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犯人蔵匿等罪の客体(「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」)とは

はんにんぞうとくとうざいのきゃくたい

刑法 国家的法益に対する罪

犯人蔵匿等罪の客体とは、刑法103条が定める「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者」です。判例は、「罪を犯した者」に、真犯人のほか、犯罪の嫌疑によって捜査・訴追の対象となっている者を含めています。

警察に追われている友人を自宅に泊めたところ、後になってその友人は不起訴になった、という場合でも、かくまった時点では警察の捜査が邪魔されています。犯人蔵匿等罪は、犯人を見つけて身柄を確保するという刑事司法の働きを守る罪です。そのため、かくまう相手は、裁判で有罪と決まった人に限られず、嫌疑を受けて捜査や裁判の対象になっている人を広く含みます。誰が客体に当たるかが、この罪の成否を分けます。

住宅の玄関先の場面。先生が警察官役(札「警察官:捜査中」)で、逮捕状の紙を手に玄関の前に立っている。玄関の内側では住人の男性(札「甲」)がドアを少し開けて応対し、奥の部屋の襖の陰に別の男性(札「乙:逮捕状が出ている被疑者」)が隠れている。先

「罰金以上の刑に当たる罪」は法定刑に罰金以上の刑を含む罪をいい、故意は罪の内容を知っていれば足ります

犯人蔵匿等罪(103条)の客体は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者」です。「罰金以上の刑に当たる罪」とは、法定刑に罰金以上の刑が含まれている罪をいい、法定刑が拘留又は科料だけの罪は含まれません。侮辱罪は、令和4年改正で法定刑に拘禁刑と罰金が加わったので、現在はこれに当たります。故意については、判例は、かくまう相手がどのような罪を犯したかの認識があれば足り、その罪の法定刑が罰金以上であることの認識までは要らないとしています(最決昭和29年9月30日)。法定刑が罰金以上かどうかは法律上の評価にすぎないからです。「甲は,乙が強制執行妨害目的財産損壊罪を犯したことを認識した上で乙をかくまったが,同罪の刑が罰金以上であることを知らなかった。甲には犯人蔵匿罪が成立する」という肢は正しいです。「甲が窃盗罪の法定刑が罰金以上の刑であることを認識していなくても、甲に犯人蔵匿罪が成立する」という肢も正しいです。

「罪を犯した者」には、真犯人のほか、犯罪の嫌疑によって捜査・訴追されている者が含まれます

「罪を犯した者」の意義については見解が分かれます。真犯人に限るとする見解は、条文の文言に忠実で、無実の者をかくまう行為は期待可能性が低いことを理由とします。この見解に対しては、被疑者・被告人を客体から外せば立法の目的が大きく損なわれるという批判が向けられます。判例は、103条は司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰しようとする規定であるから、「罪を犯した者」は犯罪の嫌疑によって捜査中の者をも含むとしています(最判昭和24年8月9日)。この立場では、かくまった時点で捜査の対象であれば足り、その後に不起訴や無罪になっても、成立した犯人蔵匿罪は左右されません。逮捕状が発付されている者をかくまった後、「乙は犯罪の嫌疑が不十分であるという理由で不起訴処分となった場合,甲には犯人蔵匿罪は成立しない」という肢は誤りです。「証拠上、犯罪の嫌疑が不十分として不起訴となった場合、丁が丙をかくまった行為について犯人蔵匿罪は成立しない」という肢も誤りです。起訴された被告人も客体であり、保釈中の被告人に逃亡の資金を与えた事例では犯人隠避罪が成立します。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、手元に横長の時間の帯を描いた板を立てている。帯の左に「かくまった時点:逮捕状が出て捜査中」、右に「その後:嫌疑不十分で不起訴」と書かれ、先生は左を指している。証言台の前に被告人の男性(

真犯人であれば、捜査が始まる前でも、告訴がない段階でも客体になります

判例は、罰金以上の刑に当たる罪を犯した者であることを知りながら、官憲の発見・逮捕を免れるようにかくまった場合には、その犯罪が既に捜査官憲に発覚して捜査が始まっているかどうかに関係なく、犯人蔵匿罪が成立するとしています(最判昭和28年10月2日)。窃盗の共犯である乙と丙をかくまった時点で、警察が丙を共犯として把握していなかった事例について、「乙をかくまったことについて犯人蔵匿罪が成立するが,丙をかくまったことについて同罪は成立しない」という肢は誤りです。親告罪について告訴がまだされていない段階でも、捜査や訴追が予定されていることに変わりはないので、犯人は客体に当たります。告訴権者からの告訴がない時点で友人に頼んでかくまってもらった事例について、「甲には,犯人蔵匿罪の教唆犯が成立する」という肢は正しいです。この肢の罪名は強姦で、出題当時は親告罪でしたが、現在は不同意性交等罪であり親告罪ではありません。これに対し、公訴時効の完成などにより訴追・処罰の可能性がなくなった者は、かくまっても刑事司法作用が害されないので客体に当たりません。「かくまった時点では,既にその窃盗事件の公訴時効が完成していた。甲には,犯人蔵匿罪は成立しない」という肢は正しいです。なお、犯人が既に死亡していた場合について、死者も「罪を犯した者」に含まれるとして犯人隠避罪を認めた高裁判決があります(札幌高判平成17年8月18日)。

既に逮捕・勾留されている者も客体に含まれます

身柄を拘束されている犯人については、もはや発見や逮捕を妨げる余地がないようにも見えます。しかし判例は、「罪を犯した者」には犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、現にされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も隠避に当たるとしています(最決平成元年5月1日)。したがって、「犯人隠避罪の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」には,犯人として既に逮捕・勾留されている者は含まれない」という肢は誤りです。身代わり犯人として出頭する行為がこの場面の典型です。「拘禁中に逃走した者」は、法令により拘禁されている間に逃走した者をいい、こちらは犯した罪の法定刑を問いません。

犯人でないと信じてかくまっても、捜査の対象であることを知っていれば故意が認められます

「罪を犯した者」が真犯人に限られない以上、故意の内容としても、相手が真犯人であることの認識は要りません。相手が犯罪の嫌疑によって捜査の対象となっていることを認識していれば、犯人蔵匿罪の故意が認められます。逮捕状が発付されている者を犯人ではないと信じてかくまった事例について、「甲は乙が犯人ではないと誤信していたので,甲に犯人蔵匿罪は成立しない」という肢は誤りです。「Aが犯人蔵匿罪の「罪を犯した者」ではないと甲が誤信していたから、甲に同罪は成立しない」という肢も誤りです。どちらの事例でも、かくまった者は逮捕状が出ていることを知っており、捜査の対象であることの認識に欠けるところがありません。真犯人に限るとする見解に対しては、無実だと確信してかくまった者の故意を常に否定せざるを得なくなるという批判が向けられます。

刑法103条

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

論文ではこう使う

論文では、かくまった相手や身代わりの対象となった者が、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に当たるかを最初に認定します。その者が犯した罪の法定刑に罰金以上の刑が含まれることを条文で確認したうえで、103条が刑事司法作用を保護する規定であることから、真犯人に限らず犯罪の嫌疑によって捜査中の者を含むという判例の解釈を示します。問題文の事情が、捜査開始前であるのか、逮捕・勾留された後であるのか、不起訴や無罪になったのかに応じて、どの場合でも客体に当たることを一言で押さえます。行為者が「犯人ではないと思っていた」と弁解している事例では、捜査の対象であることの認識があれば故意に欠けるところはないと書きます。そのうえで、蔵匿・隠避に当たるかの検討に進みます。

試験ではこう問われる

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