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用語集 / 刑法 / 犯罪の分類

犯罪の分類(結果犯・危険犯・継続犯・状態犯・目的犯)とは

はんざいのぶんるい

刑法 構成要件

犯罪の分類とは、構成要件が結果の発生や法益の侵害をどこまで求めているか、犯罪がいつ終了するか、故意のほかに目的を求めているかという観点から、犯罪を整理する分け方です。行為客体の状態変化を要する結果犯、法益侵害の危険で足りる危険犯、法益侵害が続く間は犯罪が終了しない継続犯、結果の発生で犯罪が終了する状態犯、一定の目的を要件とする目的犯があります。

同じ「悪いこと」でも、人を死なせて初めて成立する罪もあれば、他人の家に入っただけで成立する罪もあります。車を盗む罪は盗んだ瞬間に終わりますが、人を閉じ込める罪は解放するまで続きます。条文ごとに、どこまでの事実があれば成立するのか、いつ終わるのかが違うからです。この違いを整理しておくと、危険が実際に生じなかった場合に罪が成立するか、途中から加わった人が共犯になるか、時効がいつから進むかを、条文から判断できるようになります。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板には四つの問いが縦に並ぶ。「行為客体の変化が必要か:結果犯/挙動犯」「法益侵害が必要か:侵害犯/危険犯」「いつ終了するか:状態犯/継続犯」「目的が必要か:目的犯」。先生の吹き出し「

結果犯は行為客体の状態変化を必要とし、侵害犯と危険犯は法益侵害まで必要かどうかで分かれます

犯罪の成立に行為客体の変化が必要かどうかという観点から、結果犯と挙動犯が区別されます。結果犯は、行為とは別に行為客体の状態変化の発生を必要とする犯罪で、人の死亡を要する殺人罪が例です。挙動犯はこれを必要とせず、住居侵入罪が例です。これとは別の観点として、法益の侵害まで必要か、その危険の発生で足りるかによって、侵害犯と危険犯が区別されます。二つの区別は観点が違うので、建造物の焼損を要する放火罪のように、結果犯であって危険犯でもある罪があります。「信用毀損罪は危険犯であるが,業務妨害罪は侵害犯である」という肢は誤りです。判例は、業務妨害罪についても、業務を妨害するおそれのある行為をすれば足り、現実に妨害の結果が発生したことを必要としないとしており、信用毀損罪と同じく危険犯と捉えています。

  • 結果犯と挙動犯行為客体の状態変化が必要か。殺人罪は結果犯、住居侵入罪は挙動犯
  • 侵害犯と危険犯法益侵害が必要か、危険の発生で足りるか。殺人罪は侵害犯、放火罪は危険犯
  • 具体的危険犯と抽象的危険犯条文が危険の発生を要件として書いているか。建造物等以外放火罪は具体的危険犯、現住建造物等放火罪は抽象的危険犯
  • 状態犯と継続犯犯罪がいつ終了するか。窃盗罪・傷害罪は状態犯、監禁罪は継続犯
  • 目的犯故意のほかに一定の目的を要件とする。身の代金目的略取等罪、通貨偽造罪

具体的危険犯は条文が危険の発生を要件とし、抽象的危険犯は行為があれば危険の発生を問いません

危険犯のうち、条文の中に危険の発生が書かれていて、現実に危険が発生したことを要するものを具体的危険犯といいます。条文に危険の発生が書かれておらず、その行為が行われれば足りるものを抽象的危険犯といいます。放火の罪では、現住建造物等放火罪(108条)と他人所有の非現住建造物等放火罪(109条1項)が抽象的危険犯で、自己所有の非現住建造物等放火罪(109条2項)と建造物等以外放火罪(110条)が具体的危険犯です。「建造物等以外放火罪は,抽象的危険犯である」という肢は誤りです。110条1項は「よって公共の危険を生じさせた」ことを要件としているからです。したがって、「公共の危険は発生しなかった。この場合,甲には建造物等以外放火罪が成立する」という肢も誤りです。自己所有の空き家については、「甲が自己の所有する空き家に放火したが,公共の危険が生じなかった場合,甲には,非現住建造物等放火未遂罪が成立する」という肢は誤りです。109条2項ただし書は公共の危険を生じなかったときは罰しないと定め、未遂を罰する112条も108条と109条1項の罪だけを対象にしています。他方で、自己所有の倉庫であっても保険に付したものは他人の物を焼損した者の例によるので(115条)、109条1項が適用され、公共の危険の発生は要りません。「その倉庫が火災保険の付されたA所有のものであった場合,Aに非現住建造物等放火罪(刑法第109条第1項)は成立しない」という肢は誤りです。

