商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。
この条文の過去問 5問
正しい。商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない(商法595条)。
民法では、無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管すれば足り(民法659条)、善良な管理者の注意が求められるのは有償の寄託に限られる。これに対して商法595条は、商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならないと定める。商人が営業の範囲内で物を預かるときは、たとえ個別の報酬を受けなくても営業全体として利益を得る関係にあり、預ける側も商人の専門性を信頼しているので、無償を理由に注意義務を軽くすることは取引の実情に合わないからである。要件は商人であることと寄託が営業の範囲内であることであり、営業と無関係に私的に預かった場合にはこの特則は及ばず民法の原則に戻る。場屋営業者が客から寄託を受けた物品については、さらに不可抗力によることを証明しなければ責任を免れないという重い責任が別に定められている(596条1項)。本肢は595条のとおりであり、正しい。

商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。
- 595条: 商人が営業の範囲内で寄託を受けたら無報酬でも善管注意義務(民法659条の例外)
- 596条1項: 寄託を受けた物品の滅失・損傷 → 不可抗力の証明が無ければ免責されない(無過失の証明では足りない)
- 596条2項: 寄託していない携帯品 → 営業者が注意を怠ったときに責任(過失責任)
- 596条3項: 責任を負わない旨の表示をしても免れない
- 597条: 高価品は種類・価額を通知して寄託した場合を除き責任なし。約款の限度額も故意・重過失には及ばない(最判平15.2.28)
- 598条: 返還・持ち去り(全部滅失は客が場屋を去った時)から1年で時効消滅。営業者が悪意なら適用なし
誤り。違うのは「報酬を受けるときに限って」の部分である。商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない(商法595条)。
民法では、無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管すれば足り(民法659条)、善良な管理者の注意を要するのは有償の受寄者だけである。商法595条はこの原則を修正し、商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならないとした。商人が営業の範囲内で物を預かるのは、たとえその預かり自体は無償でも、顧客の獲得や取引の付随的なサービスとして営業上の利益につながる行為であり、顧客も商人の専門性を信頼して預けているので、報酬の有無で注意義務の程度を分けるのは適当でないからである。したがって、営業の範囲内の寄託であれば報酬の有無にかかわらず善管注意義務を負うのであって、報酬を受けるときに限るとする本肢は、商法が民法の原則を修正した部分を逆に述べている。

商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。
| 受寄者 | 無報酬のとき | 報酬を受けるとき |
|---|---|---|
| 民法上の受寄者(民法659条・400条) | 自己の財産に対するのと同一の注意 | 善良な管理者の注意 |
| 営業の範囲内で寄託を受けた商人(商法595条) | 善良な管理者の注意 | 善良な管理者の注意 |
正しい。商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない(商法595条)。
民法659条は、無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負うと定め、有償の受寄者が負う善良な管理者の注意(400条)よりも注意義務を軽くしている。好意で無償で物を預かる者に重い義務を課すのは酷だからである。これに対し、商法595条は、商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならないと定め、民法659条の特則を置いている。商人は営業上の信用が重視され、個々の寄託が無償であっても、顧客を集めるなど営業全体としては利益につながっているから、無償であることを理由に注意義務を軽くすれば商人への信用を保てなくなるのである。したがって、商人が営業の範囲内で無償で寄託を受けた場合も、受寄者は善管注意義務を負う。本肢は同条の内容どおりである。

商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。
正しい。商人がその営業の範囲内で寄託を受けたときは、報酬を受けなくても善良な管理者の注意をもって保管しなければならない(商法595条)。
民法659条は、無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負うと定め、好意で保管を引き受けた者の注意義務を軽くしている。有償の受寄者は、特定物の保存についての原則(400条)どおり善良な管理者の注意を負う。しかし、商法595条は、商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならないと定め、民法659条の特則を置いている。商人は営業として反復して取引を行い、保管のための設備や知識を持つのが通常であり、無報酬の保管も顧客の獲得や信用の維持という営業上の利益につながっているから、取引の相手方の信頼を守るために注意義務を加重したのである。したがって、肢は正しい。この義務に反して寄託物を滅失・損傷させれば、受寄者は債務不履行による損害賠償責任を負う(415条)。

無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
- 善良な管理者の注意:特定物の引渡債務者(400条)、受任者(無償でも、644条)、後見人(869条)、留置権者・質権者(298条1項・350条)、商人の受寄者(無報酬でも、商法595条)
- 自己の財産に対するのと同一の注意:受領遅滞の後の特定物の債務者(413条1項)、無報酬の受寄者(659条)
誤り。違うのは「自己の財産に対するのと同一の注意をもって」の部分である。商人が営業の範囲内で寄託を受けたときは、報酬を受けないときでも善良な管理者の注意をもって保管しなければならない(商法595条)。
民法では、無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負うにとどまり(民法659条)、善管注意義務を負うのは有償の受寄者である。これに対して商法595条は、商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならないと定め、民法の原則を修正している。商人が営業の範囲内で物を預かるのは、それ自体には報酬が無くても営業上の利益を得るための附属的な行為であり、客も商人としての専門的な管理を信頼して預けているので、無報酬であることを理由に注意義務を軽くするのは適当でないからである。場屋営業者は旅館や飲食店などの営業の範囲内で客から物品の寄託を受けるので、この規定の適用を受け、預かり賃を取っていなくても善管注意義務を負う。したがって自己の財産に対するのと同一の注意で足りるとする肢は誤っている。

商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。
| 受寄者 | 注意義務 | 根拠 |
|---|---|---|
| 民法の無報酬の受寄者 | 自己の財産に対するのと同一の注意 | 民法659条 |
| 民法の有償の受寄者 | 善良な管理者の注意 | 民法400条 |
| 営業の範囲内で寄託を受けた商人 | 無報酬でも善良な管理者の注意 | 商法595条 |
| 場屋営業者(寄託を受けた物品) | 不可抗力を証明しなければ免責されない | 商法596条1項 |



