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予備罪(予備の中止・予備の共同正犯・他人予備)とは

よびざい

刑法 未遂・中止犯・不能犯

予備罪とは、特定の罪を犯す目的で、実行の着手より前の準備をする行為を処罰する罪です。殺人、強盗、放火など特に重大な罪についてだけ定められており、判例は、予備罪に中止犯の規定を準用せず、予備罪の共同正犯の成立を認めています。

強盗をするつもりでナイフを買い、相手の家の前まで行ったが引き返した人は、まだ誰にも手を出していません。それでも、強盗のような重大な犯罪は、準備の段階で止めなければ取り返しがつかなくなります。そこで刑法は、ごく限られた重大な罪についてだけ、準備をした段階で処罰する規定を置いています。準備の段階なので、未遂とは違う扱いがいくつもあります。

夜の住宅街の場面。門の前で引き返そうとしている男性(札「行為者」)の上着のポケットから、鞘に入ったナイフの柄が少しのぞいている。その前に先生が警察官役(札「警察官」)で立ち、懐中電灯で足元を照らしている。門の表札の下に札「強盗の目的」。地面

予備は実行の着手より前の準備であり、特に重大な罪についてだけ処罰されます

予備は、特定の罪を犯す目的でする、実行の着手に至らない準備行為です。凶器や毒物の入手、犯行場所の下見などがこれに当たります。予備を処罰する規定があるのは、殺人、強盗、放火など一部の罪だけです。放火予備罪(113条)は、現住建造物等放火(108条)又は他人所有の非現住建造物等放火(109条1項)を犯す目的がある場合に限って成立します。自己所有の倉庫に放火する目的でガソリンとライターを持って向かった事例について「その倉庫がA所有のものであった場合,Aに放火予備罪(刑法第113条)は成立しない」という肢は正しいです。自動車や自動二輪車への放火は建造物等以外放火(110条)なので、その準備は放火予備罪に当たりません。「この場合,甲には,建造物等以外放火罪の予備罪が成立する」という肢は誤りです。「この場合、甲に放火予備罪が成立する」という肢も誤りで、「この場合,甲には,放火予備罪は成立しない」という肢は正しいです。通貨偽造等準備罪(153条)は、偽造の用に供する目的で器械又は原料を準備する行為だけを処罰します。作業部屋を賃借した行為について「その段階で甲には通貨偽造等準備罪が成立する」という肢は誤りです。部屋は器械にも原料にも当たらないからです。

予備を処罰する主な罪

  • 殺人予備(201条)2年以下の拘禁刑。情状により刑を免除することができる
  • 強盗予備(237条)2年以下の拘禁刑。免除の規定はない
  • 放火予備(113条)108条又は109条1項の罪を犯す目的に限る。2年以下の拘禁刑。情状により刑を免除することができる
  • 身の代金目的略取等予備(228条の3)2年以下の拘禁刑。実行に着手する前に自首した者は、刑を減軽し、又は免除する
  • 通貨偽造等準備(153条)器械又は原料の準備に限る。3月以上5年以下の拘禁刑
  • 内乱・外患・私戦の予備と陰謀(78条・88条・93条)予備に加えて陰謀も処罰される
教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板には建物と乗り物の絵が四つ横に並び、左から「人が住む家(108条)」「他人所有の空き倉庫(109条1項)」「自己所有の倉庫(109条2項)」「自動車(110条)」。左の二つの上に丸