夜の駐車場と住宅街を左右に並べた場面。左は広い空き地の駐車場に一台の自動車が停まり、周りに建物がなく、札「110条:公共の危険を生じさせたこと が要件(具体的危険犯)」。右は人の住む家が描かれ、札「108条:公共の危険の発生は要件でない(抽

状態犯は結果の発生で犯罪が終了し、継続犯は法益侵害が続いている間は犯罪が終了しません

犯罪がいつ終了するかという観点から、即成犯、状態犯、継続犯が区別されます。即成犯は、殺人罪のように、結果の発生によって犯罪が完成し同時に終了するものです。状態犯は、結果の発生によって犯罪が終了し、その後も法益侵害の状態は残りますが、それはもはや犯罪事実とは認められないものをいいます。窃盗罪や傷害罪がこれに当たり、盗んだ物を持ち続けていても窃盗罪が成立し続けるわけではありません。継続犯は、既遂になった後も、法益侵害が続いている限り犯罪が終了しないものをいい、監禁罪や保護責任者不保護罪がこれに当たります。この区別は三つの場面で結論を左右します。第一に、公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行するので、窃盗罪では窃取の時から、監禁罪では被害者を解放した時から進行します。第二に、継続犯では犯罪が続いている間に加わった者に共犯が成立しますが、状態犯では犯罪が終了した後に関与しても共犯にはなりません。第三に、刑の変更との関係です。監禁中に監禁罪の法定刑を重くする改正法が施行された事例では、施行後も実行行為が続いているので新法が適用されます(最決昭和27年9月25日)。自動車を窃取して乗り回している間に窃盗罪の法定刑を軽くする改正法が施行された事例では、窃盗罪は窃取の時に終了しているので、犯罪後の刑の変更として軽い新法が適用されます。なお、住居侵入罪については状態犯か継続犯かの争いがあり、継続犯と解する立場に対しては、侵入後にとどまることにも住居侵入罪が成立することになり、不退去罪を定めた意味が失われるという批判が向けられます。

教室の黒板に左から右へ伸びる時間の線が二本描かれた場面。先生が教師役(札「先生」)で指し棒を持つ。上の線は札「窃盗罪(状態犯)」で、左端に点「窃取:既遂・犯罪終了」があり、そこから右は細い点線で札「法益侵害の状態が残るだけ」。上の線の左端の

目的犯は故意のほかに一定の目的を要件とし、判例はその目的も65条の「身分」に当たるとします

目的犯とは、構成要件に当たる事実の認識である故意に加えて、一定の目的をもって行為することを要件とする犯罪です。通貨偽造罪の「行使の目的」や、営利目的等略取及び誘拐罪の「営利」の目的が例です。「身の代金目的誘拐罪は,近親者その他誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的を主観的要素とする目的犯である」という肢は正しいです。225条の2第1項が条文でこの目的を要件としているからです。目的は行為の時にあれば足り、実際に財物を交付させたことは既遂の要件ではありません。目的を有する者と有しない者が共同して行った場合には、共犯と身分の規定が働くかが問題になります。「刑法第65条の身分には一時的な心理状態は含まれないので,目的犯に当たる犯罪行為を,当該目的を有する者と有しない者が共同して行った場合,同条の適用の余地はない」という肢は誤りです。最判昭和42年3月7日は、麻薬輸入罪の「営利の目的」について、犯人が営利の目的をもっていたかという犯人の特殊な状態の差異によって刑に軽重の区別をしているものであり、65条2項の身分に当たるとしました。

刑法110条1項

放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。

刑法109条2項

前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

刑法225条の2第1項

近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。

論文ではこう使う

論文では、分類そのものを論じるのではなく、結論を導く前提として一文で使います。監禁の途中から加わった者の罪責が問われたときは、監禁罪が継続犯であり、加わった時点でも犯罪が終了していないことを示したうえで、加わった後の監禁について共同正犯の成立を認めます。加わる前の監禁についてまで責任を負うかは、承継的共犯の問題として別に論じます。窃盗の後に盗品の運搬を手伝った者については、窃盗罪が状態犯で既に終了していることを示し、窃盗の共犯ではなく盗品等に関する罪を検討します。公訴時効が問題になる事案では、犯罪行為が終わった時を、状態犯か継続犯かから確定します。放火の事案では、客体がどの条文に当たるかを決め、その条文が公共の危険の発生を要件としているかを確かめてから、危険の発生の有無を認定します。

試験ではこう問われる

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