併合罪とは
へいごうざい
併合罪とは、確定裁判を経ていない2個以上の罪です(刑法45条前段)。科刑上一罪にならない数罪をまとめて処断する制度で、2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします(47条)。
窃盗と傷害を別々の日に犯した人が、まとめて裁判を受けるとします。それぞれの刑を単純に足し合わせると、刑が重くなりすぎることがあります。かといって、重い方の刑だけで済ませると、2つ目の罪を犯した分が評価されません。そこで刑法は、同時に裁判できたはずの数罪を1つのグループにまとめ、最も重い罪の刑を1.5倍まで重くした1つの刑で処断することにしました。このグループが併合罪です。
確定裁判を経ていない2個以上の罪が併合罪になり、確定裁判があるとその前後で分かれます
併合罪になるのは、まず、確定裁判を経ていない2個以上の罪です(45条前段)。同時に裁判を受ける可能性があった罪を、まとめて処断する趣旨です。次に、ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪と、その裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪になります(45条後段)。A罪、B罪、C罪の順に罪を犯し、B罪について拘禁刑以上の刑に処する裁判が確定した後にC罪を犯した場合、A罪とB罪は併合罪ですが、C罪は確定裁判の後に犯した罪なので、A罪・B罪とは併合罪になりません。確定裁判の前の罪と後の罪には、それぞれ別に刑が言い渡されます。併合罪のうち既に確定裁判を経た罪があるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断します(50条)。
有期拘禁刑は、最も重い罪の長期の1.5倍を長期としますが、各罪の長期の合計と30年を超えられません
2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします(47条本文)。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできず(同条ただし書)、加重しても30年が上限です(14条2項)。短期は、各罪の短期のうち最も重いものによります。「殺人と傷害の併合罪を犯した者について,殺人につき有期懲役刑,傷害につき懲役刑をそれぞれ選択した場合,処断刑は,5年以上30年以下の懲役となる」という肢は正しいです。殺人罪の有期刑は5年以上20年以下、傷害罪は15年以下なので、長期は20年の1.5倍の30年となり、合計の35年を超えません。出題当時の懲役は、現在は拘禁刑です。「甲は,併合罪関係にあるA罪(法定刑は10年以下の懲役)とB罪(法定刑は3年以下の懲役)を犯して両罪で起訴された。この場合,裁判所は,甲に対し,懲役15年の判決を言い渡すことができる」という肢は誤りです。10年の1.5倍は15年ですが、A罪とB罪の長期の合計は13年なので、言い渡せるのは13年までです。
- 有期拘禁刑と有期拘禁刑最も重い罪の長期の1.5倍を長期とする。各罪の長期の合計を超えない。30年を超えない(47条・14条2項)
- 死刑に処するとき他の刑を科さない。没収は科すことができる(46条1項)
- 無期拘禁刑に処するとき他の刑を科さない。罰金・科料・没収は科すことができる(46条2項)
- 罰金と他の刑併科する(48条1項)
- 罰金と罰金それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する(48条2項)
- 拘留・科料と他の刑併科する。2個以上の拘留・科料も併科する(53条)
罰金は拘禁刑と併科され、死刑・無期拘禁刑に処するときは他の刑を科しません
刑の種類が違うときの扱いは、条文で決まっています。罰金と他の刑とは併科します(48条1項)。「甲は,併合罪関係にあるA罪(法定刑は5年以下の懲役)とB罪(法定刑は20万円以下の罰金)を犯して両罪で起訴された。この場合,裁判所は,甲に対し,懲役2年及び罰金10万円の判決を言い渡すことができる」という肢は正しいです。A罪について拘禁刑を、B罪について罰金を選べば、両方を言い渡すことになります。2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断します(48条2項)。併合罪のうちの1個の罪について死刑に処するときは、没収を除いて他の刑を科しません。無期拘禁刑に処するときは、罰金・科料・没収を除いて他の刑を科しません(46条)。
処断刑の上限は、まず罪数を決めてから計算します
処断刑の範囲を問う問題では、成立する罪が併合罪か科刑上一罪かで上限が変わります。窃盗の後に反抗を抑圧するに至らない程度の暴行で傷害を負わせた事例では、事後強盗罪は成立せず、窃盗罪(10年以下)と傷害罪(15年以下)の併合罪になります。長期は15年の1.5倍の22年6月で、合計の25年を超えません。「【事例】Ⅰでは,甲を懲役22年に処することができる」という肢は正しいです。恐喝の手段である暴行で傷害を負わせた事例では、恐喝罪と傷害罪は観念的競合で、重い傷害罪の15年が上限です。「【事例】Ⅱでは,甲を懲役20年に処することができる」という肢は誤りです。住居に侵入して窃盗の後に強盗をした事例では、住居侵入罪とその後の罪が牽連犯となって全体が科刑上一罪となり、最も重い強盗罪の20年が上限です。「【事例】Ⅲでは,甲を懲役23年に処することができる」という肢は誤りです。併合罪になる事例だけが1.5倍の加重を受けるので、「処断刑の上限が最も重いのは【事例】Ⅲである」という肢は誤りで、「処断刑の上限が最も軽いのは【事例】Ⅱである」という肢は正しいです。
手段と結果の関係にも1個の行為にも当たらない数罪は、併合罪になります
数罪が成立し、観念的競合にも牽連犯にもならなければ、併合罪です。「甲には,窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し,両罪は併合罪となる」という肢は正しいです。「甲に窃盗教唆罪及び盗品等有償処分あっせん罪が成立し、両罪は併合罪となる」という肢も正しいです。窃盗を教唆した者が盗品を買い受けたり、売却をあっせんしたりしても、窃盗教唆罪と盗品等に関する罪は通例として手段と結果の関係にある罪ではありません。「甲及び乙を共同正犯とする2個の殺人罪が成立し、これらは併合罪となる」という肢は正しいです。共同正犯は各自が全部を実行したものとして扱われ、2人を別々に殺害した2個の殺人罪は併合罪になります(傷害罪について最決昭和53年2月16日)。「甲には,現住建造物等放火罪及び詐欺罪が成立し,これらは併合罪となる」という肢は正しいです。「甲には,強盗殺人罪及び死体遺棄罪が成立し,これらは併合罪となる」という肢は正しいです。
併合罪の刑は、加重した処断刑の範囲内で全体に対して1つ決めます
47条で加重した後の刑は、併合罪を構成する各罪全体に対する1つの処断刑です。判例は、処断刑の範囲内で具体的な刑を決めるに当たり、各罪についてあらかじめ個別に量刑判断をしたうえでこれを合算することは、法律上予定されていないとしています(最判平成15年7月10日)。監禁致傷罪と軽微な窃盗罪の併合罪で、監禁致傷罪の刑の上限を超える刑を言い渡すことも、加重された処断刑の範囲内であれば許されます。
刑法45条
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
刑法47条
併合罪のうちの二個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
論文ではこう使う
論文では、罪数処理の結論として書きます。各罪の成立を認定した後、包括一罪・観念的競合・牽連犯のいずれにも当たらないことを確かめ、「以上の罪は併合罪となる(45条前段)」と条文を挙げて結びます。一部が科刑上一罪になる場合は、その関係を先に書き、「これと◯◯罪とは併合罪となる」と続けます。処断刑の計算まで書く必要は通常ありません。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。