恐喝罪(強盗との区別・処分行為)とは
きょうかつざい
恐喝罪とは、相手方の反抗を抑圧するに至らない程度の暴行または脅迫を加えて畏怖させ、その畏怖に基づいて財物を交付させ、または財産上不法の利益を得る罪です。暴行・脅迫が反抗を抑圧するに足りる程度に達していれば、恐喝罪ではなく強盗罪になります。
路上で「金を出さないと殴るぞ」とすごまれ、怖くなって財布を渡した場面を考えます。被害者は、逆らえないほど押さえ込まれたわけではなく、渡さなければ痛い目にあうと考えて、仕方なく自分で渡しています。このように、怖がらせて相手に差し出させるのが恐喝です。ナイフを突き付けて抵抗できなくして奪うのは強盗であり、被害者に「渡すかどうか」を決める余地が残っているかどうかで、二つの罪が分かれます。
恐喝は、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行・脅迫で畏怖させ、財物を交付させる罪です
恐喝とは、財物や利益を交付させる手段として、相手方を畏怖させるような暴行または脅迫を加えることをいい、その程度は相手方の反抗を抑圧するに至らないものです。暴行・脅迫が、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度であれば、強盗罪になります。恐喝罪の脅迫で告知する害悪は、それ自体が違法なものである必要はありません。「甲が告知した害悪の内容は違法なものではないから、甲に恐喝罪は成立しない」という肢は誤りです。他人の犯罪事実を警察に申告すること自体は適法ですが、これを種にして相手を畏怖させ、口止め料を提供させれば恐喝罪になります(最判昭和29年4月6日)。恐喝罪は、脅迫を加えた時点で実行の着手が認められ、未遂も処罰されます(250条)。「手紙を見たXの妻は冗談であると思い,その内容をXに伝えなかった。甲には恐喝未遂罪が成立する」という肢は正しいです。
畏怖した相手方が奪取を黙認した場合も、交付に当たり恐喝罪は既遂になります
恐喝罪は、詐欺罪と同じく、被害者の瑕疵ある意思に基づく処分行為を通じて財産を得る罪です。もっとも、被害者が自分の手で渡すことまでは必要ありません。最判昭和24年1月11日は、恐喝罪の本質は被恐喝者の畏怖による瑕疵ある同意を利用する財物の領得行為であるとして、畏怖して黙認しているのに乗じて恐喝者が財物を奪取した場合にも恐喝罪が成立するとしました。「乙は,甲の脅迫により畏怖し,甲が乙の上着の内ポケットに手を入れて財布を抜き取ることを黙認した。この場合,甲には,恐喝未遂罪が成立するにとどまる」という肢は誤りです。「この場合、Aによる交付行為がないから、甲に恐喝未遂罪が成立するにとどまる」という肢も誤りです。財産上の利益についても、最決昭和43年12月11日(黙示の処分行為と恐喝罪)は、飲食代金の請求を脅迫によって断念させた事案で、被害者側の黙示的な少なくとも支払猶予の処分行為が存在するとして、2項恐喝罪の成立を認めています。
うそを交えていても、相手方が畏怖の結果として交付したのであれば、恐喝罪だけが成立します
欺く行為と脅迫の両方が用いられた場合、どちらの罪になるかは、相手方が錯誤と畏怖のどちらによって交付したかで決まります。最判昭和24年2月8日は、警察官と称した虚偽の部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生じさせる一材料となり、その畏怖の結果として財物を交付したときは、詐欺罪ではなく恐喝罪になるとしました。「乙は,逮捕されるかもしれないと畏怖した結果,甲に盗品を交付した。この場合,甲には,恐喝既遂罪が成立する」という肢は正しいです。「この場合、甲の虚言もAを畏怖させる一材料となるから、甲に恐喝罪が成立する」という肢も正しいです。交付させた物が盗品であっても、窃盗犯人の占有は保護されるので、恐喝罪の成立は妨げられません。食中毒になったとうそを言ってビラをまくと脅した事例でも、被害者がうそと気付きつつ畏怖して現金を渡したのであれば、恐喝既遂罪が成立します。
財物と利益を併せて得れば1個の恐喝罪となり、監禁罪とは併合罪になります
恐喝罪の罪数は、肢で繰り返し問われています。「甲は,乙を恐喝して乙から財物の交付を受けるとともに財産上の利益を得た。甲には,包括して1個の恐喝罪が成立する」という肢は正しく、1項と2項は同じ罪質なので、1個の行為で財物と利益を得た場合は包括して1個の恐喝罪です(大判明治45年4月15日)。「甲は,乙ら3名をその面前で同時に恐喝して3名全員からそれぞれ財物を出させ,その3名分の財物の交付を乙から一括して受けた。甲には,3個の恐喝罪が成立し,これらは併合罪となる」という肢は誤りで、1個の行為で3名を恐喝しているので、3個の恐喝罪は観念的競合になります(大判明治43年9月27日)。「甲は,乙を恐喝して乙から財物の交付を受け,その恐喝の手段として用いられた暴行により乙に傷害を負わせた。