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用語集 / 刑法 / 略取・誘拐の罪の類型と親告罪

略取・誘拐の罪の類型と親告罪とは

りゃくしゅゆうかいのつみのるいけいとしんこくざい

刑法 自由・私生活の平穏に対する罪

略取・誘拐とは、人をその生活環境から離脱させ、自己又は第三者の事実的支配の下に置く行為です。暴行又は脅迫を手段とする場合が略取、欺罔又は誘惑を手段とする場合が誘拐で、刑法は客体と目的に応じて未成年者略取・誘拐、営利目的等、身の代金目的などの類型を分けています。

子どもを連れ去る行為は、連れ去られた本人の自由を奪うだけでなく、親が子を見守る関係も断ち切ります。お金もうけやわいせつ行為のために連れ去る場合や、家族に身の代金を払わせるために連れ去る場合は、被害者に及ぶ危険がさらに大きくなります。刑法は、だれを連れ去ったか、何の目的で連れ去ったかによって罪を分け、目的が悪質になるほど刑を重くしています。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、指し棒で板書を指している。黒板には三段の表が書かれ、上から「未成年者略取・誘拐 224条:目的を問わない」「営利目的等 225条:営利・わいせつ・結婚・加害の目的」「身の代金目的 22

略取・誘拐の罪は、客体が未成年者かどうかと、目的によって類型が分かれます

略取と誘拐は合わせて拐取と呼ばれます。未成年者略取・誘拐罪(224条)は、目的を問わず、未成年者を拐取しただけで成立します。未成年者とは18歳未満の者をいいます。これに対し、成年者を拐取する行為は、営利、わいせつ、結婚、生命若しくは身体に対する加害、身の代金、所在国外への移送といった目的があるときに限って処罰されます。「営利目的等略取誘拐罪にいう「結婚の目的」の「結婚」には,法律婚のみならず事実婚も含まれる」という肢は正しいです。このほか、人を買い受け又は売り渡す人身売買罪(226条の2)、拐取された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させる被略取者引渡し等罪(227条)があります。未遂は、拐取者身の代金要求罪などを除いて広く処罰されます(228条)。

  • 未成年者略取・誘拐(224条)客体は未成年者で、目的は問いません。3月以上7年以下の拘禁刑です
  • 営利目的等略取・誘拐(225条)営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で人を拐取する罪です。1年以上10年以下の拘禁刑です
  • 身の代金目的略取・誘拐(225条の2第1項)安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させる目的で人を拐取する罪です。無期又は3年以上の拘禁刑で、予備も処罰されます
  • 拐取者身の代金要求(225条の2第2項)人を拐取した者が、憂慮に乗じて財物を交付させ、又は要求する罪です。刑は1項と同じです
  • 所在国外移送目的略取・誘拐(226条)所在国外に移送する目的で人を拐取する罪です。2年以上の有期拘禁刑です
  • 人身売買(226条の2)人の買受けは3月以上5年以下、未成年者の買受けは3月以上7年以下、営利等の目的による買受けと売渡しは1年以上10年以下の拘禁刑です
  • 被略取者引渡し等(227条)拐取の罪を犯した者を幇助する目的などで、拐取された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させる罪です

営利やわいせつの目的で未成年者を拐取したときは、225条の罪だけが成立します

225条の客体は「人」で、未成年者も含まれます。未成年者を225条の目的で拐取した場合は、重い225条の罪の一罪だけが成立し、未成年者略取・誘拐罪は別に成立しません(大判明治44年12月8日)。わいせつな行為をする目的で14歳の女子中学生を欺いて車に乗せ、ホテルの一室に連れ込んで脅して室内にとどまらせた事例で、「わいせつ目的誘拐罪,監禁罪及び準強制わいせつ未遂罪」が成立するという肢は正しく、「未成年者誘拐罪,監禁罪及び準強制わいせつ未遂罪が成立する」という肢は誤りです。室内にとどまらせるための脅迫は監禁の手段なので、脅迫罪を別に並べた肢も誤りです。出題当時の準強制わいせつ未遂罪は、現在は不同意わいせつ未遂罪になります。報復のために暴行を加える目的で人を略取した事例で、相手を16歳の未成年者と誤信していたから「生命身体加害目的略取罪ではなく未成年者略取罪が成立する」という肢も誤りです。225条は客体の年齢を問わないので、年齢の誤信は罪名に影響しません。人身売買罪でも同じ関係になります。「営利の目的で未成年者を買い受けた場合,未成年者買受け罪のみが成立する」という肢は誤りで、成立するのは刑の重い営利目的の買受け罪(226条の2第3項)です。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、手元の起訴状を見ている。起訴状には二行が書かれ、一行目「未成年者誘拐罪 224条」に取消線が引かれ、二行目「わいせつ目的誘拐罪 225条」に丸印が付いている。証言台の前に男性の被告人(

