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用語集 / 刑法 / 法人処罰と両罰規定

法人処罰と両罰規定とは

ほうじんしょばつとりょうばつきてい

刑法 構成要件

両罰規定とは、法人の代表者や従業者が法人の業務に関して違反行為をしたときに、行為者を罰するほか、その法人にも罰金刑を科すと定める規定です。刑法典の罪の主体は自然人であり、法人処罰は、このような特別の規定がある場合に限って認められます。

会社の従業員が、会社の仕事として法律に違反する行為をしたとします。実際に手を動かしたのは従業員ですが、その行為で利益を得るのは会社であり、違反を防ぐ仕組みを作れるのも会社です。従業員だけを処罰しても、会社が同じことを別の従業員に繰り返させれば意味がありません。そこで多くの法律は、行為者とあわせて会社にも罰金を科す規定を置いています。会社自身に落ち度がないのに処罰してよいのかが問題となるので、処罰の根拠をどう説明するかが争われます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。被告人席に、作業服の男性(札「従業者:行為者」)と、会社のビルの形をした立て札(札「法人:甲社」)が並んでいる。先生の手元に条文の板「両罰規定:行為者を罰するほか、その法人に対しても罰

刑法典の罪の主体は自然人であり、法人は両罰規定などの特別の規定がある場合に限って処罰されます

刑法典が「者」と書くとき、それは生身の人間である自然人を指しており、法人は含まれません。法人が処罰されるのは、これを処罰すると定めた特別の規定がある場合だけです。その規定は、従業者の違反行為について、行為者本人を罰するとともに業務主である法人や人にも罰金刑を科すという両罰規定の形をとるのが一般的です。たとえば出入国管理及び難民認定法76条の2は、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して不法就労助長の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても罰金刑を科すと定めています。刑法は責任のない者を処罰しないという責任主義をとるので、自分では違反行為をしていない業務主がなぜ処罰されるのかについて、見解が分かれます。

  • 無過失責任説代表者や従業者の責任が法人に転嫁される。代表者の違反でも従業者の違反でも、法人は無過失でも処罰される
  • 過失推定説(判例)代表者の違反は法人の違反行為そのもの。従業者の違反は代表者の選任監督上の過失が推定され、過失がないことが立証されれば法人は処罰されない
  • 過失擬制説代表者の違反は法人の違反行為そのもの。従業者の違反は代表者の選任監督上の過失が擬制され、過失がないことを立証しても法人は処罰される

無過失責任説は、行為者の責任が法人に転嫁されると考えるので、法人が無過失でも処罰されます

無過失責任説は、両罰規定を、法人が無過失であっても代表者や従業者の責任が法人に転嫁されることを政策的に認めたものと理解します。この説からは、甲社の代表取締役が自社の事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた場合にも、甲社の従業者がさせた場合にも、甲社に不法就労助長罪が成立するという結論になります。誰が違反したかで扱いは変わらず、法人の側の落ち度を問う余地がありません。この説に対しては、落ち度のない者を処罰することになり責任主義に反するという批判が向けられます。

過失推定説は、従業者の違反について代表者の選任監督上の過失を推定し、反証があれば法人は処罰されません

判例は過失推定説をとっています。最大判昭和32年11月27日は、自然人の事業主を処罰する両罰規定について、事業主に行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった過失の存在を推定した規定であるとしました。事業主は、注意を尽くしたことを証明しない限り処罰を免れません。最判昭和40年3月26日は、事業主が法人で、行為者がその代表者でない従業者である場合にも、この理解が当然に及ぶとしました。法人については、代表者と法人を同一視したうえで、代表者に選任監督上の過失があったかを問うことになります。この説からは、甲社の従業者が外国人に不法就労活動をさせた場合、甲社代表取締役の従業者に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り、甲社に不法就労助長罪が成立するという結論になります。処罰の根拠を法人自身の過失に求めるので責任主義と調和し、過失の立証の負担を法人の側に負わせることで処罰の実効性も保っています。

会社の応接室の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で机の向こうに立ち、正面にスーツの男性(札「甲社の代表者」)が書類の束「従業者への指導記録」「監督の体制」を差し出している。壁に二つの札が上下に並ぶ。上「従業者の違反:選任監督上の過失を推定

代表者自身の違反行為は法人の違反行為とみるので、選任監督上の過失は問題になりません

過失推定説も過失擬制説も、法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であるとします。代表者は法人の機関であり、代表者の行為がそのまま法人の行為になるからです。したがって、甲社の代表取締役が自ら外国人に不法就労活動をさせた場合、過失推定説からは、選任監督上の過失の推定を持ち出すまでもなく、甲社に不法就労助長罪が成立するという結論になります。「甲社の乙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り」成立するという言い方は、過失がないことを立証すれば処罰を免れるという意味を含むので、この説からの帰結として成り立ちません。選任監督上の過失が問題になるのは、違反したのが代表者以外の従業者である場合に限られます。

過失擬制説は、過失があるものとみなすので、過失がないことを立証しても法人は処罰されます

過失擬制説は、従業者の違反行為について、代表者の選任監督上の過失が擬制されるとします。推定は反対の事実を立証すれば覆りますが、擬制は過失があるものとみなすことですから、立証によって覆すことができません。この説からは、甲社の従業者が外国人に不法就労活動をさせた場合、甲社代表取締役の選任監督上の過失がないことを立証しても、甲社に不法就労助長罪が成立するという結論になります。「過失がないことが立証されない限り」成立するという言い方は、過失推定説からの帰結であって、過失擬制説からの帰結ではありません。過失擬制説は、過失責任という形をとりながら、結論は無過失責任説と変わらなくなります。

最大判昭和32年11月27日

行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかった過失の存在を推定した規定

試験ではこう問われる

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