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用語集 / 刑法 / 証拠隠滅等罪

証拠隠滅等罪(他人の刑事事件・偽造・証人等威迫)とは

しょうこいんめつとうざい

刑法 国家的法益に対する罪

証拠隠滅等罪とは、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用する罪です(刑法104条)。刑事事件の証人らに面会を強請し、又は強談威迫の行為をする証人等威迫罪(105条の2)とあわせて、刑事司法作用を保護します。

友人が起こした事件の凶器を川に捨てたり、目撃者を遠くに連れ出して警察に会わせなかったり、ありもしない領収証を作って提出したりする人がいると、捜査機関や裁判所は正しい事実にたどり着けなくなります。証拠隠滅等罪は、刑事事件の証拠が正しい形で利用されることを守る罪です。ただし、自分の事件の証拠を自分で隠すことまでは処罰されないので、条文は客体を「他人の刑事事件に関する証拠」に限っています。

河川敷の場面。先生が警察官役(札「警察官:捜査」)で、懐中電灯を手に川べりを捜索している。少し離れた橋の上で、男性(札「友人の甲」)が布に包んだ細長い物(札「乙の事件の証拠」)を川に投げ込もうと振りかぶっている。先生の吹き出し「他人の刑事事

客体は「他人の刑事事件に関する証拠」で、罪の重さや捜査開始の前後を問いません

証拠隠滅等罪(104条)は、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者を、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する罪です。犯人蔵匿等罪と違い、事件の法定刑による限定はありません。「証拠隠滅罪の「他人の刑事事件」は,犯人蔵匿罪と異なり,罰金以上の刑に当たる罪に限られない」という肢は正しいです。刑事事件には、起訴後の被告事件や捜査中の被疑事件だけでなく、将来刑事事件になり得るものも含まれます。「いまだ捜査が開始されていない段階で,他人の犯罪行為に関する証拠を隠滅した場合,証拠隠滅罪が成立する」という肢は正しく、殺害の事実を捜査機関が知る前に被害者名義の遺書を作って遺族に送った事例について、「捜査機関は未だ捜査を開始していないので,甲に証拠偽造罪は成立しない」という肢は誤りです。他方、民事事件の証拠は客体になりません。貸金返還請求訴訟の被告が「消費貸借契約書の原本を焼却した場合,証拠隠滅罪は成立しない」という肢は正しいです。「他人」は自己以外の者をいい、親族も他人です。「自己の配偶者の犯罪行為に関する証拠を隠滅した場合,証拠隠滅罪が成立する」という肢は正しく、親族であることは105条による刑の任意的免除の問題になります。

隠滅は証拠の価値を失わせる一切の行為で、証人や参考人を隠す行為も含みます

証拠とは、犯罪の成否や態様、刑の軽重に関係する一切の資料をいい、被告人に不利な証拠だけでなく有利な証拠も、罪体に関する証拠だけでなく情状に関する証拠も含みます。公判請求された者に「有利な情状証拠を隠匿した。甲には証拠隠滅罪は成立しない」という肢は誤りです。隠滅とは、物理的に壊すことに限らず、証拠の顕出を妨げ、又は証拠としての価値を滅失・減少させる一切の行為をいいます。物だけでなく人も証拠になります。判例は、捜査段階における参考人にすぎない者も他人の刑事事件に関する証拠に当たり、これを隠匿すれば証拠隠滅罪が成立するとしています(最決昭和36年8月17日)。事情聴取の要請を受けた目撃者について、聴取を妨害するため「Bを甲方に2か月間監禁した。甲には証拠隠滅罪が成立する」という肢は正しいです。証人予定者を山中の別荘に監禁した事例について、「人的証拠も「証拠」に該当するので,甲に証拠隠滅罪が成立する」という肢も正しいです。取調べを受ける可能性のある参考人を知人宅にかくまった事例について、「Bが捜査段階における参考人であったとしても、甲に証拠隠滅罪が成立する」という肢も正しいです。

山あいの別荘の場面。先生が警察官役(札「警察官」)で、手帳を見ながら別荘へ続く坂道の下に立ち、あたりを見回している。別荘の窓の中に男性(札「目撃者B:参考人」)が座っており、玄関の前に別の男性(札「甲」)が見張るように立っている。先生の吹き