判例は、予備罪に中止犯の規定を準用しません

予備をした後、実行に着手する前に自分の意思でやめた場合に、43条ただし書を準用して刑を減免できるかが問題になります。最大判昭和29年1月20日(予備の中止)は、強盗予備の事案で、予備罪には中止未遂の観念を容れる余地のないものであるとして、準用を否定しました。中止犯は実行の着手後に中止した場合の規定であり、予備罪は準備をした時点で既遂に達しているからです。「予備罪に中止未遂の成立する余地はない」という肢は正しく、「強盗予備罪について中止犯が成立し得る」という肢は誤りです。包丁を携帯して盗みに入る事務所を探していたが、悔悟の念を生じて断念した事例について「甲に強盗予備罪の中止犯は成立しない」という肢は正しいです。ナイフを携行して被害者宅に向かったが、罪悪感を覚えて引き返した事例について「甲には,強盗予備罪の中止犯が成立する」という肢は誤りです。この判例に対しては、実行に着手してからやめた者は必ず刑の減免を受けるのに、より早い段階でやめた者が減免を受けられないのは不均衡であるという批判が向けられ、準用を認める見解が有力に主張されています。殺人予備と放火予備には情状により刑を免除できる規定がありますが、強盗予備にはその規定がないので、不均衡は強盗予備で大きくなります。

法廷の場面。被告人席の男性(札「行為者」)が手を挙げている。行為者の吹き出し「実行する前に、自分の意思でやめました」。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、手元に条文の札「43条ただし書:実行に着手した後の中止」を掲げている。法壇の前

予備罪にも共同正犯が成立します

60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者」を正犯とします。この「実行」に予備行為が含まれるかについて、最決昭和37年11月8日(殺人予備罪の共同正犯)は、殺害の計画を打ち明けられて毒物の入手を依頼され、青酸ソーダを入手して手渡した者を殺人予備罪の共同正犯とした原判決の判断を正当としました。予備罪も、基本となる構成要件を修正した一つの構成要件であり、その実行行為を考えることができるからです。「基本的構成要件の実現に向けた行為に限定され、予備行為はこれに含まれないから、予備罪の共同正犯は成立しない」という肢は誤りです。この事件では、手渡された毒物は使われませんでした。渡した物が使われなくても、殺人の準備を共同してしたことに変わりはありません。毒薬を購入して渡したが、相手が計画を変更して包丁で刺して殺害した事例について「甲には,殺人予備罪の共同正犯が成立する」という肢は正しいです。「甲が乙に渡した毒物が利用されていないので、甲に殺人予備罪の共同正犯は成立しない」という肢は誤りです。

他人の犯罪のための準備が予備罪に当たるかについては、見解が分かれます

予備罪の条文は「罪を犯す目的で、その予備をした者」と定めています。そのため、自ら実行するつもりで準備をする場合(自己予備)が予備罪に当たることに争いはありません。これに対し、自分では実行するつもりがなく、他人が実行する犯罪のために準備をする場合(他人予備)については、予備罪の正犯に当たらないとする見解と、当たるとする見解に分かれます。当たらないとする見解は、自ら実行する目的のない者は「罪を犯す目的」を欠くと考え、このような者は予備罪の幇助にとどまるとします。先の殺人予備罪の共同正犯の事件でも、第一審は他人予備を否定して幇助としましたが、控訴審と最高裁は共同正犯の成立を認めました。自ら実行する目的のある者と共同して準備をした場合には、目的のない者にも共同正犯が成立し得るというのが、この判例から導かれる結論です。予備罪に対する教唆や幇助についても、成立を認める見解と、処罰範囲が広がりすぎるとして否定する見解があります。

刑法201条

第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

刑法237条

強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。

論文ではこう使う

論文では、準備の段階で発覚した事例や、共犯者が凶器や毒物を調達した事例で使います。まず、実行の着手が認められないことを確認し、その罪に予備を処罰する規定があることを条文で示します。次に、行為者に「罪を犯す目的」があることと、準備行為が実行に役立つ客観的な危険性を備えていることを認定します。自分の意思でやめた事例では、43条ただし書の準用の可否を論じます。判例は準用を否定していますが、着手後に中止した場合との均衡と、中止犯の減免根拠が予備の段階にも当てはまることを理由に、準用を認める立場で書くこともできます。調達した者が自ら実行する目的を持たない事例では、他人予備の問題を指摘し、実行する目的のある者との共同正犯として処理できるかを検討します。

試験ではこう問われる

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