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用語集 / 刑法 / 牽連犯とかすがい現象

牽連犯とかすがい現象とは

けんれんはんとかすがいげんしょう

刑法 罪数・刑罰の適用

牽連犯とは、犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる場合です。数個の罪が成立しますが、その最も重い刑により処断されます(刑法54条1項後段)。かすがい現象とは、本来は併合罪となる数罪が、それぞれ別の1個の罪と科刑上一罪の関係に立つために、全体が科刑上一罪となることです。

空き巣は、他人の家に入り込んでから物を盗みます。住居侵入罪と窃盗罪の2つの罪が成立しますが、侵入は盗むための手段であり、2つを合わせて1つの犯行といえます。罪を犯す意思決定も実質的には1回です。そこで刑法は、手段と結果の関係にある数罪を、最も重い刑で1回だけ処断することにしています。これが牽連犯です。どの組合せが手段と結果の関係にあるといえるかは、犯罪の性質から類型的に決まります。

夜の住宅の前の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で画面右に立つ。左で男性(札「甲」)が住宅の窓から中へ入ろうとしており、窓の横に札「住居侵入罪:手段」。室内の棚の上の宝石箱に札「窃盗罪:結果」。2枚の札を深紅の鎖が1本でつなぎ、札「牽連犯

手段と結果の関係は、罪質上通例そうなるかどうかで判断されます

牽連犯になるには、数罪の間に、罪質上通例として手段と結果の関係があることが必要です(最大判昭和24年12月21日)。行為者がたまたま一方を他方の手段にしたというだけでは足りません。通常そのような関係にある罪どうしだからこそ、1罪分の刑で足りるといえるからです。「甲が乙に腕時計の窃盗を唆したことと,その売却をあっせんしたことは,原因と結果の関係に立つので,窃盗教唆罪と盗品等有償処分あっせん罪は牽連犯となる」という肢は誤りです。窃盗の教唆と、盗品の有償処分のあっせんは、通例として手段と結果の関係にあるとはいえないので、両罪は併合罪になります。「甲に現住建造物等放火罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる」という肢は誤りです。保険金をだまし取るための放火であっても、放火罪と詐欺罪は通例として手段と結果の関係にある罪ではなく、併合罪になります。

住居侵入罪とその後の罪、文書偽造罪と行使罪と詐欺罪は牽連犯になります

判例が牽連犯を認めてきたのは、住居侵入罪に関するものと、文書偽造罪に関するものが中心です。「甲には,住居侵入罪及び殺人罪が成立し,両罪は併合罪となる」という肢は誤りです。住居侵入罪と殺人罪は牽連犯になります。「甲には,住居侵入罪及び窃盗罪が成立するが,これらは併合罪となる」という肢は誤りです。牽連犯かどうかは罪質から類型的に判断するので、侵入した時の目的が別の罪であっても、住居侵入罪と侵入後の窃盗罪は牽連犯になります。出題当時の強制性交等罪は、現在は不同意性交等罪にあたります。文書については、「甲には,有印私文書偽造罪,同行使罪及び詐欺罪が成立し,これらは牽連犯となる」という肢は正しいです。偽造は行使の手段、行使は詐欺の手段という関係が順につながります。「甲には,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立し,これらは牽連犯となる」という肢は正しいです。身の代金目的の拐取についても、「身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪は牽連犯となり,これらの各罪と監禁罪は併合罪となる」という肢は正しいです。

  • 牽連犯となる組合せ住居侵入罪と窃盗罪・強盗罪・殺人罪・傷害罪・放火罪/文書偽造罪と偽造文書行使罪/偽造文書行使罪と詐欺罪/不実記録罪と供用罪/身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪
  • 牽連犯とならない組合せ(併合罪)監禁罪と恐喝罪/監禁罪と傷害罪/殺人罪と死体遺棄罪/凶器準備集合罪と傷害罪・暴行罪/保険金目的の放火罪と詐欺罪/窃盗教唆罪と盗品等に関する罪/カードの窃盗罪・詐欺罪とそのカードを使った詐欺罪・窃盗罪
  • そもそも1罪になる組合せ偽造通貨行使罪と詐欺罪(詐欺罪は吸収される)/逮捕と監禁(220条の包括一罪)
教室の場面。先生が教壇に立ち、黒板が左右に分かれている。左の見出し「牽連犯」の下に「住居侵入+窃盗・強盗・殺人」「文書偽造+行使+詐欺」。右の見出し「併合罪」の下に「監禁+恐喝」「殺人+死体遺棄」「凶器準備集合+傷害」。中央の仕切り線の上に

