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用語集 / 刑法 / 横領行為と不法領得の意思

横領行為と不法領得の意思とは

おうりょうこういとふほうりょうとくのいし

刑法 財産犯(詐欺・横領・背任ほか)

横領行為とは、自己の占有する他人の物について、不法領得の意思を実現する一切の行為をいいます。横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。

友人から借りているカメラを、買い取ってくれる店に持ち込んで「これを売りたい」と申し出た場面を考えます。店がまだ買うと返事をしていなくても、借りた人は、持ち主でなければできない「売る」という処分に踏み出しています。横領罪は、物がすでに手元にあるので、物を移動させることではなく、持ち主のように振る舞う意思を外に表したことをもって成立します。そのため、横領罪には未遂を処罰する規定がありません。

買取店のカウンターの場面。男性(札「甲:借りているカメラ」)がカメラをカウンターに置き、吹き出し「これを買い取ってほしい」。カウンターの向こうの店員の男性はまだ返事をせず、カメラを見ている。店員の頭上に札「買受けの意思表示はまだない」。カウ

横領行為は、不法領得の意思を実現する一切の行為をいいます

最判昭和24年3月8日は、横領罪の成立に必要な不法領得の意思を、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思と定義しました。売却、贈与、質入れ、抵当権の設定、費消、着服、返還の拒絶などが横領行為に当たります。窃盗罪の不法領得の意思と違い、経済的用法に従って利用・処分する意思という限定は付されていません。そのため、隠匿する目的であっても不法領得の意思が認められます。「この場合,甲に不法領得の意思は認められず,業務上横領罪は成立しない」という肢は誤りです。大判大正2年12月16日は、業務上保管する公文書を隠匿目的で持ち出した事案で、その終局の目的を問わず横領罪に当たるとしました。他方、横領行為は故意による処分でなければなりません。「甲は,借り受けた自動車を運転中,ハンドル操作を誤って同車を海に転落させ,これを水没させてしまったが,そのまま放置した。甲に横領罪が成立する」という肢は誤りです。過失で水没させた自動車を放置しただけでは、所有者でなければできない処分をしたとはいえません。

動産は売却の意思表示をした時に、不動産は登記を完了した時に既遂になります

横領罪は、不法領得の意思が外部に現れた時点で既遂になります。動産の売却であれば、売却の意思表示をした時です。「甲の行為は不法領得の意思が外部的に発現したといえるから,丙が買受けの意思表示をしなくても甲には横領罪が成立する」という肢は正しいです。「同人から買受けの意思表示がない場合,他人の所有権を侵害する状態には至っていないから,横領罪は成立しない」という肢は誤りです。大判大正2年6月12日は、自己の占有する他人の物を不法に売り渡そうとする行為があれば、相手方の買受けの意思表示を待たずに横領罪は完成するとしました。不動産の場合は、第三者への所有権移転登記や抵当権設定登記を完了した時に既遂になります。「抵当権が実行されない限り当該土地に関する乙の所有権は影響を受けないから,甲には横領罪は成立しない」という肢は誤りです。「同抵当権が実行されることなく,後日,その登記が抹消されたとしても,甲には,横領罪が成立する」という肢は正しいです。最決平成21年3月26日は、不実の抵当権設定仮登記を了したことも、不法領得の意思を実現する行為として十分であるとしています。

  • 動産の売却売却の意思表示をした時。相手方の買受けの意思表示は不要
  • 不動産の売却・抵当権設定所有権移転登記・抵当権設定登記を完了した時。不実の仮登記でも足りる
  • 金銭費消・着服した時。預金であれば払い戻した時など
  • 未遂処罰規定がない