身の代金目的の罪は目的犯で、予備も処罰されます

身の代金目的略取・誘拐罪(225条の2第1項)は、「近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的」を要件とします。「身の代金目的誘拐罪は,近親者その他誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的を主観的要素とする目的犯である」という肢は正しいです。拐取の時点でこの目的があれば成立し、実際に身の代金を要求したことは要りません。拐取した後に身の代金を要求したときは、拐取者身の代金要求罪(同条2項)が成立します。身の代金目的略取・誘拐罪は、未遂のほか予備も処罰され、実行に着手する前に自首すれば刑が減軽又は免除されます(228条の3)。罪数について、判例は、身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪は牽連犯になり、拐取した者をさらに監禁したときは、これらの各罪と監禁罪は併合罪になるとしています(最決昭和58年9月27日)。「身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪は牽連犯となり,これらの各罪と監禁罪は併合罪となる」という肢は正しいです。

公訴が提起される前に安全な場所に解放すれば、刑は必ず減軽されます

身の代金目的の罪では、被害者が殺害されるおそれがあります。そこで、犯人に引き返す道を与えて被害者の生命を守るために、228条の2は、公訴が提起される前に拐取された者を安全な場所に解放したときは「その刑を減軽する」と定めています。減軽は必要的です。「身の代金目的で成年者を略取し,公訴が提起される前に同成年者を安全な場所に解放すれば,身の代金目的略取罪の刑が必要的に減軽される」という肢は正しいです。「安全な場所」について、判例は、被拐取者が安全に救出されると認められる場所をいい、その安全とは、救出されるまでの間に具体的かつ実質的な危険にさらされるおそれのないことを意味するとしています(最決昭和54年6月26日)。「漠然とした抽象的な危険や不安感ないし危惧感を伴うのであれば、「安全な場所」とはいえない」という肢は誤りです。そこまで求めると解放を促すという規定の目的が果たせなくなるからです。

夜の交番の前の場面。交番の明かりの下で、警察官の男性(札「警察官」)が子ども(札「被拐取者」)を迎え入れている。少し離れた道路に停めた車の横に男性(札「犯人」)が立ち、その様子を見届けている。先生が裁判官役(札「裁判所」)で手前に立ち、壁の

親告罪になるのは、未成年者略取・誘拐罪とその幇助目的の引渡し等だけです

229条は、224条の罪と、同条の罪を幇助する目的で犯した227条1項の罪、これらの未遂罪を親告罪としています。「未成年者誘拐罪は親告罪である」という肢は正しいです。平成29年の改正前は、わいせつ又は結婚の目的による225条の罪なども親告罪でしたが、現在は親告罪ではありません。営利目的等、身の代金目的、所在国外移送目的の略取・誘拐罪や人身売買罪は、告訴がなくても公訴を提起できます。

刑法224条

未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。

刑法225条

営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。

刑法228条の2

第二百二十五条の二又は第二百二十七条第二項若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。

刑法229条

第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

論文ではこう使う

論文では、連れ去りの事例でまず罪名を特定します。手段が暴行又は脅迫なら略取、欺罔又は誘惑なら誘拐とし、目的を事実から認定して、224条ではなく225条や225条の2の罪になることを示します。未成年者を営利やわいせつの目的で拐取した事例では、225条の罪だけを挙げ、未成年者略取・誘拐罪を並べないようにします。連れ去った後に閉じ込めた場合は監禁罪を、身の代金を要求した場合は拐取者身の代金要求罪を加え、罪数は、身の代金目的拐取罪と要求罪が牽連犯、これらと監禁罪が併合罪と処理します。

試験ではこう問われる

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