参考人が虚偽の供述をしただけでは偽造に当たらず、虚偽の証拠を新たに作り出せば偽造に当たります

偽造とは、存在しない証拠を新たに作り出すことをいいます。判例は、参考人が捜査官に対して虚偽の供述をしても証拠偽造罪は成立せず、その虚偽の供述が供述調書に録取されたとしても、それだけでは同罪は成立しないとしています(最決平成28年3月31日)。虚偽の供述を処罰するのは宣誓した証人の偽証罪に限るのが刑法の建前だからです。参考人として虚偽の供述をし、それを信じた警察官に供述調書を作成させて署名押印した事例について、「甲が虚偽の供述調書を作成させた以上、甲に証拠偽造罪が成立する」という肢は誤りです。もっとも、この決定は、令状請求のための証拠を作り出す意図で、警察官と相談しながら架空の事実に関する虚偽の供述内容を創作・具体化させ、それを供述調書の形式にした行為については、証拠偽造罪の成立を認めました。宣誓した証人の偽証は偽証罪で処罰され、証拠偽造罪にはなりません。法廷で偽りの証言をし、「これに基づく証人尋問調書が作成された。甲には証拠偽造罪が成立する」という肢は誤りです。被告人の友人が「偽証を証人に教唆し実行させた場合,証拠偽造罪の教唆犯は成立しない」という肢は正しく、成立するのは偽証罪の教唆犯です。見解としては、参考人の虚偽供述も証拠に含まれるが文書化されたものに限るとする見解からは、虚偽の内容の上申書を作成させる行為が証拠偽造に当たります。これに対し、偽造を文書偽造罪と同じく作成名義を偽る場合に限るとする見解からは、作成者本人の名義で内容だけが虚偽の上申書を作っても証拠偽造には当たらないという結論になります。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、黒板は左右に分かれている。左の枠には、取調室で話す人と調書を書く警察官の図があり、題は「参考人がうそを述べ、調書に録取された:偽造に当たらない」。右の枠には、机を囲んで二人が相談しなが

証人等威迫罪は、自己の事件の証人に対しても、文書によっても成立します

証人等威迫罪(105条の2)は、自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者を、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する罪です。条文が「自己若しくは他人の」としているので、103条や104条と違って自己の事件でも成立します。「犯人が自己の刑事事件の裁判に必要な知識を有する証人を威迫した場合,証人等威迫罪が成立する」という肢は正しいです。威迫について、判例は、不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られないとしています(最決平成19年11月13日)。威迫は相手と面会して直接される場合に限られ、「文書を送付して相手にその内容を了知させる方法によりなされる場合を含まない」という肢は誤りです。この罪は証人らの平穏と刑事司法の適正な運用を守るものなので、事件が確定するまでの間の行為が処罰の対象になります。「証人等威迫罪は,判決確定前であれば,その事件で証人として証言を終えた者を威迫した場合でも,成立する」という肢は正しく、「Bが証言を終えているから、甲に証人威迫罪は成立しない」という肢は誤りです。故意としては、相手が必要な知識を有する者であることと、強談威迫などの行為をすることの認識があれば足ります。証人等威迫罪は、「公判の結果に何らかの影響を及ぼそうとする意図がなければ,成立しない」という肢は誤りです。

刑法104条

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

刑法105条の2

自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

論文ではこう使う

論文では、犯人の知人がアリバイを偽る供述をしたり、内容虚偽の書面を作って捜査機関に提出したりする事例で問われます。まず、客体が「他人の刑事事件に関する証拠」であることを確認します。次に、行為が隠滅・偽造のどれに当たるかを検討します。参考人が取調べで虚偽を述べただけの場合は、虚偽の供述は偽証罪に限って処罰するのが刑法の建前であることを理由に、供述調書に録取されても偽造に当たらないと書きます。これに対し、上申書や契約書のように虚偽の内容の書面を新たに作り出した場合や、捜査官と相談して架空の事実を創作し書面にした場合は、新たな証拠を作り出したものとして偽造を認めます。虚偽の供述については、あわせて犯人隠避罪の成否も検討し、両罪が成立するときは罪数を処理します。

試験ではこう問われる

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