後日補填する意思があっても、預かった金銭を費消すれば横領罪が成立します

不法領得の意思は、自己の利益を図る意図を必要とせず、後日補填する意思があったとしても否定されません。最判昭和24年3月8日は、不法に処分した物を後日に補填する意思が行為当時にあったからといって、横領罪の成立を妨げるものではないとしています。「この場合,甲がたまたま補填することができ,約定どおりに製茶の買い付けを行ったとしても,甲には,横領罪が成立する」という肢は正しいです。使途を定めて預かった金銭を、確実に補填できるあてがないのに流用すれば、その時点で委託の趣旨に反する処分をしているからです。これに対し、いつでも確実に補填できる資力があり、一時的に流用するにすぎない場合には、不法領得の意思が否定される余地があると解されています。使い込んだ金銭の穴埋めに、新たに集金した金銭を充てた場合も同じです。「この場合,穴埋めに充てた現金について,甲に不法領得の意思は認められず,業務上横領罪は成立しない」という肢は誤りで、穴埋めに充てた現金についても、権限なく自由に処分している以上、業務上横領罪が成立します。

専ら本人のためにする処分には、不法領得の意思が認められません

委託の趣旨に反する処分であっても、行為者が専ら本人(委託者)のためにする意思で行ったときは、所有者のように振る舞ったとはいえず、不法領得の意思が否定されます。この点について、最決平成13年11月5日(横領罪における不法領得の意思)は二つのことを示しました。一つは、行為が商法その他の法令に違反するという一事から、直ちに不法領得の意思を認めることはできないという点です。「法人の金員を管理する者が,同法人の金員を支出した場合,同支出が商法その他関係法令に照らして違法であっても,横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある」という肢は正しいです。行為の客観的な性質と行為者の主観は別の問題であり、法令に違反する行為でも、専ら会社のためにするとの意識で行うことはあり得るからです。もう一つは、会社の不利益を回避する意図があったとしても、専ら会社のためにしたといえなければ不法領得の意思が認められるという点です。「甲が,会社の不利益を回避する意図を有していたとしても,当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので,甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど,専ら会社のためにしたとは認められないときは,甲には,業務上横領罪が成立する」という肢は正しいです。この決定は、交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うのに必要な調査をしていないことなどから、交付の意図は専ら会社のためにするところにはなかったとしました。

会社の経理部の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で机の横に立ち、机の上に金庫と帳簿がある。経理部長の男性(札「甲:取締役経理部長」)が現金の束を鞄に入れて持ち出そうとしている。甲の吹き出し「会社を買い占めから守るためだ」。先生の吹き出し「

借りた物を約束の範囲を大きく超えて使い続けることも、横領行為になります

物を借りた者が、許された範囲を著しく超えて使用したり、返還を求められても拒んで使い続けたりすることも、所有者でなければできない処分に当たります。「Aに無断でそのまま10日間にわたり同車を乗り回した。この場合、甲に横領罪が成立することはない」という肢は誤りです。大阪高判昭和46年11月26日は、短時間の使用を許された自動車を8日間乗り回した事案で横領罪の成立を認めています。「これを拒否して上記同様に同車を使用し続けた。甲に横領罪は成立しない」という肢も誤りです。返還期日を過ぎ、返還の要求を拒んで使用を続けることは、不法領得の意思の現れと評価されます。

刑法252条1項

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。

最判昭和24年3月8日

横領罪の成立に必要な不法領得の意志とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいう

論文ではこう使う

論文では、「横領」の意義を、不法領得の意思を実現する一切の行為と定義し、不法領得の意思の内容を最判昭和24年3月8日の定式で示します。そのうえで、行為者のどの行為がこれに当たるかを特定し、その行為の時点で既遂になることを明示します。売却であれば意思表示の時、不動産であれば登記の時、金銭であれば費消・着服の時です。横領罪には未遂の処罰規定がないので、既遂時期の認定がそのまま罪の成否を決めます。行為者が会社や本人のためだったと主張する事例では、専ら本人のためにする意思であったかを検討します。処分の内容が本人にとって許される性質のものか、本人の利益になる合理的な見込みがあったか、必要な調査や手続を踏んだか、行為者自身の利益や保身の動機がなかったかを問題文から拾います。法令違反の支出であることは不法領得の意思を推認させる一事情になりますが、それだけで認定しないようにします。

試験ではこう問われる

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