監禁と恐喝、殺人と死体遺棄、凶器準備集合と傷害は牽連犯にならず、併合罪になります

行為者が手段として使っていても、通例の関係がなければ併合罪です。恐喝の手段として監禁した場合について、判例は、監禁罪と恐喝罪は犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められず、牽連犯の関係にはないとしました(最判平成17年4月14日)。「甲には,監禁罪と恐喝罪が成立し,これらは牽連犯となる」という肢は誤りです。「監禁罪と恐喝罪が成立し、これらは牽連犯となる」という肢も誤りです。「甲には監禁罪と恐喝罪が成立し,両罪は併合罪となる」という肢は正しいです。「甲には,殺人罪及び死体遺棄罪が成立し,両罪は牽連犯となる」という肢は誤りです。殺人罪と死体遺棄罪は併合罪です。「甲には,凶器準備集合罪と傷害罪が成立し,これらは牽連犯となる」という肢は誤りです。判例は、凶器準備集合罪と、その目的であった加害行為の罪とは併合罪になるとしています(最決昭和48年2月8日)。順序が逆になっている場合も牽連犯にはなりません。「甲には詐欺罪,有印私文書偽造及び同行使罪が成立し,これらは牽連犯として一罪となる」という肢は誤りです。この事例では、詐欺罪が既遂に達した後に文書を偽造して行使しているので、偽造文書の行使が詐欺の手段になっていません。通貨については、「甲には通貨偽造罪、偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる」という肢は誤りです。詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収されて成立しないので、通貨偽造罪と偽造通貨行使罪の2罪が牽連犯になります。

住居侵入罪が数個の殺人罪をつなぎ、全体が科刑上一罪になります

住居に侵入して数人を順に殺害した場合、殺人罪どうしは別個の行為によるもので、本来は併合罪です。しかし、住居侵入罪はそれぞれの殺人罪と牽連犯の関係に立ちます。判例は、1個の住居侵入罪と3個の殺人罪とがそれぞれ牽連犯の関係にあり、全体を1罪として最も重い罪の刑で処断すべきものとしました(最決昭和29年5月27日)。住居侵入罪が、材木をつなぎとめるかすがいの役割を果たすことから、かすがい現象と呼ばれます。「甲には1個の住居侵入罪と3個の殺人罪が成立するが,住居侵入罪と各殺人罪は牽連犯となり,全体が科刑上一罪となる」という肢は正しいです。「住居侵入罪と乙に対する殺人罪が牽連犯として一罪となり,丙及び丁に対する殺人罪と併合罪になる」という肢は誤りです。「乙に対する住居侵入罪及び殺人罪が成立し,これらは牽連犯となり,これと丙に対する殺人罪が併合罪となる」という肢も誤りです。侵入時に殺害を予定していなかった者に対する殺人罪も、住居侵入罪と牽連犯の関係に立つからです。「甲には,住居侵入罪及び1個の強盗致傷罪が成立し,これらは牽連犯となる」という肢は誤りです。乙と丙の2名を負傷させているので強盗致傷罪は2個成立し、住居侵入罪がかすがいとなって全体が科刑上一罪になります。この処理には、屋外で数人を殺害すれば併合罪として刑が加重されるのに、住居侵入罪が加わるとかえって加重されなくなるのは不均衡だという批判があります。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、法壇の前の大きな掲示板に図解。中央上に札「住居侵入罪」、その下に横に並ぶ3枚の札「Xに対する殺人罪」「Yに対する殺人罪」「Zに対する殺人罪」。住居侵入罪の札から3枚それぞれへ線が伸び、

牽連犯は最も重い刑で処断され、長期の加重はされません

牽連犯の効果は観念的競合と同じで、成立した数罪のうち最も重い刑により処断します。「牽連犯について有期の懲役又は禁錮に処するとき,その刑は,その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする」という肢は誤りです。最も重い罪の刑の長期にその2分の1を加えるのは併合罪の処理(47条)であり、牽連犯では加重をしません。牽連犯になるか併合罪になるかで処断刑の上限が変わるので、どの組合せが牽連犯になるかが繰り返し問われます。

刑法54条1項

一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

論文ではこう使う

論文では、各罪の成立を認定した後、罪数処理の最後に書きます。住居に侵入して窃盗や強盗、殺人に及んだ事例では、「住居侵入罪と窃盗罪は手段と結果の関係にあるので牽連犯となる(54条1項後段)」と条文を挙げて結びます。住居内で複数の罪を犯した事例では、各罪がそれぞれ住居侵入罪と牽連犯の関係に立ち、全体が科刑上一罪になること(かすがい現象)まで書きます。文書を偽造して行使し財物をだまし取った事例では、偽造罪・行使罪・詐欺罪が順次牽連犯になると書きます。監禁して恐喝した事例など、判例が牽連犯を否定している組合せは併合罪として処理します。

試験ではこう問われる

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