる、といった理由によるものです。規定ごとに、減軽なのか免除なのか、必ずそうするのか裁判所の判断に委ねるのかが異なります。
各則の特例は、効果が減軽か免除か、必要的か任意的かで整理できます
条文の末尾が「減軽する」「免除する」であれば必要的で、裁判所は必ずその効果を与えなければなりません。「減軽することができる」「免除することができる」であれば任意的で、裁判所の判断に委ねられます。各則の特例は、いずれも犯罪の成立を否定するものではなく、成立した罪について刑を軽くし、又は科さないことにするものです。総則にも、中止犯(43条ただし書。必要的な減軽又は免除)、自首(42条1項。任意的減軽)、過剰防衛(36条2項。任意的な減軽又は免除)、心神耗弱(39条2項。必要的減軽)といった規定がありますが、各則の特例は特定の罪だけに適用されます。
- 解放による減軽(228条の2)身の代金目的略取等の犯人が、公訴提起前に被拐取者を安全な場所に解放した。必要的減軽
- 身の代金目的略取等予備の自首(228条の3ただし書)実行に着手する前に自首した。必要的な減軽又は免除
- 偽証罪の自白(170条)裁判確定前・懲戒処分前に自白した。任意的な減軽又は免除
- 虚偽告訴等罪の自白(173条)裁判確定前・懲戒処分前に自白した。任意的な減軽又は免除
- 親族相盗例(244条1項)配偶者・直系血族・同居の親族との間の窃盗等。必要的免除(詐欺・恐喝・横領・背任などに準用)
- 盗品等に関する罪の親族等の特例(257条1項)本犯と盗品等に関する罪の犯人との間に配偶者・直系血族・同居の親族等の関係がある。必要的免除
- 親族による犯罪に関する特例(105条)犯人・逃走した者の親族が、これらの者の利益のために犯人蔵匿等・証拠隠滅等をした。任意的免除
- 放火予備(113条ただし書)・殺人予備(201条ただし書)情状により、任意的免除
- 内乱予備・陰謀・幇助の自首(80条)暴動に至る前に自首した。必要的免除
- 私戦予備・陰謀の自首(93条ただし書)自首した。必要的免除
身の代金目的略取等の犯人が公訴提起前に被拐取者を安全な場所に解放すれば、刑が必ず減軽されます
228条の2は、身の代金目的略取等の罪(225条の2)などを犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、「その刑を減軽する」と定めています。被拐取者の生命・身体の安全を図るために、犯人に解放を促す政策的な規定で、効果は必要的減軽です。「公訴が提起される前に同成年者を安全な場所に解放すれば,身の代金目的略取罪の刑が必要的に減軽される」という肢は正しいです。「その解放の時期が当該犯人に対する公訴の提起前であれば,その刑は減軽される」という肢も正しいです。免除までは認められないこと、時期の基準が公訴の提起であること、解放先が安全な場所でなければならないことが要件の骨格です。身の代金目的略取等の予備をした者が実行に着手する前に自首したときは、刑を減軽し、又は免除します(228条の3ただし書)。
偽証罪・虚偽告訴等罪の自白は、刑を減軽・免除することができるにとどまります
偽証罪を犯した者が、証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができます(170条)。虚偽告訴等罪についても、申告をした事件について同じ時期までに自白したときは、同じ効果が認められます(173条)。どちらも誤った裁判や懲戒処分を防ぐための規定で、効果は任意的です。自白しても犯罪が成立していることに変わりはありません。共犯の成立には正犯の行為が構成要件に該当し違法性を具備することを要するとする見解からは、偽証をした者が判決言渡し前に自白した場合でも、偽証を唆した者に偽証罪の教唆犯が成立し得るという結論になります。
親族に関する特例は、財産犯では必要的免除、犯人蔵匿等・証拠隠滅等では任意的免除です
親族相盗例(244条1項)は、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で窃盗罪などを犯した者について「その刑を免除する」と定め、詐欺・恐喝・横領などにも準用されます。直系血族であれば同居は要りません。別居している祖父から現金を脅し取った事例について、「甲には恐喝罪が成立するが,その刑は免除される」という肢は正しいです。盗品等に関する罪の特例(257条1項)も「その刑を免除する」と定める必要的免除で、親族関係は本犯と盗品等に関する罪の犯人との間に必要です。同居の甥が盗んできた宝石を無償で譲り受けた事例について、「甲には盗品等無償譲受け罪が成立するが,その刑は免除される」という肢は正しいです。盗品等有償譲受け罪の犯人が本犯である窃盗犯人の配偶者である場合に、「当該盗品等有償譲受け罪の犯人について,その刑は免除される」という肢も正しいです。これに対し、犯人蔵匿等罪・証拠隠滅等罪の特例(105条)は「その刑を免除することができる」と定める任意的免除です。犯人の親族が犯人蔵匿罪を犯したときは、「当該親族に対する刑は減軽しなければならない」という肢は誤りです。偽証罪には親族に関する特例がないので、実父のために偽証をした子について、「甲には偽証罪が成立するが,その刑を免除することができる」という肢も誤りです。
予備罪には、情状による免除と、自首による免除があります
放火予備罪(113条)と殺人予備罪(201条)には、「ただし、情状により、その刑を免除することができる」というただし書があります。予備にとどまった事情を考慮して裁判所が刑を免除できるという任意的免除です。強盗予備罪(237条)にはこのただし書がありません。自首については、総則の42条1項が任意的減軽を定めていますが、各則には効果を強めた規定があります。内乱の予備・陰謀・幇助の罪を犯した者が暴動に至る前に自首したときは「その刑を免除する」とされ(80条)、私戦予備・陰謀の罪でも自首した者は「その刑を免除する」とされています(93条ただし書)。重大な結果が生じる前に犯人を引き返させるために、必要的免除としたものです。
刑法228条の2
第二百二十五条の二又は第二百二十七条第二項若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。
刑法105条
前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
論文ではこう使う
論文では、罪責の結論を書く場面で使います。犯罪の成立を認定し、罪数を処理した後に、問題文の事情に当てはまる減免の規定があれば、条文を挙げて効果を一言で書きます。たとえば、身の代金目的で誘拐した者が起訴前に被害者を安全な場所で解放していれば「228条の2により刑が減軽される」、親が子の事件の証拠を隠していれば「105条により刑を免除することができる」と書きます。必要的か任意的かを条文の文言どおりに書き分けることが大切です。親族に関する特例では、誰と誰の間に親族関係が必要かを確認し、親族でない共犯には適用されないことにも触れます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。