甲には,恐喝罪と傷害罪が成立し,これらは併合罪となる」という肢も誤りで、恐喝の手段である暴行で傷害を負わせた場合、恐喝罪と傷害罪は観念的競合です(最判昭和23年7月29日)。「甲は,乙が窃取した財物と知りながら,乙を恐喝してその財物の交付を受けた。甲には,盗品等無償譲受け罪と恐喝罪が成立し,これらは併合罪となる」という肢も誤りです。大判昭和6年3月18日は、盗品と知りながらこれを所持する者を恐喝して交付を受けた場合に、恐喝罪と盗品等無償譲受け罪が成立するとしており、1個の行為によるものなので観念的競合になります。学説には、本犯者との合意に基づく譲受けとはいえないので恐喝罪だけが成立するとする見解もありますが、いずれにしても併合罪にはなりません。これに対し、「この場合,甲には監禁罪と恐喝罪が成立し,両罪は併合罪となる」という肢は正しいです。最判平成17年4月14日(監禁罪と恐喝罪の罪数)は、恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても、両罪は犯罪の通常の形態として手段または結果の関係にあるものとは認められず、牽連犯の関係にはないとしました。「甲には,監禁罪と恐喝罪が成立し,これらは牽連犯となる」という肢は誤りです。「この場合、監禁罪と恐喝罪が成立し、これらは牽連犯となる」という肢も誤りです。
- 財物の交付を受け、利益も得た包括して1個の恐喝罪
- 1個の行為で3名を同時に恐喝した3個の恐喝罪の観念的競合
- 恐喝の手段の暴行で傷害を負わせた恐喝罪と傷害罪の観念的競合
- 恐喝の手段として監禁した監禁罪と恐喝罪の併合罪(最判平成17年4月14日)
- 盗品と知って恐喝で交付させた判例は恐喝罪と盗品等無償譲受け罪の観念的競合。併合罪ではない
監禁罪と恐喝罪を併合罪とする見解は、両罪を別個の行為とみて、類型的な手段・結果の関係を否定します
予備試験2013年問9は、監禁中に脅迫して現金を喝取した場合に監禁罪と恐喝罪が併合罪になるという見解の理解を問いました。この見解は、監禁行為と恐喝行為を社会的に見て1個の行為とは考えていません。1個の行為と考えるなら、観念的競合になるからです。この見解は、監禁が恐喝の手段として用いられることが類型的に予定されることを根拠とするものでもありません。それを根拠にすれば牽連犯になるからです。この見解は、監禁罪と恐喝罪の関係を、判例における監禁罪と殺人罪の関係と同じように考えています。判例は、別個の殺害行為を予定して逮捕監禁に及んだ場合の監禁罪と殺人罪を併合罪としています(最判昭和63年1月29日)。逮捕罪と監禁罪は、判例上、包括して1個の罪とされているので、この見解の考え方とは異なります。
恐喝罪にも親族相盗例が準用され、直系血族との間では同居していなくても刑が免除されます
251条は、親族間の犯罪に関する特例(244条)を恐喝の罪に準用しています。配偶者、直系血族または同居の親族との間で恐喝罪を犯した者は、刑が免除されます。直系血族については、同居していることは要件ではありません。「甲は,別居している祖父乙から現金を脅し取った。この場合,甲には恐喝罪が成立するが,その刑は免除される」という肢は正しいです。「甲が,同居していない祖父乙を恐喝して同人から現金の交付を受けた場合,甲の恐喝行為について刑は免除されない」という肢は誤りです。祖父は直系血族ですから、別居していても刑は免除されます。これに対し、強盗罪には親族相盗例は準用されません。
刑法249条1項
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
刑法249条2項
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
論文ではこう使う
論文では、まず暴行・脅迫の程度を認定し、強盗罪と恐喝罪のどちらを検討するかを決めます。社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度かどうかを、凶器の有無、時刻と場所、人数、被害者の年齢や体格などの事実から判断し、その程度に至らないときに恐喝罪を検討します。恐喝罪では、暴行・脅迫、畏怖、畏怖に基づく処分行為、財物や利益の移転を順に認定します。被害者が自分の手で交付していない事例では、最判昭和24年1月11日を踏まえ、畏怖して奪取を黙認したことが処分行為に当たることを示します。うそが交じっている事例では、被害者が交付した動機が錯誤か畏怖かを問題文から特定し、畏怖が決め手であれば恐喝罪だけを成立させます。債権の取立ての事例では、権利行使と恐喝の問題として、手段が社会通念上一般に忍容すべき程度を超えているかを検討します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。