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用語集 / 刑法 / 脅迫罪・強要罪

脅迫罪・強要罪とは

きょうはくざいきょうようざい

刑法 自由・私生活の平穏に対する罪

脅迫罪とは、本人又は親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫する罪です(222条)。強要罪とは、この脅迫又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害する罪です(223条)。

「家に火をつけてやる」と告げられた人は、たとえ気丈に振る舞っていても、安心して自分のことを自分で決められなくなります。刑法は、害を加えると告げて人を脅すこと自体を脅迫罪として処罰し、脅して無理に行為をさせたり、やめさせたりした場合を、より重い強要罪として処罰しています。どちらも、人が自分の意思で物事を決める自由を守るための罪です。

路上の場面。男性(札「甲」)が向かいの男性(札「A」)に指を突きつけ、吹き出しで「お前の家に火をつけてやる」と言っている。Aは腕を組んで平然と立っている。先生が裁判官役(札「裁判所」)で二人の横に立っている。先生の吹き出し「Aが畏怖しなかっ

脅迫は、一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知で、相手が現に畏怖したことは要りません

脅迫罪の「脅迫」は、一般に人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知をいいます(最判昭和35年3月18日)。この程度に達しているかは、告知の文言だけでなく、当事者の関係や周囲の状況を含めて判断されます。告知が相手に認識されれば足り、相手が現実に畏怖したことは必要ありません(大判明治43年11月15日)。「お前の家に火をつけてやる。」と告げたが「Aは畏怖しなかった」という事例で、「甲にはAに対する脅迫罪は成立しない」という肢は誤りです。口論の末に「ぶっ殺すぞ。」と怒号したが「乙は剛胆であったため畏怖しなかった」という事例でも、脅迫罪が成立します。他方、告知は相手に認識されなければなりません。電子メールが迷惑メールに振り分けられ「Aは同メールの存在に気付かなかった」という事例で、「甲にはAに対する脅迫罪は成立しない」という肢は正しいです。「乙宅を爆破する。」と記載した手紙を乙が「開封しないまま廃棄した」事例でも成立しません。脅迫罪には未遂を処罰する規定がないので、告知が認識されなかった場合は処罰されません。

告げる害悪は、告知者が左右できるものでなければなりません

222条は「害を加える旨」の告知を求めているので、告げられる害悪は、告知者が直接又は間接にその発生を左右できるものとして告げられる必要があります。天災や天罰のように告知者が支配できない害悪を告げても、脅迫には当たりません。掲示板に「そんな投稿をするやつには天罰が下る。」と書き込んだ事例では、これを読んだ乙が畏怖したとしても脅迫罪は成立しません。これに対し、告げる内容が適法な行為であっても脅迫になり得ます。判例は、真に告訴する意思がないのに、相手を畏怖させる目的で告訴すると告げることは脅迫罪になるとしています(大判大正3年12月1日)。Aを告訴する意思はなかったが、単にAを畏怖させようと考えて「告訴してやる。」と告げた事例で、「甲にはAに対する脅迫罪は成立しない」という肢は誤りです。権利の行使として正当といえる告知であれば、正当行為として違法性が阻却されます。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、板書を指している。黒板は左右二つの欄に分かれ、左の欄に「家に火をつけてやる」と書かれて丸印、右の欄に「天罰が下る」と書かれてバツ印が付いている。左の欄の下に「告知者が左右できる害悪」、

加害の対象は、相手方本人とその親族に限られます

222条1項は相手方本人の、2項は相手方の親族の、生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知を処罰しています。加害の対象はこの二つに限られます。親族とは民法上の親族をいい、配偶者の兄弟のような姻族も含まれます。「乙の妻の実兄である丙を殺害する旨告知し」た事例では、丙は乙の親族なので脅迫罪が成立します。これに対し、「お前の親友のBを殺すぞ。」と告げた事例で、「甲にはAに対する脅迫罪が成立する」という肢は誤りです。親友は親族ではないからです。「BがAの内縁の妻であった場合,甲には脅迫罪は成立し得ない」という肢は正しいです。内縁の妻は民法上の親族に当たらず、罪刑法定主義から「親族」を広げて読むことはできません。また、脅迫罪は人の意思決定の自由を守る罪なので、客体は自然人に限られ、法人に対する脅迫罪は成立しないと解されています。会社の総務課長に対して「乙社の商品不買運動を行って乙社の営業活動を妨害する旨告知し」た事例では、告げられた害悪は会社の営業に対するもので、課長本人やその親族に対するものではないので、脅迫罪は成立しません。

  • 本人(222条1項)相手方本人の生命、身体、自由、名誉又は財産
  • 親族(222条2項)相手方の親族の生命、身体、自由、名誉又は財産。妻の実兄は含まれ、親友・内縁の妻は含まれません
  • 法人会社の営業に対する加害を告げても、会社に対する脅迫罪は成立しないと解されています

手紙が誤って別人に届いて読まれた場合は、読んだ人に対する脅迫罪が成立します

脅迫罪の故意は、害悪を告知することと、それが相手に認識されることの認識で足り、告げた害悪を実現する意思は要りません。Aを脅迫する意図でA宅に宛てて「お前の家に火をつけてやる。」と記載した手紙を郵送したところ、誤って隣のB宅に配達され、Bが読んで畏怖した事例で、「甲には,Bに対する脅迫罪が成立する」という肢は正しいです。甲が認識していたのはAという「人」への脅迫で、現実に生じたのもBという「人」への脅迫です。認識した事実と発生した事実が同じ構成要件の範囲内で一致しているので、Bに対する故意が認められます。

強要罪は未遂を処罰し、相手が従わなければ強要未遂罪になります

強要罪(223条)は、脅迫又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合に成立します。脅迫の内容は脅迫罪と同じで、加害の対象は本人と親族に限られます。暴行は人に向けられた有形力の行使であれば足ります。強要罪には未遂を処罰する規定があります(223条3項)。脅迫が義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害するために行われたときは、脅迫罪ではなく強要罪の問題になり、相手が従わなかったときは強要未遂罪が成立します。Aに告訴を思いとどまらせようと考えて「警察に届け出たら無事でいられると思うなよ。告訴するなよ。」と告げたが、Aが告訴をした事例で、「甲にはAに対する脅迫罪が成立し、Aに対する強要未遂罪は成立しない」という肢は誤りです。告訴という権利の行使を妨害するための脅迫なので強要未遂罪が成立し、脅迫罪は強要未遂罪に吸収されます。脅されても畏怖せず、哀れみから応じたにすぎない場合も、脅迫と結果の間に因果関係がないので未遂にとどまります。

警察署の入口の前の場面。男性(札「A」)が告訴状と書いた書類を持って警察署に入っていく。少し離れた電柱の陰で、男性(札「甲」)が悔しそうに見ている。甲の小さな吹き出し「告訴するなよと脅したのに」。先生が裁判官役(札「裁判所」)で手前に立ち、

刑法222条1項

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

刑法222条2項

親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法223条1項

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の拘禁刑に処する。

論文ではこう使う

論文では、脅して相手に行為をさせた事例で、どの罪を検討するかを振り分けるところから書きます。財物や財産上の利益を得るための脅迫であれば、相手の反抗を抑圧するに足りる程度なら強盗罪、その程度に至らなければ恐喝罪を検討します。財産と関係のない行為をさせた場合、たとえば謝罪文を書かせた、告訴を取り下げさせたという場合に強要罪を検討します。強要罪では、加害の対象が本人か親族か、告知が一般人を畏怖させるに足りるか、相手が畏怖した結果として義務のないことを行ったかを順に当てはめます。相手が従わなかったときは強要未遂罪とし、脅迫罪を別に成立させないようにします。

試験ではこう問われる

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